お坊さんの頭陀袋と、死装束の頭陀袋。中身の違いは?

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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頭陀袋とは、僧侶が托鉢をする際に首からかける袋のことですが、葬儀の際に死者の首にかけることもあります。頭陀袋には、どのような役割りや歴史があるのでしょうか。また、頭陀袋と聞くとピンとこないかもしれませんが、現代では小物入れとして頭陀袋を活用するファッションも流行しています。ここでは頭陀袋の本来の役割や、作り方についてまとめました。

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頭陀袋とお布施

仏教の信者にとって重要な6つの修行を、六波羅蜜といいます。

その修行の中では、規律を尊び、施しを行い、努力を惜しまず、耐え忍び、落ち着きを保ち学ぶことが重要とされています。

施しには財施(ざいせ)、法施(ほうせ)、無畏施(むいせ)という3種類の修行があります。法施は僧侶が念仏を唱えたり、教えを広めたりする修行のことです。無畏施は人の心の中にある恐怖や不安などを取り除き、安心させることです。財施は欲しいと思う心や恩にきせる心から離れて、お金や物を必要とする人に与える修行のことです。この財施こそ、頭陀袋が大きく関わっている修行です。[

頭陀袋は何を入れる袋?

頭陀袋の「頭陀」というのは、衣食住に対する欲を捨てる修行で、人里離れた静かなところに住む、乞食を行うというように、定められた規範の中で暮らします。頭陀袋はこのような修行僧が経典や仏具などの必要品や、托鉢でもらったお金や食べ物などの施しものを入れる袋のことです。

托鉢というのは、僧侶が街を歩いてお布施(喜捨)を受ける仏教の修行のひとつで、財施に分類されます。托鉢は僧侶の修行だけでなく、お布施をする人にとっても修行になるとされています。人に物を施すということは、自分の持ち物を手放して執着を絶つことになるからです。

死者の首に掛ける頭陀袋

一方で、葬儀で死者の首にかける頭陀袋には、三途の川の渡し賃として六文銭が入れられていました。

亡くなった人の死後の世界での修行に旅立つという考え方のもと、頭陀袋がかけられるようになりました。このように僧侶と故人が同じ頭陀袋を首にかけているのは、両方とも仏教の信者で修行に行くという共通点があるからです。

また、頭陀袋は施しを含めて雑多なものが入れられる袋なので、死者が首からかけたとしても問題はありません。死者の首に頭陀袋をかけ、その中に三途の川の渡し賃を入れる風習は今も続いています。ただし、貨幣を燃やすと法律に抵触してしまうので、現在は六文銭に模したものを入れるようになりました。

地域によっては、頭陀袋は五穀袋、ぬか袋、さんや袋と呼ばれることもあり、穀物などを入れる場合もあります。

頭陀袋の作り方

頭陀袋は、自分でも簡単に作れます。

頭陀袋を作るにはいくつかの決まりごとがあります。

まず、故人の首にかけるための頭陀袋は必ず複数人で作る必要があります。また、作る際は玉止めをしないで、頭陀袋に針を刺したままにするともいわれています。これらの決まりごとは、経帷子(きょうかたびら)を縫うときの作法とも共通しています。その根底にあるのは、死者と生きている人との関わりを分散させて希薄にする狙いがあるようです。言い換えると、生きている人に祟りがないようにとの配慮です。また、布を切らずに折って縫うだけというのも、頭陀袋の特徴といえるでしょう。

このようにして作られた頭陀袋には、三途の川の渡し賃として六文銭を模したものが入れられます。また、お米や近親者の爪や髪の毛を入れて死者に持たせる地域もあります。これらの慣習も、故人が死後の世界で修行するという考え方にもとづいていることがうかがわれます。

頭陀袋の広まり

頭陀袋は、ショルダーバッグのような形をしています。僧侶が使っている頭陀袋を見ていた民衆が、「これは便利だ」と真似をするようになったのかもしれません。ただ、僧侶が使う頭陀袋は首からかけて胸の前に垂らしていますが、民衆が使う場合は肩にかけて使うことが多かったようです。

オシャレとしての頭陀袋

現在では、もともとの頭陀袋の使い方とは全く異なる方向で頭陀袋が利用されています。その一番の理由は、やはり使いやすさにあるようです。刺子織りの生地で作られた頭陀袋をショルダーバッグのように肩にかけて使います。

頭陀袋は布製なので肌触りもよく、肩から掛けたときに腰のあたりで自然にフィットします。金具類が一切使われておらず、肩掛けひもの長さは結び目で調節するという昔ながらのつくりが現代人から支持されています。

和装のバッグですから作務衣などにも合いますが、洋装であって違和感がありません。どんな服装とも相性がいいので、頭陀袋は重宝されています。

まとめ

頭陀袋は、もともと僧侶が托鉢する際に首から掛けてお布施や仏具を入れるものでした。それが葬儀の際に死者の首に掛けるようになり、現代ではオシャレなファッションとしても使われるようになりました。

現代の社会背景に合わせて、葬儀やお墓の形態の選択肢も増えています。葬儀やお墓にどのようなものがあるのか知りたい方は、お気軽にお問合せください。

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