お墓は元々、親から子へ、そのまた子へと受け継がれていくのが一般的でした。ですが、核家族化や少子高齢化が進む現代では、途中でお墓を継ぐ人がいなくなってしまうケースが増えています。
そこで注目を集めているのが、永代供養(えいたいくよう)。永代供養を前提としたお墓は永代供養墓(えいたいくようぼ)と呼ばれます。
この記事では、永代供養の意味や費用相場、永代供養墓の選び方などをわかりやすく解説します。
目次
永代供養とは?意味をわかりやすく解説

永代供養(えいたいくよう)とは、遺族に代わって、霊園・寺院がお墓を管理すること。墓地管理者がお墓掃除や供養を引き受けてくれるため、遺族はお墓を管理する必要がありません。お墓の跡継ぎがいなくても契約できるので、子どもや身寄りのない方からよく選ばれています。
また、永代供養墓の種類によっては、費用をおさえやすいのも魅力。永代供養は「後継者がいらなくて、費用も少なく済むお墓」として注目されている、新しいお墓のスタイルです。
永代供養は何年まで?契約期間が決まっている
永代供養の「永代」には「長い年月」という意味がありますが、実際は契約期間が決まっていることがほとんど。33回忌までが一般的で、5年や10年など短期間で契約できる霊園・寺院もあります。
契約期間が過ぎた遺骨は、合祀(骨壺から遺骨を取り出し、他人の遺骨とまとめて埋葬する)して合祀墓で供養されることが多いです。
遺骨を個別安置できる期間は、霊園・寺院によって違うので、あらかじめ確認しておきましょう。
永代供養料と永代使用料の違い
- 永代供養料:「遺骨」を永代供養してもらうために支払うお金
- 永代使用料:「土地」を永代使用する権利を得るために支払うお金
永代供養にかかる費用には、「永代供養料」と「永代使用料」があります。
永代供養料とは、永代にわたって遺骨を供養してもらうために支払うお金。対して永代使用料は、永代にわたって墓地の土地(区画)を利用するために支払うお金です。
最近は、永代供養料と永代使用料がセットになっている霊園が多いですが、場所によっては別々になっていたり、永代供養料が含まれていなかったりするため、確認しておくと安心です。
永代供養の費用相場と内訳

永代供養の費用内訳 | 永代供養の費用相場 |
---|---|
永代供養料 | 5万円~150万円 |
納骨料 | 3万円〜10万円 |
刻字料 | 3万円~ |
永代供養の費用相場は約10万円〜150万円。費用相場の幅が大きいのは、遺骨の数や埋葬方法、個別安置期間、お墓の種類などによって金額が変動するからです。
また、永代供養の費用内訳は、永代供養料・納骨料・刻字料の3つ。永代供養料は、遺骨を管理・供養するための費用で、永代供養にかかる費用の大半を占めています。納骨料は納骨にかかる費用、刻字料は墓誌などに故人の名前を彫刻する費用です。
永代供養の費用は条件や霊園・寺院によって変わるため、事前に見積もりをとって確認してください。
埋葬方法別に見た費用相場
永代供養の埋葬方法 | 費用相場 |
---|---|
合祀型 | 5万円~30万円 |
集合型 | 20万円~60万円 |
個別型 | 50万円~150万円 |
永代供養の埋葬方法は、合祀型・集合型・個別型の3種類に大きく分けられます。遺骨を収蔵する面積や墓石の有無に比例して、永代供養料の金額が高くなるのが一般的です。
合祀型永代供養墓

合祀型は、遺骨を骨壺から出して、他者の遺骨とまとめて埋葬する永代供養墓。
費用相場は5万円〜30万円で、永代供養墓の中でもっとも安価です。合祀型は、個別の墓標や収骨スペースが不要で管理の手間がかからないため、費用が安くなっています。
ただし、一度合祀すると遺骨が混ざってしまうので、故人の遺骨を取り出せません。合祀型永代供養墓に埋葬したあと、遺骨を取り出したり移動したりできないので注意してください。
集合型永代供養墓

集合型は、1つの墓標の下に個々の骨壺をおさめる永代供養墓。収骨スペースが遺骨ごとに区切られているため、合祀型のように遺骨が混ざる心配がありません。ただ、個別安置期間が決められている場合は、期間終了後に合祀型永代供養墓に移されるのが一般的です。
集合型永代供養墓の費用相場は、20万円〜60万円ほど。「費用はおさえたいけど、最初から合祀墓にするのは抵抗がある」という方に向いている永代供養のスタイルです。
個別型永代供養墓

個別型は、個別の墓標と区画に埋葬する永代供養墓。専用の墓石を建てるため、家族単位で納骨やお墓参りできるのが魅力です。ただし、契約期間が決まっている場合は集合型と同じく合祀されます。
個別型永代供養墓の費用相場は50万円〜150万円ほど。個別の墓石が必要で、埋蔵面積も大きいため、費用はもっとも高額になります。また個別型は、墓石の購入費や年間管理料がかかるため、契約内容をよく確認してください。
永代供養のメリットとデメリット
永代供養のメリット
- お墓の後継者がいらない
- お墓の管理の手間がかからない
- 無縁墓・無縁仏になる心配がなくなる
- 一般的なお墓より費用をおさえやすい
永代供養最大のメリットは、お墓の管理が不要で、後継者がいらないこと。
一般的にお墓は、家族・親族がお墓参りをして、定期的に手入れをしないと荒れてしまいます。ですが永代供養では、墓地管理者が手入れしてくれるため、お墓参りや掃除の負担を減らせます。また、供養もすべて任せられるので、お墓を継ぐ家族や子どもがいなくても問題ありません。
管理する人がいなくなったお墓は「無縁墓」、遺骨は「無縁仏」となり、最終的には行政に処理されます。永代供養を選んでおけば、無縁墓・無縁墓になるリスクも避けられるでしょう。
その他、永代供養墓は、通常のお墓に比べて費用をおさえやすいのもポイント。個別型はやや高額ですが、合祀型・集合型は初期費用も維持費用も普通のお墓より安くおさえられます。
永代供養のデメリット
- 合祀すると遺骨を取り出せない
- 個別安置できる期間が限られる
- お墓を継承できない
永代供養のデメリットは、一度合祀すると遺骨を取り出せないこと。個別型や集合型も一定期間過ぎると合祀するため、遺骨が取り出せなくなり、他の場所に移動できません。永代供養を選ぶときは、本当に合祀して良いかしっかりと考え、家族・親族の同意を得ておきましょう。
また、お墓が継承できないのもデメリットと言えます。永代供養墓に納骨できる人数は、定員が決まっていることがほとんど。親子2世代の単独墓だと、4人〜6人までが一般的です。親族で遺骨を同じ場所に埋葬したいのに、人数がオーバーしてしまうかもしれません。その場合、別の区画を探す必要があり、同じ一族でも遺骨が別の場所になってしまいます。
永代供養を選ぶときのポイント
- 遺骨の数
- 埋葬方法
- 合祀までの期間
- 年間管理料
- 供養方法
永代供養墓を選ぶときは、遺骨の数や埋葬方法、合祀までの期間、お墓の管理料、供養方法の5つを確認してください。家族と相談して希望を固めたうえで、条件に合う霊園・寺院を探しましょう。
遺骨の数
永代供養墓は、埋葬する遺骨の数によって金額が変わります。遺骨の数が多いほど料金がかさむので、人数にあわせて予算を組み立ててください。
たとえば、先祖代々のお墓を墓じまいして永代供養墓に移す場合は、遺骨の数が多くなりがちです。また、永代供養墓を家族で使うなら、納骨する人数分のスペースを確保しなければなりません。永代供養墓に納骨する人数は、必ず事前に確認しましょう。
埋葬方法
永代供養墓の埋葬方法は、合祀型・集合型・個別型の3種類。埋葬方法によって納骨やお墓参りのスタイルが変わるため、きちんとイメージしておくのが大切です。
たとえば、合祀型・集合型は墓標や参拝スペースが共有なので、時期によってはお墓参りをするときに混み合うかもしれません。なかには、線香やお花のお供えができない永代供養墓もあるので、注意してください。
合祀までの期間
多くの永代供養墓では契約期間が決められていて、終了後に遺骨が合祀墓に移されます。一度合祀されると、不特定多数の遺骨と混ざってしまうため、特定の遺骨は取り出せません。
合祀後に「やっぱりお墓を建てたかった」「一部を手元に置いておけば…」と後悔するご遺族もいらっしゃいます。合祀までの期間は永代供養墓によって違うので、確認しておきましょう。
年間管理料
年間管理料とは、お墓の維持・手入れに必要な料金で、毎年墓地管理者に支払います。
永代供養墓は、契約時の永代供養料に含まれているため、年間管理料が不要な霊園・寺院がほとんど。ですがなかには、個別安置期間中や生前は年間管理料を請求される霊園・寺院もあります。
年間管理料の支払いが滞ると、無縁仏とみなされて行政に撤去されてしまうかもしれません。管理料の有無はもちろん、必要な場合は支払い計画を考えたうえで契約するようにしてください。
供養方法
永代供養墓の供養方法は、寺院の宗派によって変わります。住職が毎日読経してくれたり、年に数回まとめて合同供養を行ったりと、規模や頻度はさまざまです。
永代供養する寺院では、年に何回供養するのか、どのような供養なのかを確認しておきましょう。
永代供養に関するよくある質問
永代供養と納骨堂の違いは?
納骨堂とは、故人の遺骨を納める収蔵スペースが備わった施設。対して永代供養とは、遺族に代わって墓地管理者がお墓を管理・供養することです。
納骨堂はお墓の一種、永代供養はサービスの一種で、永代供養つきの納骨堂も存在します。そのため、永代供養墓(=永代供養つきのお墓)の種類の中に納骨堂があると考えましょう。
納骨堂は、アクセスのよい都心部に多くあり、建物内に遺骨を安置するため、天候を気にせずお墓参りできます。お墓の掃除や管理も不要なので、お墓を持ちたくない人やお墓が遠くて頻繁にお参りに行けない人などによく選ばれています。
永代供養にお布施は必要?
お墓に遺骨を納める納骨法要で僧侶に読経していただいたら、お礼にお布施を渡すのがマナーです。ただ永代供養では、契約時に支払う永代供養料にお布施が含まれていることがほとんど。契約内容によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
永代供養料にお布施が含まれていない場合は、表書きに「お布施」「御布施」と書いた白無地の封筒に現金を入れて僧侶に渡します。お布施の金額に明確な決まりはありませんが、相場は3万円〜5万円です。また、永代供養を行ったあと、年忌法要する場合は都度お布施を渡す必要があります。
永代供養料を支払うときのマナーは?
永代供養料の支払いは、当日手渡しや銀行振込、口座引き落としが多いようです。霊園・寺院によって方法が違うため、契約時の説明をよく聞いて、わからないことは確認しておきましょう。
当日現金で永代供養料を支払う場合は、お布施と同じマナーで渡します。封筒は白色の無地で、水引は必要ありません。黒墨の筆・筆ペンで、表書きは「永代供養料」、その下に自分のフルネームか家名を記入します。封筒の裏側は、左下に金額と住所を記入してください。金額の漢数字は旧字体を使用し、「金〇〇圓也」と書きます。
永代供養に宗派は関係ある?
永代供養に宗派は関係ありません。基本的には、宗旨・宗派を問わず誰でも利用できるので、特定の宗派があっても安心して任せられます。
一方で、納骨できる宗派が決まっていたり、「檀家さんのみ可能」といった条件を設けていたりする寺院もあるので注意してください。いずれにしても、法要や供養はその永代供養墓を管理している寺院の宗派によるものです。そのため、永代供養墓を選ぶ際には、寺院の宗派や供養の仕方を確認しておきましょう。
浄土真宗は永代供養できないって本当?
浄土真宗では、「故人は亡くなったあとすぐに成仏する」と考えられています。そのため、遺族が故人の冥福を祈る追善供養がなく、「永代供養」の概念もありません。
ですが浄土真宗でも、供養方法や納骨先の選び方次第で永代供養できます。浄土真宗で永代供養する方法は、「宗派の本山に納骨する」「永代供養墓のあるお寺に納骨する」「宗教不問の霊園に納骨する」の3つです。