2016年10月16日、膵がんのため逝去された作曲家・編曲家たかしまあきひこさんのお別れ会、「お別れ会だョ!全員集合」が、11月22日、東京・港区の青山葬儀所で開かれました。
17時から始まったお別れ会には関係者やファンが約400人集い、たかしまさんが手がけた曲の演奏や歌で送りました。
また会場にはフォトスペースも用意され、タクトを振るたかしまさんの写真を背景に、思い思いのポーズで最後の記念撮影を行っていました。
施行は株式会社日比谷花壇です。
楽しいエピソードたくさんの略歴紹介
「8時だョ!全員集合」をはじめ、ザ・ドリフターズに関わる番組・楽曲に多数携わるたかしまさん。ニュース番組、映画、バラエティ番組、音楽番組と幅広い分野で作・編曲、指揮を手掛けてきました。
そんなたかしまさんのお別れ会、はじまりは「8時だョ!全員集合」のテーマで始まりました。
司会は、NHKの阿部渉アナウンサー。
NHKの「BS 日本のうた」「歌謡コンサート」「紅白歌合戦」など、数々の番組でお仕事をともにしました。
阿部アナウンサーが駆け出しのころには、本番前に緊張していると、たかしまさんが優しい笑顔で話しかけてくれて、緊張をほぐしてくれたそうです。
たかしまさんの略歴紹介では、子供のころはすぐに泣くので「なきひこ」と呼ばれていたけれど、『誰か故郷を想わざる』を聞くと泣き止んだとそうです。
また、娘さんが小学生のころには、カエルの着ぐるみを着てテレビに登場して笑顔で手を振っていたり、パイを顔に投げつけられたり。作曲家・編曲家と聞いていたお父さんの職業に「疑問を感じた」といったご家族の話も披露されました。
和の世界をイメージした祭壇
祭壇はたかしまさんが師事していた華道家、稲葉英男先生が制作しました。
竹をふんだんに取り入れ、和の世界をイメージしています。
生け花を習うようになってから、自分でも花を生ける器も作るようになったというたかしまさん。
祭壇を飾る、楽器を使った花器はたかしまさんが生前、制作したものです。
弔辞
50年以上にわたって家族ぐるみで交流があったという自由民主党幹事長 衆議院議員 二階俊博さん、作曲家の山本純ノ介さん、 NHK第2制作センター エンターテインメント番組部 部長 井上啓輔さんが弔辞を述べました。
ヒゲダンスのテーマ曲についてなど、たかしまさんの仕事ぶりについても、さまざま想い出が語られました。
山本純ノ介さんの弔辞
弔辞 「おい、たかしま、久しぶりだな。最近ずいぶん稼いでるそうじゃないか?」 そんな風に、父、直純は天上でたかしまさんを迎えるのではないでしょうか? 直純塾の大先輩であるにもかかわらず、たかしまさんは私に気楽に話しかけて下さる方でした。 たかしまさんから私は、成長の節々で影響を受けていたのだなとしみじみと感じています。 たかしまさんからは、全員集合が始まったころ、得意のジープに乗せてもらい打ち合わせに連れて行っていただいたことがあります。 子供心に胸がときめく。 その中に何か厳しい、仕事の雰囲気を十分味わいました。 以前のTBSはコロンビア側の小高いところにちょっとした駐車スペースがあり、そこに車を止めると近くの入り口からさっと入っていかれました。 まさに、業界の人という感じでたかしまさんの後から恐々とついていったのを今でも思い出します。 本読み室というところでユウマエさんという珍しい名前の方を紹介されました。 女性の方でした。 写譜の大家であられました。 当時は生演奏がとても多く、演奏家に楽譜を作成するために写譜の専門家が作家についていました。 机に置いてある台本にさっと目を通すと、「アレンジを曲しなきゃいかんな」とたかしまさん。 カバンからTBSと書かれた五線紙をさっと出すとあっという間にその場で合唱の編曲を仕上げてしまいました。 そこにはピアノも資料も何もありません。 私が横で驚いていると、「歌ったり弾いたりするように編曲できなきゃね」と諭されました。 その曲はすぐに写譜屋さんにわたされました。 また、本番の会場にお供し、楽屋の歌い手さんに「直純さんの坊や」と言って紹介してくださり、いしだあゆみさんや、千賀かほるさんや、ピンキーさんなど人気の歌手に引き合わせてくださいました。 そんな私が高校で合唱で興味を抱いたのは、今思えば、たかしまさんの影響だったのかもしれません。 彼は高校の合唱のリーダー的存在で、折に触れ合唱についてつく語られたのでした。 そんなころに「大学ノートの裏表紙」という曲がはやりました。 すると、「俺の嫁さんも同じ名前なんだよな」とニコニコされ、「ああ、結婚されたんだな」ということがわかりました。 しばらくして、たかしまあきひこの名前はひらがなになりました。 それと共に有名になられ、大きな仕事を数々と重ねてきました。 『野獣死すべし』の音楽は、エスプリとウィットに富みながら、カッコよさが加わった数々の名曲が並び、特にエンディングとその音楽次第の当て方は、それまでの日本映画にはなかった様相で、分野を超えたアレンジ技術、技量は私の目標になりました。 同時期に、父、直純が音楽監督だった映画『二百三高地』。 これではたかしま音楽の宝庫となりました。 アトナール、トナール、ビツナール。そういったものは超越し、分野を超えたオーケストレーションを実に巧妙に書き分けられ、その技術、技法を思う存分振るわれ、その才能の高さを強く感じました。 ほんのわずかな時間であまりにたくさんの音符がスコアに並ぶので、「すごいですね」と尋ねると、「オーケストレーションが終わるまで寝ないのさ」と平然とされていて、それなら自分もという気持ちにさせられました。 そしてベレー帽をかぶってピアノを弾かれていた時期から、「全員集合」は新たな展開に入っていきました。 大道芸の要素を取り入れた演技にベストマッチな曲ができていました。 ヒゲダンスです。 テディ・ペンダーグラス風なベースラインが特徴的で大ヒットし、人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)した曲となりました。 直純さんによると、「似て非なる曲を作るのが一番難しいんだぞ」とよく言っていました。 小沢正一的心、この音楽も彼のエスプリによるものが大きいです。 直純風のテイストを巧妙かつしっかりと受け止め、楽曲に取り入れ長きにわたり親しまれました。 アカデミズムにも理解を示され、父と微妙にそりが合わんかったころの私に、「お父っつあんもアカデミズムが大切なことぐらいはよくわかっているんだよ」と諭されました。 私の結婚式や父の葬儀でも編曲を快く買って出ていただき、心より感謝しております。 最後にお会いしたのはパーシモンホールでしたね。 学生のころたかしまさんを迎えに行く仕事で、「柿ノ木坂交番で待っているから」と言われたのに、私は碑文谷警察に行ってしまい、大騒ぎになったことがありました。 何かパーシモンには縁があるんでしょうか? 5月22日のめぐろパーシモンでの演奏会は満員でした。 バッハのブランデンブルグ・コンチェルトは誠に厳格な中にも独特なウィットのある指揮が、素晴らしい時間を提供してくださいました。 最後の応援歌の指揮では、お得意の指揮棒、メトロノーム打法がさく裂しました。 その話をすると「テンポのしっかりした曲は、演奏家の邪魔をしない方がいい演奏になるんだ」と、たかしまさんらしいことを言っておられました。 録音現場ではスコアに加筆される時に、指揮棒を佐助のように背中にさされ、訂正される様子がコケティッシュでもあり、ユニークでもあり、思い出されます。 演奏会の最後のご挨拶でも「また来年も」とおっしゃっていたのに、とても残念です。 楽屋にあいさつに行くと、「二次会に来る?」と聞かれました。 何か話したそうにされていたのに、私は「今日は失礼します。またそのうちに」と言って終わってしまいました。 「また」は、なかったのです。 ごめんなさい。 僕に何を話そうとされたのでしょう。 オーケストレーションのことでしょうか? ビートルズのことでしょうか? 演歌やジャズの新しいアレンジの方法でしょうか? ピアノ曲の楽譜なんか出したらどうかな? 今となってはわかりません。 今ごろは天上で、直純さんが「おい、たかしま、連絡してくれよ」と言って、二人で作曲を分け合い、録音することでしょう。 たかしまさんの偉業に対し、心から尊敬と感謝を捧げ、謹んで氏のご冥福をお祈り申し上げます。 安らかにお休みください。 あなたの人生のオーケストレーションは完成したのですから。 平成28年11月22日 山本純ノ介
メモリアルコンサート
たかしまさんが常任指揮者として活躍した、東京マンドリン・アンサンブルによる演奏「日本民謡と日本古謡によるラプソディ」、NHK「BS日本のうた」で共演した二胡奏者、楊興新さん演奏の「Amazing Grace」、たかしまさんが東京芸術大学を卒業し山本直純さんの下でアシスタントをしていたころからの盟友、ロイヤルナイツさんの歌うロシア民謡「鶴」など、数々の演奏や歌が贈られました。
「8時だョ!全員集合」でたかしまさんと共に音楽の面から番組を支えた、岡本章夫とゲイスターズの演奏も会場を盛り上げます。
ニュース、アニメ、映画とたかしまさんが生み出した数々の曲をテーマごとに紹介する「〇〇な たかしまあきひこ」では、日常の中で誰もが耳にしたことのある曲が演奏され、楽しみながら故人の業績を偲んだり。
ザ・ドリフターズの高木ブーさんも、ウクレレを演奏しながら「たかしまさんの代わりに」と『千の風になって』を熱唱しました。
要所要所にヒゲとたらい
青山葬儀所の回廊には、想い出の品や写真が展示され、訪れた人々が足をとめています。
また、参列者にはパンフレット共に、ヒゲの形のクッキー「ヒゲクッキー」も配られました。
記帳カードは五線譜、記帳した後、カードを入れるのは、もちろん“たらい”です。
たかしまさんと記念撮影でお別れ
また、会場の受付前にはフォトコーナーも設置。
バケツやたらい、付け髭など小道具も丁寧に用意されていました。
皆さん、思い思いのスタイルで、タクトを振るたかしまさんと一緒に、想い出の写真を撮っていました。
とにかく明るく、前向きに、楽しく過ごすことがお好きだったという故人のため、「明るくたかしまさんをお送りしたい」という想いから開かれたこのお別れ会。
流れる曲も懐かしいものから、今も日々耳にするものまで。とても楽しいコンサートでした。
ココだ!という所にさりげなく置かれたヒゲとたらいも、温かな気持ちにさせてくれました。
プログラム 入場 「LIBRO SOUND GALLERY」より「草原情歌(編曲)」「100人のマーチ」(演奏:東京マンドリンアンサンブル) 開会 「8時だョ!全員集合」のテーマ 黙祷 略歴紹介 弔辞 自由民主党幹事長 衆議院議員 二階俊博 様 作曲家 山本純ノ介様 NHK第2制作センター エンターテインメント番組部 部長 井上啓輔様 メモリアルコンサート 「日本民謡と日本古謡によるラプソディ(抜粋)」(演奏:東京マンドリン・アンサンブル) 「Amazing Grace」(演奏:楊興新) 「ニュースな たかしまあきひこ」・・・FNNスーパータイム、他 「アニメな たかしまあきひこ」・・・アニメ「パーマン」より 「シネマな たかはしあきひこ」・・・映画「野獣死すべし」よりテーマ 「鶴(ロシア民謡)」(歌・・ロイヤルナイツ) 「盆回り」・・・8時だョ!全員集合より 謝辞 髙島康太 献花
(小林憲行)