ライフエンディング業界のトップインタビュー 180度転換の社内改革!社員皆がビジョンを持って走る、自走集団に

株式会社日比谷花壇
代表取締役社長 宮島浩彰

株式会社日比谷花壇の創業は、東京都葛飾区で庭園業を開始した1872 年。「戦後東京の復興事業の一環として、海外に倣ったフラワーショップを」という要請をきっかけに『株式会社 日比谷花壇』を設立した1950 年以降、主要都市への出店を進め、事業の幅も拡大。今や、展開する事業はお葬式事業、ウェディング事業、EC 事業、ギフト事業、ホームユース事業、緑化をはじめとするスペースデザイン事業、PPP 事業等、そのカテゴリーは従来のフラワービジネスの枠にとどまらない。 「感動はいつも花とともに」をキーワードに、花卉業界の枠を超えて「花のある暮らし」を提案する株式会社日比谷花壇・宮島浩彰代表取締役社長に話を聞いた。

2018年12月4日

文/藤巻史

 

理念やビジョンに基づいて自走できる集団をつくるために、これまでのやり方を180 度変えました

積極的に組織改革を進めていらっしゃると伺いました

従来、当社は中央集権的で、社員一人ひとりがビジョンや理念に基づいて自走できる集団ではありませんでした。父の代まで続いてきたこうしたスタイルからの脱却を図るため、業績管理の仕方から会議の在り方まで、あらゆる改革を実行しています。意図的に、これまでのやり方からちょうど180度変更しています。

合宿などを行って皆で課題を挙げてみると、問題は「会社の仕組み」が「社長を向いたものになっていた」ということがわかりました。人事制度も、業績管理もすべてが社長を向いた、主体的ではない組織。それが問題でした。
そして、これを社長ではなく、社会やお客様に向けるとなると、やはりビジョンが必要ということになりました。

でも、もともと企業理念はあったんです。ただの標語のようになっていた……。それを自分たちで解釈して、ビジョンをつくって、なりたい姿に向かっていく。そのような内側からの改革を行っています。

最近では、社員のほうから「職場環境をこんな風に変えたい」という意見やアイデアを積極的に出してくれるようになりました。
皆がビジョンを持って、社会とかお客様に向かっていくように、だいぶ切り替わってきています。少しずつ、理想とするインサイドアウトの組織に変わりつつある段階ですね。

 

皆が自由に意見を言える風土は良いですね

私がよく言うのは、自分で全部抱え込んで仕事を滞らせたり、思っていることがあるのに言わなかったり。そういうのが一番「ダサい」ということ。だから、私のほうからどんどん社員の内面に踏み込んでいくようにしています。
ミスをしたり、クレームをもらったりするのは、一生懸命仕事をした結果だから問題ないんです。

 

社員の皆さんとはどのようにコミュニケーションをとられているのですか?

基本的には、私の仕事はいろいろなところに行って、ビジョンを語るだけです。
あとはビジネスチャットを導入したので、これを使ってコミュニケーションをとっていますね。社員個人とつながっているので連絡しやすいですし、トークルームをつくって必要なメンバーを招待すればチームでのディスカッションも簡単に行えます。
会議が短くなりましたし、メールも私はほとんど使わなくなりました。地道に業務改革を進めたことによって、時間にはかなり余裕が生まれたと思います。

社員の側からすると、「社長はやりたいことや思っていることをどんどん言ってくる」という感じじゃないでしょうか?
でも、その甲斐があって、社員のほうも遠慮なく意見をぶつけてくれるようになりました。ディスカッションすると結構いろいろ言ってくれます。もちろん、いいことだけでなく、悪いこともです。
若手の社員も、「会社のこういうところがだめだと思う」とか、はっきり言いますよ。
現場で研修をした後にコメントを書いて提出してもらったら、「給料安っ!」って書いてあったりね(笑)。あと「やりたいこと」を言ってくる人も多いですね。そうやってどんどん調子に乗って、言ってくれていいんです。そうやって本音でディスカッションしていくことが大切なんです。

 

とはいえ、改革に着手したころは社員の間に戸惑いもあったのでは?

確かに、社歴が長い人の中には戸惑いがあったかもしれません。
それでも、根気強くビジョンを語り続けるうちに、自分ごととして捉えられる人が増えてきました。

社長のビジョンや、仲間のビジョンから良いと思ったものを取り入れて、自分の言葉のように語る。そうすることによって、全員の意識が近づいていくわけです。
お互いのビジョンは、いくらでも取り入れていい。むしろ、取り入れられていることを自慢するという具合です。そうすると忖度がなくなり、自分で主体的にチームをつくっていくようになります。

社員が疲弊してしまったら、掲げている看板は地に落ちる。 だからこそインターナルブランディングが重要なんです

 

改革を進められて、具体的にはどのような変化が表れていますか?

この2年間でかなり良くなっています。
主軸となっているのが、結婚式、お葬式など冠婚葬祭のお花の空間装飾ですが、「もっといい装花をつくりたい」といった希望がいろいろ出てきています。これはすごくいい変化だと思います。主体性を持ってもらうと、皆もモリモリ、ワクワクするようになる。

日比谷花壇でなくてもできる仕事は外部に出して、社員はよりクリエイティブな付加価値が高い仕事に集中する。このような改革も寄与して、付加価値のある仕事に自分の時間を使うようになって、花が変わってきています。定番のデザインだけでなく、例えばシャンペトルスタイルというのですが、野に生えているようなナチュラルにあしらうような草花系のアレンジメントスタイルを取り入れたりと、いい効果がだいぶ出てきていると思います。

 

「日比谷花壇のお花だから、もらって嬉しい」というように、会社のブランドもあると思います。改革の中で「変えてはいけないもの」ものについてはどのようにお考えですか?

ブランド力を維持するには、守るより変わることです。
日比谷花壇という看板は、あってないようなもの。どんなに歴史があっても、もしも社員が皆、疲弊してへとへとになってしまったら、掲げている看板なんてすぐ地に落ちてしまうでしょう。だからこそ、会社の内側、社員の内面から変えていって、皆が輝ける状態をつくらなければなりません。
理念や考え方を社員に根付かせ、それに基づいた行動を促すインターナルブランディングなくして、会社としてのブランドを確立することはできないといっていいでしょう。

これは本当に真剣に取り組まなければならないことです。
社員の給料を上げるのも真剣。
長時間労働を撲滅するのも真剣。
体裁を整えるより、基盤からつくり直すということですね。
社員がニコニコ輝いてくれるのが一番のブランディング。それをつくるのがビジョンです。社員が輝けば、会社の外にもつながっていくのは間違いありません。

 

エンディングライフ全体で考えれば、できることはたくさんあります

 

BtoB だけでなく、BtoC の事業も手掛けていらっしゃいます。変革を進める中、全体のポートフォリオはどのように描いていらっしゃるのでしょう

どの事業も、基本の目的は花文化を啓蒙し、花の需要を増やすことにあるので、B to BでもB to Cでもやることは変わりません。
B to Cのビジネスで直接吸い上げたお客様の声がB to Bのビジネスに生かせることもあり、心と心をつなぐツールとして花が生きるシーンをつくるという方向性ですべての事業をうまく循環させています。

例えばお葬式の施行は自社でも行っていますが、自社で行うことで、お客様の声を直接聞くことができます。その声から商品企画などを組み立てて、それをほかの葬儀社さんにも生かしていただく。社内の組織としてはB向けとC向けとで分かれていますが、とても近い存在です。
全体的にエンドユーザー志向にシフトしてきたので、部署間の距離もぐっと縮まりました。特に葬祭はB向け部門とC向け部門とが席も隣に座っていますし、融合を進めています。

 

供養業界との関わりの中で感じていることはありますか?

葬儀業界における花の価値は、まだまだ低いですね。葬儀を飾るパーツ、という考え方では祭壇を花祭壇に変える程度ですが、エンディングライフ全体に寄り添っていくと考えればまだできることは多いと思っています。
故人へのわだかまりを溶かしたり、故人との結びつきを改めて実感させたりする力がお花にはあります。大切な人が逝ってしまってひとり遺された人の生活に、彩りを添えることもできるでしょう。遺された人が「悲しいけれど、頑張って生きていこう」と笑顔になれるようなお手伝いをしていきたいです。

 

葬儀の中だけでなく前後にも関わることで、花の価値を上げていくと。需要が増えれば、業界にも良い影響がありますね

当社のお葬式のお客様は7 割が亡くなられる前から生前にご相談をいただいているため、ライフスタイルや好きなお花などをきめ細かくヒアリングし、提案の際には故人とその家族の思いを十分に反映できるのが強みです。婚礼事業で培ってきたノウハウやスキルを活かして場合によってはデザイン画を描き、イメージを可視化しているので、満足度も高いんです。

 

プランナーの力も大きいのではないでしょうか?

花に詳しくてデッサンができる。現場にはそういう人材がたくさんいます。それが私たちのコアの部分です。
30代後半から40歳くらいまで婚礼で活躍してもらって、その後はシニアライフやお葬式を考えるお客様へのサービスの場でさらにステップアップしていただく。そんなキャリアプランにしていきたいですね。

そういう社員の活躍によってお花のステータスを上げたいし、お葬式の中でも花の価値をもっと出せるようにしたい。だからこそ、「生前から寄り添う」という姿勢から入る。そのような教育にはとても力を入れています。

故人と家族の思いをお花で表現して、本当の意味での家族葬をつくっていきたい

これからやってみたいといったアイデアなどがあれば、お聞かせください

現在、当社には、40 代から70 代くらいで、お花が好きだという会員さんが1,200 名ほどいらっしゃいます。この会員組織を葬儀業界にも広げて、つながりサークルのようなものをつくりたいなと思っています。エンディングライフに対して当社の花を宣伝してくれたり、サービスに対して口コミを広げてくれたりするアンバサダーみたいな人たちのサークルですね。ネット登録すればお花が安く購入できるなどの特典はつけますが、こちらで管理はせず、皆さんで楽しんでもらうスタイルが理想です。

本社の会議室を、お客様とお話ししたり、エンディングライフを後押しするようなサロンをつくろうというプロジェクトが進んでいます。お客様と直接コンタクトをとり、イベントなどを行いながら、お客様とつながれるスペースにしようと思っています。

 

会議ができなくなりませんか(笑)

会議はたくさんありますので。減らす方向で進めています(笑)

葬儀業界に対しては、互いにノウハウや経験を提供し合いながら、より良い関係を構築していきたいと思っています。

社内に関していえば、事前相談にさらに力をいれ、常にお客様に寄り添ったご提案ができるようにしていきたいです。故人のことを思い、家族が結び付いて笑顔になるお手伝いをするために事前相談をするという文化を広め、少しずつ地方にも浸透させていけたらと思っています。

故人が表現したかったこと、家族が表現したいことをお花で示してあげることができれば、故人や家族が理想とするお葬式に近づけることができるでしょう。単に参列者が少ないというだけではない、本当の意味での家族葬をつくっていきたいですね。

 

ありがとうございました。

 

宮島浩彰

株式会社日比谷花壇 代表取締役社長
1968 年生まれ 東京都出身 青山学院大学卒
大手不動産会社などを経て、1997年に日比谷花壇に入社し、取締役に就任。経営企画、EC 事業構築などを経て、2000 年に代表取締役社長に就任。同年、全国の生花店をインターネットでネットワーク化した加盟店事業を行う(株)イーフローラを、2004 年に葬儀事業を立ち上げ。2014 年一般社団法人『花の国日本協議会』副理事長就任。

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「ライフエンディング業界のトップインタビュー」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている企業のリーダーにインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができないライフエンディングの最先端の場で、どのような取り組みが行われているのか?余すこと無くお届けします。