お供えを用意するとき、「のし紙は必要？」「表書きは何と書く？」と迷う人は少なくありません。実は慶事用ののし紙と弔事用のかけ紙は意味が異なり、使い分けに注意が必要です。
この記事では、お供えにかけるのし紙（かけ紙）の表書きや名前の書き方、水引や色の選び方、内のし・外のしの使い分け、渡し方のマナーまで詳しく解説します。
目次
お供えにのし紙は必要？かけ紙との違いと不要なケース
お供え物を用意するとき、品物にかける「のし紙」は必要か迷う人は多いでしょう。
そもそも「のし紙」とは、右上に“のし（のし飾り）“のついた「かけ紙」のこと。“のし”のあるかけ紙、つまり「のし紙」は慶事用で、弔事では“のし”のない「かけ紙」を使用するのが正式なマナーです。
ここでは、お供えにかけるのし紙の意味やかけ紙との違い、使わないケースを紹介します。
お供えにのし紙をかける意味と役割
お供え物にかけるのし紙には、弔意や哀悼の意を表す意味があります。お供えは故人や仏様へ供えるものであり、のし紙をかけることで、その気持ちを丁寧に伝えられるのです。
また、のし紙は「誰からのお供え物か」を示す役割も果たします。特に法事・法要で複数の方からお供えが届く場合、のし紙に施主の名前が書かれていると、誰からか一目でわかって便利です。
のし紙は、故人やご遺族に対する心遣いを伝える重要な役割を担っていると言えます。
のし紙とかけ紙の違い
一般的に、のし紙は右上に「のし飾り」と呼ばれる飾りが付いています。のし飾りの起源は、縁起の良い食べ物としてお祝い事に用いられてきた「のしアワビ（薄くのばして乾燥させたアワビ）」です。そのため、のし紙は結婚祝いや出産祝いなど、お祝い事の贈り物にのみ使用されます。
一方、弔事のお供え物にはのし飾りのない「かけ紙」を使用するのが正式なマナー。これは、弔事ではお祝い事を連想させる縁起物を避けるためです。お供え物にかけるのは、厳密には「かけ紙」と呼ぶのが正しいでしょう。
お供えでのし紙がいらないケース
お供え物すべてにのし紙が必要というわけではありません。たとえば、以下のような場合は、お供えにのし紙をかけてなくても問題ないとされています。
- 遺族に気を遣わせないよう配慮する場合
- 生花や果物など見た目が重視される品物の場合
- 故人が信仰していた宗教・宗派の確認が難しい場合
- 個人ではなく、複数人で手渡しする場合
大切なのは、形式よりも遺族に寄り添う心を示すこと。地域や宗派の習慣も異なるため、事前に確認して判断するのが安心です。
お供えにかけるのし紙の表書きの書き方
お供え物にのし紙をかける際には、表書きの言葉を正しく選ぶ必要があります。ここでは通夜から初盆までのタイミング別の表書きや御供とお供えの違いを整理します。
タイミング別の表書き（通夜・葬儀・四十九日・初盆）
通夜・葬儀
- 「御霊前」と書くのが一般的です。
- 故人の魂がご仏壇に祀られる前と考えるためです。
四十九日法要後
- 四十九日の忌明け後は「御仏前」と書きます。
- 故人の魂が仏様になるという考え方に基づきます。
初盆
- 「御供物料」や「御提灯代」と書きます。
- 「御供」も使用できます。
弔事の表書きは、通夜や葬儀では「御霊前」が一般的で、四十九日以降（法要後）には「御仏前」を用います。浄土真宗では故人がすぐ仏になるとの考えから、初めから「御仏前」を用いる点に注意が必要です。
初盆（新盆）には地域によりますが、「初盆御見舞」または汎用的に「御供」とするケースが多いです。
御供とお供えの違い
「御供」と「お供え」は似ていますが、使う場面に違いがあります。「御供」は仏教を中心に弔事全般で使われ、一般的に最も多く用いられる表書きです。一方で「お供え」は日常的な言い回しに近く、正式な弔事には適していません。
特にのし紙に書く場合は「御供」とするのが基本です。漢字表記にすることで礼儀を重んじている印象を与えられます。受け取る遺族に誤解を与えないためにも、表書きには必ず「御供」を使うようにしましょう。
お供えにかけるのし紙の名前の書き方
お供え物にかけるのし紙は、表書きの下に名前を書きます。ただ、個人や複数人の連名、法人・団体で贈る場合など、状況によって書き方が異なるので注意が必要です。
正しい名前の書き方と、間違えたときの対処法について解説します。
個人・家族連名
個人で贈る場合は、名前を中央にフルネームで書きます。
夫婦連名で書く場合は、夫の名前を中央に、妻の名前を左側に書くのが一般的です。故人と関係性が深い場合は、連名で書くこともあります。
3名以上で連名にする場合は、代表者名を中央に書き、残りの名前は左側に書きます。名前を全員分書ききれない場合は、「○○一同」とまとめて書くのが良いでしょう。
法人・団体
法人や団体でお供え物を贈る場合も、連名で贈る場合と同様に書きます。
会社名や団体名を中央に、その右側に代表者名や役職名を書きます。会社名と代表者名を併記するときは、会社名の下に代表者名を小さく書くのが一般的です。
社内で複数人が連名で贈る場合は、代表者名のみを書くか、「社員一同」と書きます。連名で書く場合も、役職の高い人から順に右から書くのがマナーです。
名前を書き間違えたときの対処法
名前を誤って書いた場合は、二重線で消すなどの修正は避けるべきです。失礼にあたるため、必ず新しいのし紙に書き直します。出発直前に間違いに気づいた場合は、包装紙を外して新しいのし紙をかけ直す方法が最も丁寧です。
お供えののし紙の色と水引の選び方
お供え物にかけるのし紙は、弔事用のものを選びます。水引の色や結び方にはマナーがあるため、注意が必要です。地域による違いも踏まえて、正しい選び方について解説します。
弔事用ののし紙に使う水引
- 水引の結び方：結び切り
- 水引の色：黒白、双銀、黄白
弔事では不幸が繰り返さないように、一度結ぶとほどけない「結び切り」を使用します。慶事の蝶結びと混同しないように注意しましょう。水引の色は、一般的に四十九日の法要前は黒白または双銀を選びます。黄白の水引は、主に四十九日以降の法要で使われます。
宗派や地域によっては、水引を使わない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
関西・関東など地域による違い
- 関東：黒白の水引
- 関西：黄白の水引
水引の色は、地域によってマナーが異なります。特に、関西と関東では水引の色が違うことが多いです。ただし、最近は地域に関係なく、宗派や故人の意向を尊重することが増えています。
地域によって異なるマナーをすべて把握することは難しいです。迷った場合は、地域の慣習に詳しい人に聞いたり、仏具店や百貨店で相談したりするのも良いでしょう。故人や遺族への配慮を第一に、失礼のないように選ぶことが大切です。
お供えにかける内のし・外のしの使い分け
お供え物にかけるのし紙には、「内のし」と「外のし」の2種類があります。それぞれ意味と役割があり、使い分けることが大切です。内のし・外のしの違いと、具体的な使い分けのポイントについて解説します。
内のし・外のしとは
内のしは、品物に直接かけ紙をかけ、その上から包装する形式です。贈られた側は、包装を解くまで誰からの贈り物かわかりません。控えめな気持ちを表したいときや、配送で品物を贈る際に適しています。
一方、外のしは、包装紙の上からかけ紙をかける形式です。のし紙の表書きが外から見えるため、誰からの贈り物かがすぐにわかります。お供え物を手渡しする場合や、贈答品の内容を明確に伝えたいときに適しています。
内のしと外のしは、どちらが正しいという決まりはありません。お供え物を贈る相手との関係性や、贈る状況に合わせて使い分けることが重要です。
お供え物での内のし・外のしの使い分け方
| 内のし | 故人・遺族に配慮や謙虚な気持ちを表したい場合 配送でお供え物を贈る場合 |
| 外のし | お供え物を手渡しする場合 誰からの贈り物かを明確に伝えたい場合 |
お供え物の場合、内のしと外のしを場面に応じて使い分けます。相手への配慮を最優先に考え、内のしと外のしを使い分けることが大切です。遺族が受け取る際の状況を想像して選ぶと良いでしょう。
例えば、手渡しする場合は外のしで、配送する場合は内のしにするというように、ケースバイケースで判断してください。
お供え物の正しい渡し方
お供え物を用意したら、相手にどのように渡すかも重要です。手渡しする場合と郵送する場合で適切なマナーが異なるため、状況に応じた渡し方を知っておく必要があります。
ここではお供え物を直接持参する際の作法と、配送で送る際の注意点をまとめます。
手渡しする際のマナー
お供え物を持参する場合は、弔意を示す丁寧な渡し方が求められます。
まず、のし紙の表書きが相手から読める向きにして差し出します。手提げ袋を使って運んだときは、玄関や式場に入る前に袋から出して渡すのが基本です。受付や遺族に直接渡すときは「ご霊前にお供えください」と一言添えると心遣いが伝わります。
遺族が多忙な場合は長時間会話を避け、簡潔に渡す配慮も大切です。品物は必ず両手で持ち、腰を軽くかがめて渡すと丁寧な印象になります。
郵送する際のマナー
遠方に住んでいるなど直接伺えない場合は、宅配便を利用して送るのが一般的です。その際はのし紙を掛けた品物を包装し、さらに配送用の段ボールに入れて送り出します。配送中にのし紙が汚れたり破れたりしないように、外のしではなく内のしにして包装紙の内側に収めるのが適切です。
送り状には「御供」や「お供え物在中」と記すと遺族にわかりやすくなります。併せて挨拶状や手紙を同封し、弔意や欠席の事情を伝えると誠意が伝わります。郵送では顔を合わせられない分、文章での心配りが重要になります。
お供えののし紙に関するよくある質問
お供えののしの書き方は？
お供えののし紙には、水引の上部中央に「御供」と表書きを書きます。通夜・葬儀であれば「御霊前」とする場合もあります。名前は水引の下に差出人を記し、個人ならフルネーム、家族なら「◯◯家一同」、法人なら「株式会社◯◯」と正式に書きます。
筆は薄墨が基本で、故人を悼む気持ちを表します。書く位置は中央にそろえると整った印象になり、受け取る側にも礼儀正しく映ります。
お供えののし紙を使うのは四十九日まで？
お供え物にのし紙をかけるのは、通夜や葬儀から四十九日までと考える人が多いですが、実際は四十九日以降も使われます。四十九日までは「御霊前」や「御供」を表書きに用い、四十九日を過ぎてからは「御仏前」と書きます。
初盆や年忌法要でものし紙は使われ、故人を供養する意を示します。したがって「四十九日まで」と限定せず、法要の節目ごとに適切な表書きを選ぶことが大切です。
亡くなってすぐにお供えを渡す場合の表書きは？
亡くなった直後に供物を渡すときは「御霊前」と書くのが一般的です。仏教では四十九日までは霊の存在を意識するため、この表記を用います。
ただし浄土真宗など一部の宗派では、亡くなった直後から「御仏前」を使うのが正しいとされます。宗派の違いを理解せずに表書きを誤ると失礼にあたるため、事前に確認できる場合は宗派に合わせた表書きを選ぶと安心です。
御供とお供えの違いは何ですか？
「御供」と「お供え」は似た意味を持ちますが、弔事ののし紙には「御供」を使うのが正式です。御供は故人やご先祖に供える意味を持ち、格式を重んじた表現になります。
一方で「お供え」は日常的な言葉で、のし紙に書くと軽い印象を与えかねません。そのため弔事のお供え物には「御供」と書くのが基本です。形式にのっとることで、遺族に対しても礼を尽くした印象を与えられます。
お供えののし紙のマナーを正しく理解し、心を込めて贈ろう
お供え物にかけるのし紙には、弔意を伝える意味と、贈り主を明らかにする役割があります。表書きや名前の書き方、水引や色の選び方を正しく理解することが大切です。
内のしと外のしの使い分けや、手渡し・郵送時のマナーを知っておけば、相手に安心して受け取ってもらえるでしょう。地域や宗派の習慣を尊重しつつ、遺族に配慮した渡し方を心がけることで、形式だけでなく心のこもったお供えを実現できます。