盆提灯は、ご先祖様の霊が帰るときの目印として、お盆の月初めからお盆明けまで飾ります。故人が亡くなって最初のお盆(初盆)では、通常の盆提灯にくわえて白提灯を飾り、故人を供養するのが一般的。初盆の翌年以降は、絵柄の入った盆提灯だけを飾ってご先祖様をお迎えします。
この記事では、盆提灯を飾る時期や購入者、マナーなどをご紹介。お盆が近づいてきて、盆提灯の用意や購入が必要な方は、ぜひ参考にしてください。
目次
お盆に提灯を飾るのはなぜ?

盆提灯を飾るのは、お盆の迎え火・送り火の役割を果たすため。故人の霊が自宅へ迷わずたどり着けるよう、帰るべき場所の目印としての意味があるようです。また、故人の冥福を祈りつつ、生前お世話になったことに感謝する意味も込められています。
盆提灯はいつからいつまで飾る?
お盆の月初めからお盆明けまで
- 新盆(7月):7月初旬~7月16日
- 旧盆(8月):8月初旬~8月17日
盆提灯はお盆の月初めから、お盆明けまで飾るのが一般的。お盆の時期は地域によって異なり、7月に行う「新盆」と、8月に行う「旧盆」があります。
7月にお盆を迎える地域では、7月初旬から飾って7月16日以降に片付けます。8月にお盆を迎える地域では、8月初旬から飾って8月17日以降に片付けます。
ただし提灯の灯りは、お盆期間中ずっと灯しておくわけではありません。通常は、ご先祖様をお迎えする13日の夕方から、お見送りする16日の夕方まで点灯させます。一晩中つけておく風習のある地域もありますが、ほとんどの地域では夕方に点灯し、就寝前には消灯します。
盆提灯は誰が買う?
かつては、初盆用の白提灯(白い提灯)は家族が、毎年使う盆提灯(絵柄入りの提灯)は親戚や知人が贈る習わしでした。ですが近年は、住まいやスペースの問題から、白提灯も盆提灯も故人の家族(喪家)が購入するのが一般的。配偶者や同居していた子どもなど、故人に近い家族が用意する家庭が多いです。
白提灯・盆提灯を誰が用意するかは、地域や家庭によって異なるため注意してください。例えば、関東地方では家族が用意する家庭が多く、関西地方では親族が分担する慣習が見られます。地域によっては、親戚一同で用意したり、故人の実家が主体となったりします。
そのため、盆提灯の購入に迷ったら、まず家族や親戚間で話し合い、地域の風習を尊重して決めましょう。また、地元の仏具店や葬儀社に相談してみるのも一つの方法です。
お盆の2年目(初盆の翌年)に盆提灯は飾る?
お盆の2年目、つまり初盆の翌年以降は、絵柄の入った盆提灯だけを飾ります。
通常のお盆では、初盆で使った白提灯(白い提灯)は使いません。白提灯は、故人が初めて家に戻るときに迷わないよう、初盆の時期だけ飾る特別な提灯です。新盆が終わったら、感謝の気持ちを込めて処分するのが一般的です。
また白提灯は、住んでいる地域のお盆の時期に合わせて飾ります。故人が亡くなってあと四十九日法要を終えていない場合は、翌年が初盆となるので注意してください。
盆提灯を使い回していい?
盆提灯(絵柄入りの提灯)は、毎年繰り返し飾って問題ありません。丁寧にお手入れして保管すれば、何年にもわたって使用できます。盆提灯を長く使うためには、夜間に電気を消したり、保管時に防虫剤を入れたりする工夫が大切です。
一方、初盆で使用する白提灯(白い提灯)は、原則として使い回しません。白提灯は、故人が初めて家に戻るときの目印として、故人1人につき1つ用意する特別な提灯です。初盆が終わったら、お寺に納めたり、お盆の送り火で燃やしたりして処分します。難しい場合は、お清めをしたあと、自治体のルールに従って処分しても問題ありません。
ただし、地域やお寺によっては、家紋入りの白提灯を毎年使い回すところもあります。迷った場合は、地域の年配の方やお世話になっているお寺に相談してみるのが安心です。
盆提灯の有名な地域

提灯の産地として有名なのは、岐阜県の岐阜提灯と福岡県の八女提灯。とくに岐阜県は盆提灯の産地で、この2か所で作られた提灯は経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されています。
原材料となる和紙や竹が手に入りやすかった岐阜では、18世紀中頃から岐阜提灯が作られるようになりました。岐阜提灯は、竹と美濃和紙を原料とし、秋草や風景などが描かれた火袋が特徴。高度な技法による完成度の高さと美しさを兼ね備え、人々の心を落ち着かせてくれる提灯です。
八女提灯は、1本の細い竹ヒゴを螺旋状に巻いて提灯の形にする「一条螺旋式」で作られています。一条螺旋式は、現代で作られている盆提灯の起源だと言われています。八女提灯の材料には、竹や和紙、漆や木材が使用されるのが一般的です。
また、岐阜や八女以外には、茨城県の水戸でも盆提灯が作られています。水戸は、かつて岐阜・八女と並んで提灯の三大産地と呼ばれていました。水戸で作られる提灯の中では「水府提灯」が代表的です。水府提灯は、竹ヒゴを使って輪を多く作り、それを並べて糸で繋ぐ手法をとります。螺旋状に整えていく手法に比べ丈夫で、実用的な仕上がりになるのが特徴です。
盆提灯の種類
盆提灯には、大きく分けて「吊るすタイプ」と「置くタイプ」の2種類があります。
吊るすタイプの盆提灯には、壺の形をした「御所提灯」や、細長い円筒形の「住吉提灯」などがあります。置くタイプの盆提灯は、三本足の「大内行灯」が一般的です。また、玄関先などに飾る「門提灯」も種類の一つです。
大内行灯
大内行灯は、床に置いて使用するもっとも一般的な盆提灯。「大内」は皇居の内裏を指し、「大切な場所に置く提灯」という意味が込められています。
大内行灯は、三本足の台座の上に火袋を乗せ、上部に雲手がついている提灯です。かつては一対で飾るのが基本でしたが、現代の住宅事情にあわせて、ひとつだけ飾る家庭も増えています
御所提灯
御所提灯は、壺のような形をした吊り提灯で、「岐阜提灯」と呼ばれることもあります。天井から吊るすため、スペースをあまり取らず、玄関や仏壇の前などに飾るのに適しています。
切子提灯(切子灯籠)
切子提灯(切子灯籠)は、浄土真宗で主に使用される灯籠です。浄土真宗は、お盆に故人の霊が戻ってくるという考えがないため、盆提灯を飾る習慣がありません。
切子提灯(切子灯籠)は、角を落とした多面体の火袋が特徴で、悪霊を祓うと言われています。そのほか、「故人の魂が休憩するための部屋」や「迎え火としての門提灯」として飾られるようです。切子提灯(切子灯籠)は、地域や宗派によって役割や飾り方が異なるため、事前に確認しておきましょう。
御殿丸提灯
御殿丸提灯は、球形の火袋が特徴的な吊り提灯です。手板と下輪に房がついており、豪華な見た目で格式高い雰囲気があります。また、天井から吊るすため、床に置くスペースがなくても飾りやすいです。
住吉提灯
住吉提灯は、細長い円筒形の吊り提灯です。もともと、博多の住吉町で使われ始めたことから「住吉提灯」という名前がついたとされています。住吉提灯は天井から吊るすため、狭い場所でも飾りやすく、すっきりとした見た目が特徴です。
門提灯
門提灯は、ご先祖様が迷わずに家へ帰れるよう、玄関先や縁側に飾る提灯です。お盆の時期だけ飾る提灯で、迎え火としての役割もあります。門提灯には家紋を入れるのが一般的で、ご先祖様が自分の家を見つけやすくするための目印となります。
迎え盆提灯(お迎え提灯)
迎え盆提灯(お迎え提灯)は、お墓でご先祖様の霊を迎えるときに使用する、持ち手がついた提灯です。お盆の入りである13日の夕方にお墓で迎え火を灯し、ご先祖様の霊を提灯の明かりで自宅までお連れします。お墓から家まで道しるべとなる提灯の光は、ご先祖様への温かいおもてなしの気持ちを表す大切な役割を担っています。
白木盆提灯
白木盆提灯は、神道で使う白木でできた提灯で、仏教で使う大内提灯と形がよく似ています。神道では、故人の魂は神様になると考えられています。そのため、仏教で使われる絵柄や家紋入りの提灯ではなく、神聖な意味を持つ白い提灯が使われます。
お盆は盆提灯を飾ってご先祖様を供養しよう
盆提灯の飾り方や種類は、地域によって違いがあるので、慣習に従うようにしましょう。
また、現在はさまざまな提灯が販売されています。柄や色味はもちろん、明かりを灯すと回転する提灯もあります。故人の好みや思い出をふまえて選ぶのも、供養のひとつになるのではないでしょうか。
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