三途の川の渡し賃「六文銭」とは?棺にお金を入れる意味と現代の貨幣価値

兵藤 大介【記事監修】
小林憲行

記事監修兵藤 大介

六文銭とは、故人が極楽浄土までの道のりでお金に困ることのないよう棺におさめる冥銭(めいせん)で、今でも葬儀の副葬品としてメジャーな存在です。

といっても六文銭という硬貨があるわけではなく、一文銭の硬貨が6枚揃った状態のことをいいます。一文銭は日本で最初の流通貨幣で、明治の初期に至るまで実に1000年以上にわたって使われてきました。ここでは六文銭の意味や名前の由来、今の貨幣価値でいくらくらいになるのかなどを紹介します。

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六文銭は頭陀袋に入れる副葬品

六文銭は、仏式の葬儀に使われ、故人を棺へと納める際に添える副葬品のひとつです。一般的な仏教の概念では、亡くなった人は49日をかけて浄土を目指すといわれています。六文銭は、その旅の途中でお金に困ることのないように、という遺族の気持ちが込められた伝統儀礼です。あの世で使うお金という意味から冥途のお金、「冥銭(めいせん)」とも呼ばれます。

六文銭は死に装束で使われる頭陀袋(ずたぶくろ)の中に入れられます。死に装束は正式名称を「仏衣(ぶつい)」といい、亡くなった人が最後に身に付けるものです。故人を極楽浄土に向かう旅人に見立て、托鉢をする修行僧の衣裳になっています。頭陀袋は修行僧が首から体の正面にかける、平たい布製の物入れです。

かつてはここに本物の一文銭6を入れていましたが、現在は使用されていない通貨であることや、金属製の副葬品は燃え残るため火葬にできないなどの理由から、今では紙に印刷されたものに変わっています。

六文銭は昔の旅人が身に付けていた旅費

六文銭は、死者が旅の途中で渡ると信じられている三途の川(さんずのかわ)の渡し賃になります。三途の川は、現世(この世)と冥途(あの世)を隔てる川で、お金を必要とする最後の機会になります。その渡し賃が六文とされていました。六文銭はいわば最後の交通費というわけです。ちなみに、三途の川の由来は、故人の生前の行いによって、橋を渡れる人、浅瀬を渡る人、深いところを渡る人の3通りの渡り方があると考えられたからという説もあります。

三途の川には奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)という夫婦者の番人がおり、渡し賃を用意していない者の衣類をはぎ取ってしまいます。昔の人にとっては「これさえ持っておけば難所を越えられる」という、お守りのようなものだったのです。

また、実際の世の中でも六文銭を身に付ける機会がありました。今のように発達した移動手段のなかった時代には、多くの旅人が道中でいつ野垂れ死にしても良いよう、衣服に六文銭を縫い付けていたといわれています。

真田家の旗印として有名に

その昔、武田氏の家臣として活躍した戦国時代の武将・真田幸隆(さなだ ゆきたか)が、六文銭をモチーフとした家紋をつくり、旗や兜などに使用したのは有名です。これは六文銭が死後の世界で使われることから、いつ死んでもいいように命をかけて戦うという意気込みをアピールしたものでした。デザインは、円の中央を四角に抜いた一文銭を横に3枚、縦2列に並べたシンプルなものです。

一般に呼ばれる六文銭とは、実はこの真田家の家紋を指すことが多いのです。

六文銭の由来は「六道銭」

六文銭という名称は、いわゆる真田家の家紋を指すものであり、もともとの仏教では「六道銭(ろくどうせん)」というのが正しい呼び方です。六道とは、人間が生まれ変わるたびに輪廻するといわれる6つの世界のことです。上から順に、「天上道(てんじょうどう)・人間道(にんげんどう)・阿修羅道(あしゅらどう)・畜生道(ちくしょうどう)・餓鬼道(がきどう)・地獄道(じごくどう)」となっています。このうち自分の意志で仏の教えを学び、悟りを得ることができるのは「人間道」だけとされています。

これら六道のいずれに転生しても衆生を救済すると信じられているのが、子どもの守り神としても親しまれている「お地蔵さま(地蔵菩薩)」です。六道のそれぞれに「檀陀・宝印・宝珠・持地・除蓋障・日光」という、計6体の分身が存在していることから「六地蔵」と称されます。六道銭は、この六地蔵の6という数字にあやかり、三途の川の渡し賃になったのではないかと考えられています。

六文銭を今のお金に換算すると

一文銭は、多くの時代において最小単位の貨幣であり、庶民の間ではもっともポピュラーな銭でした。ここでは、もっとも一文銭が普及し、資料も豊富な江戸時代での価値を見てみましょう。

金1両は約13万円の価値があったようです。そして、金1両と銀60匁(もんめ)と銭(銅)4,000文は同等の価値があったといわれていますので、銀1匁=2,166円、1文=32.5円と計算できます。すると六文銭に当たる金額は、今の貨幣価値で195ということになります。電車やバスの運賃で考えると近場に行ける金額ですので、川の渡し賃としては、妥当な金額といえるのではないでしょうか。

まとめ

六文銭は、三途の川を無事に渡るための交通費であり、49日の旅の安全を願う副葬品でもあります。

しかし現在では火葬炉の関係から、紙に印刷されたものが使われています。そのほかにも納棺できる副葬品には制限があります。思い出の品を入れたいがどうしよう、などの疑問がありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

兵藤 大介【記事監修】
兵藤 大介

記事監修兵藤 大介

大学卒業後、広告業界で20年にわたりキャリアを築く。スタートアップの広告代理店立ち上げに参画し、代表取締役を務めた経験も持つ。 2020年、これまでの経験と異なる領域へ挑戦する「キャリアの逆張り」として株式会社鎌倉新書に入社。相続関連の新規事業立ち上げを1年間担当した後、2年間葬祭事業部に従事。その後、事業横断型の営業推進組織の責任者として、広告商品の新規開発や終活領域のデジタル広告運用支援を2年間リードした。 2024年より現職。事業部長として2回目の就任。社内のデータ分析と全国の葬儀社との対話から得られるリアルな現場の声を掛け合わせ、業界が抱える課題の解決に挑んでいる。 主なメディア出演やコメント掲載として、フジテレビ「めざまし8」、テレビ東京「LIFE IS MONEY~世の中お金で見てみよう~」、日本経済新聞がある。

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