離婚しないという選択〜主人が定年退職でずっと家に。それでも別れなかった理由とは?〜

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【連載】リアル・シニアライフ
この連載では、シニアライフにまつわる、人間関係、経済問題について、実際の生活者にヒアリングした結果を、個人の事情がわからないよう脚色し、ルポ形式でお伝えします。

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2年半前、長年勤めあげた会社を主人が定年退職しました。

息子夫婦や孫も集まり、ささやかながら退職祝いをし、私が退職したわけではないのですがなんだかとても充実感とも満足感とも言えない気持ちになったのを覚えています。
きっと、ここまで勤めあげたのは少しは私のおかげよね!と誇らしい気持ちがあったのだと思います。
子供も独立していますので、これからは慎ましくも穏やかな夫婦二人の生活が始まるんだ!と少し新鮮な気持ちにもなりました。
主人が現役時代はとにかく仕事優先。子供の運動会や行事にもなかなか来れず、それこそ夫婦二人の時間なんてありませんでしたから。
私なりに、二人でできる趣味を探すのもいいし、昼間から映画に行くのもいいかもしれない、ペットを飼うのはどうかしら、などと思いを巡らせていたんですよ。

始まった老後の生活

「老後」なんて言葉いかにも老人って感じがして嫌ですが、主人との新たな生活が始まりました。
色々勝手に思いを巡らしていたのも束の間。
ずっと主人が家にいるんです。
定年退職したので当然と言えば当然なのですが、、、。
仕事一辺倒で趣味や友人との時間を持てなかった主人です。
特に何をするでもなく、ずーっと家にいるんです。
私はと言えば、長年専業主婦をしておりますので、いくら家族優先で過ごしていたと言えども自分の生活リズムはすっかり出来上がっています。
主人を送り出した後は気楽な一人の時間。
地域の小学生の登下校の見守りボランティアや公民館で行われているヨガサークルへの参加など自分なりに家族に迷惑をかけない程度の趣味や付き合いもあります。
それが、日がな一日主人が家にいると思うと、一人でボランティアやヨガへ出かけるのも気が引けます。
ボランティアへは誘って何度か一緒に行きましたが、自分だけが新参者という環境が受け入れられずらかったのか周りと打ち解けることもなく声をかけても「行っておいで」と言われるようになってしまいました。

よくある話

主人は私がボランティアやヨガ、お友達とお茶に行くことを決して止めはしませんし、特に不満を言われたこともありません。
これまで仕事ばかりで忙しい毎日でしたのでゆっくりしたいのだろうと、一日中家にいる主人を少し疎ましくも思いましたが、気にしないように努めました。
ただ、ボランティアに参加している同じように定年退職された男性や、定年退職をきっかけに夫婦で充実した日々を送っているなんて話を見聞きするたびに私の心は少しずつ寂しさを感じ、主人のことがとても魅力のない男性のように感じてきてしまいました。
主人は何も変わってはおらず、私がいろんな期待や希望を持ち過ぎてしまっていたのだと思います。
思い返してみると、いつもそうでした。
子供の習い事、部活、進路、旅行先、夕ご飯のメニューひとつとっても主人はいつも不満を言いませんが意見も言いません。
決断なんてもってのほかです。
子供の意見、私の意見、お財布事情、色々な状況を考え私が決めてきました。
その頃は主人は仕事で忙しいから私が決めなくては、と何も不満に思ったこともありませんし、贅沢しなければ金銭的な苦労はなかったので頼りないとも思ったことはありません。
働いたことのない私が言うのもなんですが、こんな様子できちんと仕事はできていたのでしょうか。
文句を言わず、真面目に取り組むのは主人の良いところです。
きっと会社の歯車としては主人のような人も必要だったのでしょう。
ただ、仕事という免罪符がなくなった今、私にはとてもつまらない人に思えて仕方ありません。

さぁ、どうする。

正直、離婚という言葉が頭をよぎらないわけありません。
毎日毎日、特に中身のある会話があるわけではない主人と日がな一日一緒に過ごすのは苦痛です。
ただ、これまで専業主婦しかしたことがない私です。世間知らずのおばあさんが社会へ出ても役立たずなのは自分が一番よくわかっています。
新聞やフリーペーパーの求人欄を見てみましたが、当然私ができそうなことどころかそもそも受けられるようなところもありませんでした。
離婚を思い立つには少し、いえ、かなり遅かったようです。
退職金が出たとはいえ、財産分与したとしても老後の生活には心配ばかりです。
独立した子供には面倒かけられません。

離婚しないという選択

結局、私には主人と一緒にいるという選択しかありません。
これが私の身の丈にあった仕事なのかもしれません。
長い年月をかけて構築してしまったこの環境の一因は私にもあるんですよね。
主人の忙しさにかまけて私たちには中身のある会話がありませんでした。
それも何十年とです。
それが、退職したからと言って急に変わるわけではありません。
老後の夫婦関係改善プロジェクトとして、残りの人生密かに取り組む決心がついたのです。
主人は定年退職しましたが、私の仕事はまだまだ終わりそうにありません。

プレゼントは突然に

離婚しないという選択をした翌日でした。
決めてしまえば私の気持ちもスッキリしたものです、いつもより爽やかな朝に感じました。
いつも通り新聞を読み終えた主人から突然渡された小さな紙袋。
開けてみると、そこにはダイヤの指輪と短い手紙が。
『結婚して50年。有り難う。これからもよろしく。』
先日まで離婚で迷っていた自分自身が申し訳なくなりました。
こちらこそありがとう。これからもよろしく。

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