天理教の葬儀とは、「借りていた身体を神に返し、新しい身体が見つかるまで自分の魂を神に預かっていただくための儀式」とされています。天理教とは、日本で江戸時代末期に開かれた新宗教のひとつで、教祖、中山みきがこの世を創造した神「天理王命」の啓示を受け、誕生しました。本部神殿は奈良県の天理市にあります。
目次
天理教とは
- 天理教は、教祖中山みきが天理王命の啓示を受けたことが始まりだとされています。
- 天理教では、全人類を兄弟姉妹とし、お互いを助け合って仲良く暮らすことで「陽気ぐらし」の世界を目指します。
天理教は、奈良県の天理市に本部神殿を置いている宗教です。日本で江戸時代末期に開かれた新宗教のひとつで、教祖である中山みきがこの世を創造した神である「天理王命(てんりおうのみこと)」の啓示を受けたことが始まりだとされています。
天理教について
天理教では教祖である中山みきを「教祖(おやさま)」と呼び慕っており、人々を救済するために自ら働いた生き方を手本としています。そして、天理教の教えとはこうした人間本来の生き方をすることにあります。全人類を兄弟姉妹とし、お互いを助け合って仲良く暮らすことで「陽気ぐらし」の世界を目指します。
教義の基礎は「おふでさき(御筆先)」「みかぐらうた(神楽歌)」「おさしづ(御指図)」という3種類の啓示書にて示されています。これらの書物は天理教では「原典」と呼ばれており、人間の考えが混じっていないとされている点でほかの書物とは大きく異なります。
そして、この3種類の原典をもとに教会本部が編述したものが「天理教教典」です。この教典には、親神の救済意志および救済実現までの道筋が体系的に記されています。
天理教の教会
天理教の教会は教会本部および一般教会から成り、一般教会はその規模によって大教会と分教会の2つに分類されています。
信者数は1,199,955人、教会の数も169,677あります(文部科学省「宗教統計調査」2017年度より)。韓国、台湾、ブラジルなどをはじめとした海外にも多くの教会が存在します。なお、参拝は昼夜を問わず誰でも行うことができます。
天理教の葬儀の特徴
- 天理教の葬儀は仏式よりも神式に近いものといえます。
- 天理教の葬儀では、「死」を「出直す」と考えます。
天理教は、教派神道の一種です。そのため、天理教の葬儀の内容は仏式よりも神式に近いものだといえます。
とはいっても、一般的な神式とは異なる点もあります。もっとも大きな違いは、「死」を「出直す」と捉えるということだといえるでしょう。
天理教での葬儀の意味
天理教では、現在の身体は神から借りているものだと考えます。そのため、葬儀は「借りていた身体を神に返し、新しい身体が見つかるまで自分の魂を神に預かっていただくための儀式」だとされています。
天理教では「亡くなる」という言葉は用いず「出直す」という言葉を使います。また「命日」という言葉も使われず、その代わりに「出直し当日」といいます。葬儀においてお悔やみの言葉を使わないのは、天理教の大きな特徴だといえます。
天理教でのお通夜とは?
天理教での通夜は「みたまうつし」と呼ばれます。
みたまとは魂のことで、「今まで使っていたからだから魂(みたま)を移す」という意味から名付けられました。みたまうつしは天理教においてとても重要な儀式で、告別式以上に優先されることもあります。
天理教で葬儀を行うとき
天理教の葬儀はやはり仏式とは異なりますが、遺体の搬送方法などは仏教と変わりません。病院で亡くなったら、葬儀社へ連絡をして寝台車で運びましょう。
ただし、天理教の葬儀をする場合は祭官や楽人を依頼する必要があります。
仏教とは違いお坊さんではないので、葬儀社には天理教の信者であることをしっかりと伝えるようにしましょう。仏教の葬儀とは用意するべきことが異なるため、準備に時間がかかる可能性があります。
天理教では、生きれること、死すること、出直すこと、すべてが良いことだとされています。このように、天理教は神道に近い宗教でありながら、日本古来の神道の考え方とも大きく異なる部分もあります。このことから「新しい神道」として位置づけられているようです。
天理教の通夜(みたまうつし)
ここでは、天理教の通夜(みたまうつし)の流れ、および玉串奉献と参拝の作法についてご紹介します。
通夜の流れ・式次第
天理教の通夜の一般的な流れ・式次第は以下の通りです。
・入場
葬儀に参列する人々が入場、着席します。
・祓詞奏上(はらえことばそうじょう)
神事で最初に唱えられる「祓詞(はらえことば)」が述べられます。
・うつしの詞奏上および「みたまうつし」の儀
故人の身体から魂を移すための儀式です。この儀式の最初に「うつしの詞」が唱えられます
・献饌(けんせん)
神様に供え物をする儀式です。なお、献饌は仏教の葬儀にはありません。
・玉串奉献(たまぐしほうてん)
仏教でいう、焼香の儀式です。心を玉串にのせ、神にささげるという意味があります。
・しずめの詞奏上
「しずめの詞」が唱えられます。
・斎員列拝
斎員とは、神式の葬儀において斎主の助手として働く人々のことです。斎員列拝では、葬儀関係者が揃って礼をします。
・遺族、親族、一般参列者 玉串奉献および列拝
喪主、遺族、一般参列者の順に、玉串奉献および列拝 をします。
・撤饌(てっせん)
神様への供え物を下げます。なお、献饌および撤饌は参列者は時間の関係によっては省略されることもあります。
・退場
葬儀に参列した人々が退場します。
通夜の作法(玉串奉献と参拝)
天理教の通夜に参列するときに知っておきたいのは、玉櫛奉献および列拝(参拝)の作法です。式場に足を運ぶ前に、必ず一度は確認しておきましょう。
・玉串奉献
玉串とは榊のことで、玉串奉献では玉串を祭壇に捧げます。玉串を斎員から受け取ったら、左手に葉側がくるように両手で持ちます。そのまま祭壇の前へと移動し、玉串の葉側が祭壇に、枝側が自分に向いた状態で一礼します。
次に玉串の左右を逆にして持ち、玉串を時計回りに回します。そして、枝側を祭壇に向けた状態で玉串台に献じます。
・列拝(参拝)
玉串奉献を行った後に列拝(参拝)をします。天理教では、「二礼四拍手一拝四拍手一礼」がマナーとなっています。なお神教では拍手のときに音を立ててはいけない(しのび手)とされていますが、天理教では音を立てても問題ありません。
また、お辞儀の深さも重要なポイントです。「礼」は軽い30度のお辞儀ですが、「拝」は最敬礼であるため90度しっかりと腰を折るようにしてください。
天理教の告別式(祭葬儀)の流れ・式次第
天理教の告別式の一般的な流れ・式次第は以下の通りです。
・入場
葬儀に参列する人々が入場、着席します。
・献饌(けんせん)
神様に供え物をします。
・しのびの詞奏上
しのびの詞が述べられます。
・玉串奉献/告別詞奏上
告別詞が述べられます。
・斎員列拝
斎員が礼をします。
・玉串奉献
玉串を祭壇に捧げます。
・遺族、親族、一般参列者 玉串奉献および列拝
喪主、遺族、一般参列者の順に、玉串奉献および列拝 をします。
・撤饌(てっせん)
神様への供え物を下げます。
・退場
葬儀に参列した人々が退場します。
なお、通夜と同様に献饌と撤饌については省略されることがあります。
また、弔電や弔辞が披露されることもあり、その場合は一般参列者の玉串奉献および列拝の後に行われます。
天理教の葬儀に参列する時の服装と香典
天理教の葬儀に参列したことがない場合、気になるのは葬儀におけるマナーなのではないでしょうか。ここでは、天理教の葬儀に参列するときにふさわしい服装および香典の包み方についてご紹介します。
・服装
天理教は仏教ではないからこそ、服装については気になるところだと思います。しかし、基本的には仏教の葬儀と同様の喪服を着て問題ありません。実際に、一般的な黒のスーツを着て参列している人が多いようです。
気を付けなければいけないのは、天理教では数珠は必要ないということです。天理教では、そもそも数珠という概念はありません。
・香典
天理教の葬儀に参列するときの香典は、基本的には市販されている香典袋や封筒に包んで問題ありません。しかし、ここでいくつかの注意点があります。
まず、蓮の花が描かれている香典袋は避けましょう。蓮の花はお釈迦様、仏教を表しているからです。
また水引の色にも注意が必要で、水引は白黒、あるいは白黄でなければいけません。水引の形は、ほかの宗教・宗派の葬儀と同様に結びきりです。
香典の表書きは、「御玉串料」「御榊料」「御霊前」などが一般的です。なお天理教では、仏教でいう仏様のことを「霊様(みたまさま)」といいます。そのため仏式でよく用いられる「御仏前」という表書きは使えません。
香典に納める費用については、仏式とほぼ同様と考えてよいでしょう。
香典として包む金額の相場は、故人との関係性や付き合いの深さ、参列者の年齢などによって異なります。
天理教の葬儀に参列するときはマナーを守って
日本では仏式の葬儀が大半を占めているため、天理教の葬儀には参列したことがないという人も多いことと思います。初めて参列するときには不安があるかもしれませんが、そこまで構える必要はないでしょう。「数珠を持たない」「お悔やみの言葉を使わない」など、重要な作法やマナーを確認しておけば何も問題ないはずです。