ご身内を亡くされ、心よりお悔やみ申し上げます。大切な方とのお別れを前に、ご遺族のお気持ちは計り知れないものとお察しいたします。
その中で、故人様と近しいご家族だけでゆっくりとお見送りできる「家族葬」を検討されている方もいるかもしれません。たとえば「10人規模」の家族葬を考えたとき、多くの方が最初に直面するのが「費用は一体いくらかかるのだろう?」という金銭的な不安ではないでしょうか。」
この記事では、家族葬の費用相場はもちろん、その詳細な内訳、そして後悔しないために費用を賢く抑える具体的なコツまで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。
この記事を最後までお読みいただければ、あなたは10人規模の家族葬における費用の全体像を明確に把握し、自信を持って葬儀社と話を進められるようになります。
目次
【結論】10人規模の家族葬の費用総額は40万~100万円が目安
早速結論から申し上げます。参列者10人規模の家族葬にかかる費用の総額は、おおよそ40万円~100万円が目安となります。
「ずいぶん幅があるな」と感じられたかもしれません。この価格差は、主に以下の3つの要素によって生じます。
なぜ費用に幅がある?価格を左右する3つの要素
- 葬儀の形式とプラン内容
- 一日葬: お通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う形式。費用は抑えめになります。
- 二日葬(一般的な家族葬): お通夜と告別式の両方を行う形式。最も選ばれる形式ですが、一日葬より費用は高くなります。
- 火葬式(直葬): 儀式を行わず、火葬のみを行う最もシンプルな形式。費用は最も安くなります。
- 斎場(葬儀を行う場所)の種類
- 公営斎場: 自治体が運営する斎場。使用料が安価なため、費用を大きく抑えられます。
- 民営斎場: 葬儀社などが運営する斎場。設備が充実していることが多いですが、使用料は高めです。
- 自宅: 式場使用料はかかりませんが、ご遺体の安置スペースや参列者の動線の確保が必要です。
- 飲食・返礼品の有無と内容
- お通夜後の「通夜振る舞い」や火葬後の「精進落とし」といった会食を行うか、どのようなお料理を選ぶかで費用は変動します。
- 会葬御礼品や香典返しの内容によっても費用は変わります。
これらの要素をどのように選択するかによって、最終的な総額が大きく変わってくるのです。
一般葬との費用比較
参考までに、一般的なお葬式(一般葬)と家族葬の費用を比較してみましょう。
| 家族葬(10人規模) | 一般葬(参列者50人規模) | |
|---|---|---|
| 葬儀一式費用 | 30万~70万円 | 80万~150万円 |
| 飲食接待費 | 5万~15万円 | 20万~40万円 |
| 返礼品費 | 3万~10万円 | 15万~30万円 |
| 合計目安 | 40万~100万円 | 120万~220万円 |
※上記はあくまで目安です。
※お布施などの宗教者へのお礼は含まれていません。
表からも分かる通り、家族葬は参列者が少ない分、飲食接待費や返礼品費が抑えられ、結果として総額が安くなる傾向にあります。
【完全解説】家族葬の費用を決める4つの内訳
「総額は分かったけれど、具体的に何にお金がかかるの?」という疑問にお答えします。
葬儀費用は、大きく分けて以下の4つの項目で構成されています。この内訳を理解することが、見積もりを正しく読み解く鍵となります。
| 大項目 | 内容 | 費用目安(10人規模) | 備考 |
|---|---|---|---|
| ① 葬儀一式費用 | 葬儀を行うための基本的なサービス料。祭壇、棺、遺影、搬送費、人件費など。斎場や火葬場の使用料なども含む。 | 30万~100万円 | 葬儀社のプラン料金の主体。 |
| ② 飲食接待費 | 通夜振る舞いや精進落としの料理、飲み物代。 | 5万~15万円 | 人数や料理のグレードで変動。 |
| ③ 返礼品費用 | 会葬御礼品や香典返しの費用。 | 3万~10万円 | 人数や品物のグレードで変動。 |
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 葬儀一式費用(基本プラン料金)
これは葬儀社が提供する基本的なサービスのセット料金です。多くの葬儀社が「家族葬プラン〇〇万円」として提示しているのがこの部分にあたります。
【主な内容】
- 祭壇、棺、骨壷
- 遺影写真、白木位牌
- 寝台車、霊柩車(ご遺体の搬送)
- ドライアイス、枕飾りなどご遺体安置に必要な物品
- 式場の設営、運営スタッフの人件費
- 役所手続きの代行費用
また、斎場や火葬場、自治体などに支払う実費もあります。葬儀社が立て替えて、後でまとめて請求されることが一般的です。
【主な内容】
- 火葬料: 自治体によって大きく異なり、数万円~10万円程度の幅があります。住民票がある自治体の公営火葬場は安価な傾向にあります。
- 式場使用料: 斎場を借りるための費用です。公営斎場か民営斎場かで数万円~数十万円の差が出ます。
- 待合室使用料: 火葬中、ご遺族が待機する部屋の料金です。
【注意点】
プランによって含まれる内容が大きく異なります。「一式」という言葉だけで判断せず、具体的に何が含まれ、何が含まれていないのかを必ず確認しましょう。特に、搬送回数や安置日数に上限が設けられていることが多いので注意が必要です。
2. 飲食接待費
参列者をもてなすための食事や飲み物の費用です。
【主な内容】
- 通夜振る舞い: お通夜の後に弔問客に振る舞う食事。
- 精進落とし: 火葬後や初七日法要の際に振る舞う会食。
10人規模の家族葬では、仕出し弁当(1人3,000円~8,000円程度)を手配することが多いです。ごく近しい家族のみのため、会食自体を行わないという選択肢もあります。
3. 返礼品費用
参列者へのお礼の品物にかかる費用です。
【主な内容】
- 会葬御礼品: 参列いただいたことへのお礼の品。500円~1,500円程度が相場。
- 香典返し: いただいた香典に対するお返しの品。「半返し(いただいた香典額の半分程度)」が一般的です。
家族葬では香典を辞退することも多く、その場合は香典返しは不要になります。
【最重要】プランに含まれないことが多い「別途費用」
見積もりを見る際に最も注意すべきなのが、基本プランに含まれていない「別途費用」です。特に以下の項目は、後から追加になりやすいので必ず確認しましょう。
- 宗教者へのお礼(お布施など): 読経や戒名(法名)をいただいたお礼としてお渡しします。菩提寺がある場合は直接お寺に、ない場合は葬儀社に相談して相場を確認しましょう。
- 火葬場の休憩室利用料や飲食代
- プラン規定日数を超えた場合の追加の安置料・ドライアイス代
- プラン規定距離を超えた場合の寝台車・霊柩車の追加料金
10人規模の家族葬費用を安く抑える5つの賢いコツ
大切な儀式だからこそ、費用は賢く抑え、故人を偲ぶことに集中したいものです。ここでは、誰でも実践できる費用節約のコツを5つご紹介します。
コツ1:複数の葬儀社から相見積もりを取る【最重要】
これは最も重要で、かつ効果的な方法です。同じ内容の葬儀でも、葬儀社によって数十万円の差が出ることも珍しくありません。
最低でも2~3社から見積もりを取り、総額だけでなく、プランに含まれるサービス内容や追加費用の項目を詳細に比較検討しましょう。
時間がない場合でも、今はインターネットで複数の葬儀社に一括で見積もりを依頼できるサービスもありますので、ぜひ活用してください。
コツ2:公営斎場を利用して式場費用を抑える
前述の通り、自治体が運営する公営斎場は、民営斎場に比べて使用料が格段に安価です。火葬場が併設されている斎場も多いため、火葬場への移動にかかる霊柩車やマイクロバスの費用も節約できます。
ただし、人気が高く予約が取りにくい場合があるため、早めに空き状況を確認することをおすすめします。
コツ3:葬儀の形式やプラン内容を吟味する
本当に必要なものは何か、ご家族で話し合ってみましょう。
例えば、
- お通夜を行わない「一日葬」にすることで、式場使用料や飲食代を抑える。
- 豪華な祭壇ではなく、生花で飾るシンプルな祭壇を選ぶ。
- 棺や骨壷のグレードを見直す。
といったことで、費用を調整することが可能です。葬儀社の担当者に予算を伝え、その範囲内で最適なプランを提案してもらうのも良いでしょう。
コツ4:飲食や返礼品の内容を見直す
10人というごく近しい方々のみの葬儀であれば、形式にこだわりすぎる必要はありません。
- 大々的な通夜振る舞いはせず、軽食やお弁当を用意する。
- そもそも会食の場は設けない。
- 香典を辞退し、返礼品の準備を不要にする。
こうした選択も、費用を抑える上で非常に有効です。
コツ5:補助金・助成金制度を活用する
故人が国民健康保険や社会保険に加入していた場合、葬儀費用の一部が補助される制度があることをご存知でしょうか。申請しないと受け取れないため、忘れずに手続きを行いましょう。
- 葬祭費: 故人が国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者だった場合に、喪主に対して市区町村から支給されます。(1万~7万円程度)
- 埋葬料(費): 故人が会社の健康保険(協会けんぽ等)の加入者だった場合に支給されます。(一律5万円)
申請先は故人が加入していた保険の窓口です。不明な点は葬儀社の担当者に相談すれば、手続きをサポートしてくれます。
後悔しない!10人規模の家族葬の葬儀社選び3つのポイント
費用と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「どの葬儀社に依頼するか」です。信頼できるパートナーを選ぶことが、後悔のないお見送りにつながります。
ポイント1:見積書の内訳が明確で分かりやすいか
「葬儀一式〇〇円」といった大雑把な見積もりではなく、「何に」「いくらかかるのか」が一項目ずつ詳細に記載されているかを確認しましょう。不明な点や疑問点に対して、ごまかさずに丁寧に説明してくれる葬儀社は信頼できます。特に「別途費用」について、事前にしっかりと説明してくれるかは重要な判断基準です。
ポイント2:担当者の対応が丁寧で親身か
ご遺族が心身ともに大変な状況にある中で、親身に寄り添ってくれる担当者の存在は非常に心強いものです。こちらの要望を丁寧にヒアリングし、専門家として的確なアドバイスをくれるか、話しやすい雰囲気かなど、人としての相性も大切にしましょう。
ポイント3:希望する規模や形式の実績が豊富か
家族葬、特に10人という小規模な葬儀は、大規模な一般葬とは異なるノウハウが求められます。その葬儀社が家族葬の実績が豊富であるかをホームページなどで確認しましょう。小規模ならではの細やかな配慮や、温かい雰囲気づくりを提案してくれる葬儀社が理想です。
家族葬10人規模でよくある質問(Q&A)
最後に、10人規模の家族葬に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 香典は辞退したほうがいいですか?
A1. ご家族のお考え次第ですが、辞退するケースが多いです。
参列者が親族のみの場合、香典をいただくと、その後の香典返しの手配がご遺族の負担になることがあります。そのため、参列者への配慮として事前に香典辞退の旨を伝えておくのが一般的です。ただし、故人との関係性からどうしても渡したいという方もいらっしゃるため、その際は有り難く頂戴するなど、柔軟な対応を考えておくと良いでしょう。
Q2. 10人だと寂しい雰囲気になりませんか?
A2. 場合によりますが、温かく、心のこもったお見送りを実現できます。
参列者が少ない分、一人ひとりが故人様とゆっくり向き合い、思い出を語り合う時間を十分に取ることができます。祭壇の周りを思い出の写真で飾ったり、故人が好きだった音楽を流したりと、アットホームな雰囲気で故人らしさを演出できるのが10人規模の家族葬の最大のメリットです。
Q3. 葬儀後に弔問客が来た場合の対応はどうすればいいですか?
A3. 事前に対応を決めておくとスムーズです。
家族葬を行ったことを後から知ったご友人や会社関係の方が、ご自宅へ弔問に訪れることがあります。その場合に備え、
- 弔問を受け付ける期間を決めておく。
- 返礼品を少し多めに用意しておく。
- 家族葬を行った旨と、弔問をご遠慮いただく旨を報告はがきで伝える。
といった対応を考えておくと、慌てずに対処できます。
まとめ:納得のいく費用で、心温まるお見送りを
今回は、10人規模の家族葬にかかる費用について、その相場から内訳、安く抑えるコツまで詳しく解説しました。最後に、本記事の重要なポイントを振り返ります。
- 10人規模の家族葬の費用総額は40万~100万円が目安。
- 費用は「葬儀一式費用」「飲食費」「返礼品費」の3つで構成される。
- 費用を抑える最大のコツは「複数の葬儀社から相見積もりを取る」こと。
- 「公営斎場の利用」や「補助金制度の活用」も有効な節約手段。
- 葬儀社選びは「見積もりの明確さ」「担当者の対応」を重視する。
葬儀の費用は、決して安価なものではありません。しかし、その内訳を正しく理解し、ポイントを押さえて準備を進めることで、費用への漠然とした不安は解消できるはずです。
何よりも大切なのは、故人を偲び、感謝の気持ちを伝えることです。この記事で得た知識をもとに、まずは信頼できそうな葬儀社を2~3社ピックアップし、相談してみることから始めてみてください。
それが、あなたとご家族にとって後悔のない、心温まるお見送りへの最も確実な第一歩となるでしょう。