かつては男性ばかりが働いているイメージがあった供養業界。
しかし現在は女性の活躍も目覚ましく、「想い」を持って働くたくさんの女性がいます。
供養業界で働く女性たちを紹介し、その仕事にもっと興味を持ってもらいたいという趣旨で、8月23日、葬儀・埋葬・供養の専門展「エンディング産業展(ENDEX)2016」で「第一回供養女子コンテスト」が開催されました(主催:おくりびとアカデミー)。
目次
全国から選ばれた6名の供養女子が登壇
今回のコンテストは、多数の応募者の中から選ばれた6人が登壇しました。
創業200年の葬儀社社員、墓石のお仕事に奮闘する「お墓女子」、葬儀専門の生花店の新入社員、海洋散骨・終活カフェのサービススタッフ、ご遺体を棺にお納めする納棺士、エンディングドレスメーカーの代表……供養業界といえども、その職種はさまざまです。
このコンテストでは、供養業界に入った理由・仕事内容・仕事のエピソードの3つが語られ、その内容を基にした投票で優勝者が決定されます。
1トントラックで大雨の中でも運転
生花祭壇を扱う生花店で働く、入社4カ月の山崎珠里さん(株式会社フレシード)からは、花祭壇の美しさから最初は絵だと思ったこと、自分も作れるようになりたいと感じたという志望理由や、1トントラックで大雨の中でも運転するといった力強い仕事内容などが語られました。
仕事終わりには、早く花祭壇が作れるよう、自主練習もしているそうです。
誰もがいつかは死を迎え、それは明日かもしれない
一方、供養業界ならではの志望理由も。
「初めて好きになった人も、初めて食べたものも同じだった幼馴染を失い、なにもする意味がないと思っていた時、友人から紹介されたのがこのお仕事でした。その時から私の終活が始まり、いまも続いています」
こう語るのは、海洋散骨と終活コミュニティカフェでのサービススタッフとして働く、越智萌子さん(株式会社ハウスボートクラブ)。
「誰もがいつかは死を迎え、それは明日かもしれない。だからこそ、自分の終わりが、自分の納得のいくものであって欲しい」
終活は年配の方だけが行うものというイメージがありますが、年齢に関係なく終活について考えてほしいと、越智さんはコンテストの場に立ちました。
死に関わる仕事だからこそ、お客様から学ぶこともたくさんある
200年続く老舗葬儀社で働く遠藤清子さん(株式会社ごんきや)からも、お父様のお葬式についての後悔から、終活に力をいれていることが語られました。自ら終活セミナーに登壇することもあります。
死に関わる仕事だからこそ、お客様から学ぶこともたくさんあります。
「主人はほんまにお墓のこと喜んでたし、あなたと出会えたことを本当にうれしく思ってて、よく話もしてたんよ」
「お墓女子」として、墓石にたずさわる女性の活躍を広く発信している望田彩香さん(大阪石材工業株式会社)は、営業1年目の時に出会ったお客様について語ります。
「まだお墓の知識も浅かった1年目にお会いしたお客様から『絶対に仕事は続けなあかん。石の上にも3年と言うけど、3年続けたらやめていいということではなく、3年続けたらまたやりがいや考え方が変わってくる。だから続けなあかんよ』と励ますように言われました」
そのお客様が亡くなった時、望田さんは奥様から、「生前にお墓に触ったから亡くなったんちゃうの、と周りから言われたこともあってん。ただ、主人はほんまにお墓のこと喜んでたし、望田さんと出会えたことを本当にうれしく思ってて、よく話もしてたんよ」と言われたそうです。
「お墓の仕事を通じて、お客様の人生観に関わらせていただいていると深く思いました」
「亡くなった夫は、『やっぱりおまえはおしゃれだな』って天国で言ってくれるかしら」
新しい死装束である「エンディングドレス」メーカーの代表を務める中野雅子さん(株式会社ルーナ)も、お客様から励ましの言葉をもらったひとりです。
中野さんは、大病をわずらって入院し、仕事どころではないと嫌になりかけていた際、ドレスをお買い上げいただいたお客様からお電話をいただいたことがあります。
お客様は、エンディングドレスを手元に置いておくとなんだか嬉しくなるのよとお話ししました。亡くなった夫にこれを着て会える、やっぱりおまえはおしゃれだなって天国で言ってくれるかしら、と。
「だからあなたはいつまでも健康に注意して、長生きしてね。日本の女性をひとりでもきれいにしてあの世に旅立たせてあげてちょうだい。それだけをお願いするわね。あなたにあえて本当によかったわ。ありがとう。さようなら」
お客様はそう言って電話を切ったそうです。
その日を境に目が覚めました、と中野さんは語ります。
人の死に寄り添う仕事だからこそ、やりがいもある供養業界。登壇者が語る話は、人の温かさや、死と向き合うことの重要さを伝えてくれるものでした。
「供養女子コンテスト2016」優勝に輝いたのは?
優勝者は、「納棺士コンテスト2015」の優勝者でもある高橋小百合さん(NK東日本株式会社)。
供養業界で働き始めて4年。納棺士としての経験を多くの人に知ってもらい、葬祭業の暗い重いイメージを払拭したいと語りました。
供養業界で働く女性が増えているとはいうものの、なかには女性であることに抵抗感を持たれたことや「もっと“普通”の仕事がある」と身近な人に言われたことのある登壇者も。
一方で、女性だから女性に頼みたい、というお客様の声もあります。
「供養女子」という一風変わった切り口のコンテストは、供養業界の認知度を上げ、そこで働く人々の姿を世の中に広めていくきっかけになったのかもしれません。
(取材・文:濱田花野子)