遺産相続を検討したときに「大切な孫の学費にあてたい」と考える方は少なくありません。生前に贈与すれば税金対策にもなりますし、学費はまとまったお金が必要なので、孫の親である子供たちにも喜ばれるでしょう。
ただ、上限金額を超過して贈与すると贈与税がかかるので注意が必要。条件によっては非課税にできる制度があるため、上手に活用して無駄のない遺産相続をするのが大切です。
この記事では、主に祖父母の立場から、孫の教育費を非課税にする方法を解説します。
目次
孫の学費を非課税にする4つの方法
- 都度贈与
- 暦年贈与
- 相続時精算課税制度
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
都度贈与:必要なときに必要な金額を都度贈与
都度贈与とは
祖父母が孫の教育費・生活費を、必要なタイミングで都度贈与する方法
注意点
- 教育費・生活費にすぐ充てる
- 一般的な金額におさえる
都度贈与とは、祖父母が孫の教育費・生活費を、必要なタイミングで都度贈与する方法。教育費・生活費には、孫の入学金や授業料、教材費、交通費、文具代などが含まれます。
そもそも、扶養義務のある父母や祖父母が孫に贈与する場合、通常必要とされる教育費・生活費は課税対象になりません。扶養義務の範囲内で、孫の教育や生活に必要なお金を祖父母が負担するのは当然だとされているため、非課税になるのです。
ただし、贈与した財産はすぐ教育費・生活費に使わないと課税対象になります。しばらく貯蓄しておいたり、一部を他の用途に使ったりすると、贈与税がかかるので注意しましょう。また、都度贈与の非課税額に上限はありませんが、一般的な金額におさえるようにしてください。手渡しではなく口座振込すれば、用途と金額を明確にしておけるので安心です。
暦年贈与:年間110万円の基礎控除内で贈与
暦年贈与とは
1年間の贈与金額を、贈与税の基礎控除額である110万円以下におさえる方法
注意点
- 受け取った金額の合計を110万円以下にする
暦年贈与は、1年間(1月1日〜12月31日)の贈与金額を、贈与税の基礎控除額である110万円以下におさえる方法。年間110万円以下なら税金がかからないため、申告が不要なのはもちろん、用途や相手の制限もありません。
暦年贈与で注意したいのは、基礎控除額の上限が「受け取った金額の合計値」となること。たとえば、1人の孫に祖父が60万円、祖母が60万円贈与した場合、合計金額は120万円なので、課税対象となってしまいます。
贈与税は、贈与した人と受け取った人の関係性によって税率と控除額が変わるので確認しておきましょう。直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与は、「特例贈与財産用」の速算表で計算され、一般贈与財産用より税率が低くなります。
参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
相続時精算課税制度:累計2,500万円まで非課税
相続時精算課税制度とは
生前前倒しで、祖父母が孫に2,500万円まで非課税で贈与できる制度
贈与者が亡くなったあと、贈与財産を相続財産に加えて一括で納税する
注意点
- 60歳以上の父母・祖父母が18歳以上の子・孫に対して行う
- 一度相続時精算課税制度を選択すると取り消せない
- 1対1の関係性でないと適用されない
- 暦年贈与と併用できない
- 贈与税より相続税の方が多いと追納が発生する など
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母が18歳以上の子・孫に、生前前倒しで2,500万円まで非課税で贈与できる制度。贈与した父母・祖父母が亡くなったあと、受け取った贈与財産は相続財産に加えられ、相続税として一括で納税できます。
相続時精算課税制度は生前に高額な財産を贈与できますが、一度選択すると取り消せないため、活用する前に慎重な検討が必要です。
たとえば、相続時精算課税制度は1対1の関係でないと適用されなかったり、暦年贈与と併用できなかったりと制限も多いです。また、贈与税より相続税の方が多いと追納が発生するため、贈与金額や相続財産をふまえて選択しなければなりません。
ご自身でしっかり検討するのはもちろん、税理士をはじめとするプロの専門家に相談してアドバイスを求めるのもよいでしょう。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置:1人あたり最大1,500万円まで非課税
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置とは
祖父母が30歳未満の孫に上限1,500万円まで非課税で教育資金を贈与できる制度
注意点
- 子・孫は30歳以下で、前年の合計所得1,000万円以下
- 祖父母が亡くなると、管理残額は相続税に加算される
- 子・孫が30歳に達すると、管理残高に贈与税が課税される
- 金融機関での専用口座の開設や領収書の提出が必要
- 2026年3月31日まで措置で期間が決まっている など
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置とは、祖父母が30歳未満の直系尊属(子や孫)に上限1,500万円まで非課税で教育資金を贈与できる制度。教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置では、贈与するお金の用途に明確な区分が定められています。
まず、小中学校・高等学校・大学といった教育機関への入学金や授業料、修学旅行や給食費といった教育上必要となるお金は、一括贈与の非課税対象です。ただし学習塾や習い事など教育関連サービスへの支払いは、最大500万円の上限があります。その他、学校に通うための生活費などは含まれません。
また、2013年に導入された教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置は、制度の適用が2026年3月末までと決まっています。途中で祖父母が亡くなったり、子・孫が30歳に達したりしても税金がかかるため、注意が必要です。利用する条件や方法は、文部科学省や国税庁のホームページを参考にしてください。
参考:教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置:文部科学省
参考:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|国税庁
生前贈与・遺産相続のご相談は「いい相続」へ
今回ご紹介した4つの制度は、それぞれにメリット・デメリットがあり、条件も違います。孫を支援したい一心で利用をはじめ、失敗や後悔をする方もいるので注意が必要です。
たとえば、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を利用して、預けたお金を使いきれないまま孫が30歳に達して贈与税がかかったり、お金を預けすぎたのに解約できず、生活が苦しくなったりされた方もいらっしゃいます。
ご自身の財産やお孫さんを援助したい金額などをふまえて計画を立て、最適な制度を選択するのが重要。判断が難しいため、生前贈与や遺産相続、両方に詳しい専門家に頼ってみるのもひとつの方法です。
いい葬儀の姉妹サイト「いい相続」では、相続に関わる税理士・司法書士・弁護士・行政書士などの専門家をご紹介しています。全国各地の士業探しを無料でサポートしているので、生前贈与や遺産相続のお悩みがあるなら、ぜひ一度ご活用ください。