おいしいよ 母亡きわが家 父の味

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今は亡き母へ

「私が先に死んだら、ご飯ひとつ炊いたことのないお父さん。二人のこどもを残して、お母さんは心配で心配でたまらないよ」

お母さんの口ぐせだったよね。

正直お母さんが亡くなって、しばらくコンビニ通いが続きました。

あれから二年、もう大丈夫ですよ。

お父さんが頑張っていますよ。

お父さんはこの二年近く会社の帰り「シルバーエイジ男の料理教室」へ通ってたんです。

お母さん! あのご飯も炊いたこともないお父さんが、ですよ。

朝の出勤時、きまって紙袋を下げ家を出るお父さん。その紙袋の中には、妹が用意したエプロン代わりの白衣に、三角巾と布巾。身がひきしまる思いだったと思います。

近頃は「料理は本来、想像を膨らませる実に楽しいもの。挑戦すればするほど創造の喜びがあるよ」なんて言ってます。お父さん得意の強がりでしょう。

お父さんの腕前は、例えば今日の夕食は、ご飯と味噌汁、まぐろの照り焼き、煮物に漬けもの。

お母さん、驚かないでね。

メインは、昨日料理教室で学んだ″メキシカンポーク肩ロースのブランケット タイ風アクセント”と″ガーリックブルグル”だって。ボク舌噛みそうだよ。

毎日栄養を考えて献立を工夫するお父さんの苦労は並大抵ではなく、頭が下がります。

ときには出来損ないもありますが、それも、父とボクと妹が笑いの中で食べれば、幸せいっぱい。 わが家の食卓の上に世界があるんだと思わずにいられません。

お母さん! お父さんは変わりましたよ。どうぞ安心して下さい。お父さんが台所と向きあうことは、まさに未知との出会いだったと思います。

お父さんは、願わくば、お母さんが存命中にやってやりたかったと後悔しています。

妹が、よく「お父さん気の毒」と言いますが、ボクは決してそうは思いません。

「お父さん、なかなかやるじゃない」とほめてあげたいよ。お母さんもそう思うでしょう。

お母さんへ、ボクの一句をささげます。

「おいしいよ 母亡きわが家 父の味」

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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