あなたはすごい人でした

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今は亡き夫へ

さわやかな風薫る五月十日に、あなたの十三回忌を済ませました。

あなたが亡くなってもう十二年経ちました。

 

定年になり、関連会社で働いていたあなたは、腹部にシコリを見つけました。病院に行くと五センチメートルくらいの腹部大動脈瘤ということで、即手術。

その手術は大成功でした。この際だから、全身の健康診断をしていただこうと検査をしたら、肺ガンが見つかったのです。右肺三分の一切除。

退院してホッとしたのもつかの間、転移が見つかり右肺全摘手術。

三回の大手術にも果敢に挑戦。愚痴ひとつ、弱音ひとつ吐かず、いつも平常心でした。

不安や、痛み、苦しさもあったでしょうに。私達周りの人達には、そんな素振りは全然見せませんでした。

あなたはいつ、どこで、その恐怖と戦っていたのだろうと思うと、胸がしめつけられます。

私の知らないところで、遺影用の写真も用意していましたし、長男には「お母さんを頼むぞ」と、言い残していました。

私を残し、ひとり先に逝くのが心残りだったのでしょう。

享年六十一歳でした。

葬儀の担当者が「私は大西さんを存知あげないけど、大西さんは大分の名士だったのですか」と言うほど、多くの方が参列してくださいました。

葬儀の後、息子達は「お父さんはすごい人だったんだね」と、しみじみ言っていました。

人のお世話をするのが大好きで、いつもニコニコと忙しくしていましたね。

あなたのお蔭で息子達も、多くの方から「あなたのお父さんにはお世話になったのですよ」と感謝され、あなたの生き様に感謝しています。

私もいつかはあなたの所に逝きます。

その時には「あなたは、すごい人だったのね。家族思いで、克己心の強い人だったのね」と感謝の言葉と共に、「自分が健康だった故に、あなたの痛み、苦しみ、不安、恐怖に思い至らなかった」事を詫びたいと思っています。

あなたは「どうだ、見直したか」と、鼻をピクピクさせて笑っていることでしょう。

あなた、ありがとうございました。幸せな三十五年間の結婚生活でしたよ?

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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