孟母三遷の教え

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今は亡き祖母へ

私が幼稚園児だった頃、父方の祖母にお供して、奈良の飛鳥寺へよくお参りに行った。

京都から電車に乗って、二時間ほどかかっていたと思う。

祖母はリウマチという病気で、両手が不自由であった。そこで、私がお供して、電車に乗るための切符の購入などお世話するのであった。

お参りの後は、いつも近くのお茶屋で団子を食べさせてもらった。これが楽しみで、ほっぺたが落ちるほど美味しかった。

ある時、寺から駅へ戻る小道の途中で、草むらにいるつがいらしき二匹のカマキリを見つけた。

祖母は「子どもを持ったメスのカマキリに食べる餌がなくなると、オスはメスのために自分の身体を餌として食べてもらうのだよ」と、私に話した。

それを聞いて驚く私に、祖母は「もちろんカマキリはそうならないように、餌があるところを探して引越しをするなど、いろいろと考えているんだよ」と言って、私を安心させてくれた。

そこで、私は祖母に尋ねた。「何回ぐらい引越しするの」

祖母は、「そうやなあ。生きている間に、三回ぐらいかな」と言って笑った。

その祖母は、私が小学生の時に亡くなった。

今になって考えてみると、生物学的にみたカマキリの本当の生態については私もよく知らないが、幼い頃に祖母から、人間の生き方として、何か大切なことを教えてもらったような気がする。

結婚して四十年余りがたつ。子育てが終り、退職するまで三回の引越しの経験をした。

カマキリの話ではないが、環境の変化に応じた生き方「孟母三遷の教え」だったような気がするのである。

還暦を迎えても、妻はしっかり食べており、今私も元気で余暇活動に励んでいる。

これが祖母へ伝えたい言葉だった。

「おばあちゃん、ありがとう」

これからもロマンを求めて生きていくよ。天国で見守ってくださいね。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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