【終活映画】命の営みと役割を映したドキュメンタリー『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

終活の大原則は「すべての命に限りがある」ということです。あまりにもいろいろ考えすぎていると、こうした大原則をうっかりと忘れそうになることがあります。死生観を感じる映画には壮大な自然の風景がよく似合い、またあらゆる命の連鎖と言うものを感じることができるのです。

誰かがいるから立ち向かえる。淋しさ、悲しさと一緒に、力強さも楽しさも共有する相手がいると未来が創造できそうです。

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命の営みを映した壮大なドキュメンタリー

さて、今回の終活映画紹介はアメリカ映画の 『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』です。先にお伝えしますと、この映画の中で高齢者もいなければ、死生観が漂うようなストーリーもありません。それでも命の営みはきちんと映し出されて、その中の一つの命がいまの自分であることを感じることができるでしょう。

農場の開拓から、大自然と戦う8年間の模様を撮影したまさにドキュメンタリーなのですが、人工的な生産性の高い農場ではありません。大自然の中で育まれる究極のオーガニック農場を目指して、何度も挫折しそうなシーンを乗り越えて、家族を育ててゆく記録です。

料理家である妻のモリーと、テレビのムービーカメラマンとして動物映像で活躍していた夫のジョン。そんな二人が出会ったのが、処分される予定だった保護犬、トッドでした。トッドはすぐに二人になじむのですが、その鳴き声の所為で、周囲に迷惑をかけることになります。二人はとうとう住まいを引き払い、兼ねてから本当に良い食材で料理を作りたいと願っていたモリーの希望をかなえるように農場の経営に乗り出します。

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

良い時も悪い時も変わらない、日々を慈しむような映像

ここで先に言いますが、おそらくはそのほとんどを夫のジョンがカメラを回したのであろう映像がとにかくキレイです。それだけでも癒されること間違いないのですが、このカメラが、良い時ばかりではなく困難な時もその様子をしっかりと捉えていて、映像のポテンシャルは変わらないのです。日々を慈しむような映像に仕上がっており、おそらくは誰もがその美しさに魅了されると思います。ぜひ映画館に出かけてください。

さて、なかなか農場としての方針が定まらない時に、二人は大自然と共存するエコファーム作りの第一人者に師事をします。この方がまあ7年待てと、そして農場のために動物を飼うようにと言い、農場のレイアウトもアドバイスをするのですが、8年後の農場の完成した美しさも堪能してください。

ここに至るまでの苦労がまたその美しさを引き立てます。その農場の動物たちはみな役割をもって、さらにはコヨーテや野ネズミなど、鶏を襲ったり畑を荒らすものたち、植物を痛めつけるアブラムシやカタツムリなどの害虫もみな、その農場のために有るという考えに至る頃の映像はまさに一緒に考えて頑張ったような錯覚すらしてしまいます。

アヒルも鶏も、犬も羊も、牛も豚もそれぞれに重要な役割があり、家畜という言葉には括られない付き合いをしていました。同時に鷲やフクロウ、荒れた天候までもがその役割を持っているかの如く感じることになります。

すべての命はそれぞれに重要な役割を持っている

さて終活ですが、この映画ではたくさんの鶏が亡くなります。コヨーテに襲われて一晩に何十羽とその死体を処理しなければなりません、二人は大いに悩みながらコヨーテの対策を考えます。また。豚のエマが生死をさまようよう病気で苦しんでいる時には、その様子を心配そうに見つめる二人がいました。ここからも家畜とはちがうすべての生命システムの中での信頼関係が見えます。

そして二人が意味深くその死を悼んだのは、エコ農法の指導者であり農場の設計にも大きく関わった男の死でした。いくつもの悩みを解決したい時に彼はもういないのですが、その時に7年間待て、すべてがうまく回り出すからという彼の言葉に支えられながら突き進んだということでしょう。その言葉を頼りに自分たちで考え、見つけるという力が湧いてきたようでもあります。やがては植物もパートナーの動物たちも、自然界の動物も環境までもが一つにシステムの中で回りだします。

そして、二人がこの暮らしに踏み出すきっかけとなったトッドの死でした。夫妻に子供が誕生した時に、トッドもまたその役割を終えるように亡くなったようです。トッドに導かれてここまで来た上での二人はいくつもの苦労を乗り越えてきました。そして「これからは生まれた子供のために頑張れよ」と、その役割を交代したようにも語られました。

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

自分にとっての大きなエネルギー

私のセミナーでも、120分のセミナーで家族については冒頭にしっかりと時間をとって、忘れてしまったことや、気付きについての共有をします。「自分にとっての大きなエネルギーなんだ」ということをこの映画でも感じていただきたいと思います。

人は誰かのためにという思いで強くなれるのかもしれませんね。今回はその美しさと生きる力ということで、おすすめ映画としてピックアップさせていただきました。

コロナウイルスの感染予防が言われる中で、座席制限をされた映画館でしたが、たくさんの終活世代が鑑賞されていたのも印象的でした。 アクティブに動くというのも終活としては大切な要素です。映画館に行ってワクワクドキドキすることの楽しさを改めて感じました。

終活を通して、高齢期の淋しさ、悲しさだけではなく、力強さと楽しさもぜひ一緒に感じていただきたいと思います。

今回ご紹介した映画 『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

製作・監督・脚本・撮影監督:ジョン・チェスター

原題:The Biggest Little Farm

配給:シンカ

© 2018 FarmLore Films, LLC

この記事を書いた人

尾上正幸

(終活映画・ナビゲーター / 自分史活用推進協議会認定自分史アドバイザー / 株式会社東京葬祭取締役部長)

葬儀社に勤務する傍ら、終活ブーム以前よりエンディングノート活用や、後悔をしないための葬儀の知識などの講演を行う。終活の意義を、「自分自身の力になるためのライフデザイン」と再定義し、そのヒントは自分史にありと、終活関連、自分史関連の講演活動を積極的に展開。講演では終活映画・ナビゲーターとして、終活に関連する映画の紹介も必ず行っている。

著書:『実践エンディングノート』(共同通信社 2010年)、『本当に役立つ終活50問50答』(翔泳社 2015)

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