【終活映画】人生はクライマックスからが面白い『最高の人生の見つけ方』

『最高の人生の見つけ方』

2007年に制作をされたアメリカ版『最高の人生の見つけ方』は、主演のジャックニコルソン、モーガンフリーマン二人の大ファンでもあり、秀逸なる終活映画としてとしても常に私の頭の中にある作品でもあります。

そんなアメリカ映画のリメイクですので、アメリカらしさと日本らしさの対比という見方もでき、さらに男性の人生と女性の人生という比較という見方でも楽しめる映画です。

何よりもアメリカ版『最高の人生の見つけ方』は終活という言葉が生まれる2年も前、2007年の映画です。映画の中で出てくるバゲットリスト(死ぬまでにやりたいこと)という考え方も、後の終活やエンディングノートの発想に大いに役立ったといえるのではないかと思います。

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日本版『最高の人生の見つけ方』のバケットリストは……

吉永小百合さん分する主人公北原幸枝、この平凡な主婦に訪れた突然の余命宣告、それによって彼女は自分の人生の価値に戸惑います。

果たしてどんな人生であったのか…最愛だったはずの夫に尽くしてきた人生のその意義も見いだせないまま、病と共に辛く悩む日々。そんな病を抱えて検査入院をした病院で偶然にも同室となったのが、天海祐希さん演じるホテル王といわれるビジネスの成功者、剛田マコでした。

マコもまた、終末期の病を抱えながら、しがみつくように仕事に執着する日々での検査入院でした。

地味で控えめな幸枝と豪快で粗野にも感じるマコの2人は手元に残ったバケットリスト(死ぬまでにやりたいこと)に従いながら旅に出ます。その旅を通じて心から笑い、心からの思いをぶつけ合いながら、自分自身を思い出してゆくのです。

ここでアメリカ版と異なるのは、死ぬまでにやりたいことリストが自分たちの手によるものではなく、入院していた病院で知り合った12歳の少女が残したメモに共鳴したリストなのです。

2人にとって、おそらくはその内容自体はどうでもよかったのでしょう。むしろ自分なら何をしたいのかと問われれば何も浮かばない自分に気が付き、そのリストにのってみようということで、旅と称して自分自身の人生を振り返っていくことになるのです。

自分史と終活

終活の中で実は一番大事で、最も先にすべきなのが自分史の振り返りであるということを、私は常日頃から唱えています。一般的には、遺産やメッセージで、残してゆく人に迷惑をかけたくないということになりがちですが、終活の本質は、自身の人生を前向きに生きるためにあるべきです。

自分自身が前向きな姿勢を起こすことにより、本当に伝えたいことも見えてきて、その後、周囲に大きな力を残すこともできると考えています。

そのように考えても、「自分史」と構えて自分自身の人生を振り返るのはなかなか大変なことです。

そんな時にこそ、思いやその時々の自分らしさなどを思い出すことは大事なこと。この作品のよう人生のベテランになってからはじめての挑戦をすることが意外とその当時の若さや幼い考え方、本当の自分らしさというものを見つけることができるのかもしれません。

そう考えると、私の2006年頃から始まった終活セミナーは、オリジナルのアメリカ版『最高の人生の見つけ方』に影響を何らかの形で受けていたのかもしれません。

人生の充実した終わり方を見る

さて、幸枝とマコ、2人の最期は?ということになるのですが、この映画には臨終のシーンや葬儀などのシーンは描かれていません。ひたすらさわやかに2人の主人公が人生の晩年を通して成長していく姿で構成されています。

まさに高齢期の黄金ワード「歳をとったら教育と教養が転じて、今日行くと今日用(事)」ということの大切さを感じます。

今まで話したこともないような人と話し、行ったところもないところへ出かけ、見たこともないようなものを見て、驚いて、感動して、激怒してそして笑いあって、涙を流すこと、これが人生の充実した終わり方といえるのかもしれません。

人生はクライマックスが面白い、幸枝は心の底からのメッセージを家族に伝えることで、これまでの人生を肯定し受け止めていきます。そしてマコもまた、父親の前で素直に涙を流せたことにより仕事ではない本当の自分自身を大切にすることに気が付いたようです。

幸枝とマコ2人の旅は、とても充実しており、それぞれが考えていた人生について、気づくことが無かった心の豊かさを自分自身とその周辺の人に与えたのでしょう。

最高で最強な五感で感じる「最高の人生の見つけ方」

吉永小百合さんも実年齢に応じた配役であり、いきいきとした表情から病床の様子まで、驚くような表情をされるところもありました。

天海祐希さんもまた、彼女の素が見えたのではないかとすら感じるような、迫力のある演技で見入ってしまいました。まさに2人の女優さんにぴったりとはまったキャストでした。そして、ムロツヨシさんのなんとも言えない良い味わいもこの映画の隠れた魅力であります。

私は今回の上映にあたり、あの感動をもう一度思い出そうとアメリカ版『最高の人生の見つけ方』を鑑賞してから出かけました。アメリカ版も日本版もそれぞれに魅力的であり、終い支度ではない、自分自身のための本当の終活を肌で感じることができる映画としておすすめいたします。

人生はベテランになってからの挑戦が面白そうだ。そんな自分でいられたら、それが最高であり、最強なのかもしれない。「最高の人生の見つけ方」を五感で感じるために、ぜひ、お出かけください。

今回ご紹介した映画 『 最高の人生の見つけ方 』

公開: 10 月 11 日(金) 全国ロードショー

出演:吉永小百合 天海祐希 ムロツヨシ 満島ひかり 賀来賢人 鈴木梨央 駒木根隆介 /ももいろクローバーZ/前川 清

監督:犬童一心

原案:「最高の人生の見つけ方」ジャスティン・ザッカム著

主題歌:竹内まりや「旅のつづき」(ワーナーミュージック・ジャパン)

製作:「最高の人生の見つけ方」製作委員会

配給:ワーナー・ブラザース映画

©2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

この記事を書いた人

尾上正幸

(終活映画・ナビゲーター / 自分史活用推進協議会認定自分史アドバイザー / 株式会社東京葬祭取締役部長)

葬儀社に勤務する傍ら、終活ブーム以前よりエンディングノート活用や、後悔をしないための葬儀の知識などの講演を行う。終活の意義を、「自分自身の力になるためのライフデザイン」と再定義し、そのヒントは自分史にありと、終活関連、自分史関連の講演活動を積極的に展開。講演では終活映画・ナビゲーターとして、終活に関連する映画の紹介も必ず行っている。

著書:『実践エンディングノート』(共同通信社 2010年)、『本当に役立つ終活50問50答』(翔泳社 2015)

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