【終活映画】『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』元気な時にこそ家族に向き合う終活を

私の選ぶ「終活映画」ですが、もしも製作者のから見たら奇異に映る映画の観方と思われることも多いのかもしれません。今回発見した映画もそんな作品ですが、私にとっての終活要素が満載の、とてもすてきな映画です。『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』をご紹介します。

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わかり合えていると錯覚する家族

家族というくくりの中で生きていると「ついついわかり合っているという錯覚がある」と、セミナーでお話しています。誰もが家族のことを愛して、いつも心配をしているのですが、ただ近くにいるだけではわからないこともあるのも事実。しかし、それをも越えて理解しあえていることの方がたくさんあることにも気が付くときがあるかもしれません。

元気のいい時はつい対立しそうな家族でも、その本質、心というのは通じているものなのかもしれません。今回ご紹介するのは、そんな思いを感じさせてくれる映画です。

『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

音楽が亡き母と、父娘をつなぐ

亡き妻とミュージシャンとして生きてきた父フランクは、妻亡き後の17年間を中古レコード店の経営で生計を立ててきました。しかしお客を選ぶ店主でもあったようで、どうやらその経営はあまりうまく行ってはいないようでもありました。そんな店を閉じることを決断したところからストーリーが始まります。

当然フランクはその先の人生設計を再構築しなければならない状況の中でしたが、彼の楽しみは妻のミュージシャンとしての遺伝子を汲んだ娘とのセッション。ドクターを目指して勉強をしようとする娘の邪魔をしては、一緒に演奏をしようと誘います。娘もまた父親を疎ましそうにしながらも、手元には詩をしたため、父の伴奏で楽しそうに曲をつけてゆくのです。音楽は亡き母と父親フランクと17歳の娘サムをつなぐ大きな鎹のようでした。

『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

さて、この映画がなんとも心地よいのは可愛らしい娘サムの純粋さと、同じように音楽に向かう父の姿勢に好感が持てるということでしょう。二人の親子関係は何とも映画の印象を良くしてくれます。時折小さなやんちゃをみせる父親の様子もこの映画の彩のようなもので、二人の将来が見えそうで見えないのがこの映画のもどかしさでもあります。

離れても、お互いにいつまでも励ましあっている関係

親子二人のセッションの録音をフランクはインターネットサイトに投稿をします。父親としては何とか形にしたいと願うのでしょう、兎に角その歌声には魅了されます。やがてレコード会社からの誘いも受けるのですが、父の願うミュージシャンとしての娘の姿は、娘の望む将来と全く異なり、娘は父の願いを断るどころか、年老いた祖母の心配をよそに夢を語る父親を責めるように話をします。

紆余曲折の中のふたりは徐庶に話をしなくなるのですが、中古レコード店でのラストライブを父のために提案したサムでした。このシーンは心躍るような感覚になれます。楽しそうに演奏を続ける二人のバンド名は「バンドじゃない」。そうです。バンドではなくその前に親子であるという事なのです。ぴったりと息の合った演奏は、来店客から拍手喝さいを得るのでした。映画の全部がこのシーンのためにあるとも言えます。必見です。

時がたち親友のバーカウンターでバーテンダーとして務める父フランク、それは娘の学費を稼ぐためにでもありながら、楽しそうでもありました。適わなかった親子でバンドの夢も今は、娘のドクターになるという夢の応援なのです。

そしてそのころ一人暮らしの娘も、父と作った曲で歌手としてオーデションを受けるシーンがありました。親子が離れてそれぞれのドラマが始まりながら、お互いがお互いを知らないままではなく、お互いに影響を受け、またいつまでも励ましあっているような映画でした。

家族に何かを残すという事が終活ではいつもテーマになりますが、家族が互いの中から何かを見つけてくれるように一生懸命に生きること、家族のことを知ろうとする思いや時間を持つこともまた終活の中で大切なことのように受け止めてまいりました。

『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

今回ご紹介した映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

脚本:
ブレット・ヘイリー、マーク・バッシュ
プロデュース:
ヒューストン・キング、サム・ビスビー、サム・スレイター
オリジナルソング・音楽:
キーガン・デウィット
出演:
ニック・オファーマン、カーシー・クレモンズ、テッド・ダンソン、
ブライス・ダナー、トニ・コレット、サッシャ・レイン
映画サイト:HBLMOVIE.JP
2018 年/アメリカ/英語/97 分/日本語字幕:神田直美/原題「HEARTS BEAT LOUDS」
© 2018 Hearts Beat Loud LLC
提供:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
配給:カルチャヴィル
宣伝:ビーズインターナショナル

この記事を書いた人

尾上正幸

(終活映画・ナビゲーター / 自分史活用推進協議会認定自分史アドバイザー / 株式会社東京葬祭取締役部長)

葬儀社に勤務する傍ら、終活ブーム以前よりエンディングノート活用や、後悔をしないための葬儀の知識などの講演を行う。終活の意義を、「自分自身の力になるためのライフデザイン」と再定義し、そのヒントは自分史にありと、終活関連、自分史関連の講演活動を積極的に展開。講演では終活映画・ナビゲーターとして、終活に関連する映画の紹介も必ず行っている。

著書:『実践エンディングノート』(共同通信社 2010年)、『本当に役立つ終活50問50答』(翔泳社 2015)

『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

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