障害年金と障害者手帳は、同じ「障害」のつく制度なので混同されがち。ですが実際は、障害年金は年金機構が運営する年金制度、障害者手帳は地方公共団体が提供する公的サービスで、それぞれ別々の制度です。等級はもちろん、審査基準や受給条件も異なるため注意しましょう。
この記事では、障害年金と障害者手帳の概要や受給条件、申請方法などを解説します。
目次
障害年金と障害者手帳の違いとは?
障害年金 | 障害年金 | |
---|---|---|
主体 | 国 | 地方自治体 |
制度 | 年金制度 | 公的サービス |
申請先 | 年金事務所 など | 福祉事務所 など |
等級 | 1~3級 | 1~7級 |
結論からお伝えすると、障害年金と障害者手帳は別々の制度。
運営主体はもちろん、申請窓口や審査基準が違うため、それぞれの等級も連動していません。「障害年金の等級=障害者手帳の等級」ではないので、注意してください。
障害年金は国の年金制度。条件を満たして年金事務所に申請すれば、年金を受給できます。受給金額は級によって異なり、障害が重いほど高くなります。また、非課税なので確定申告は不要です。
一方の障害者手帳は、地方自治体が提供する公共サービス。取得すると、医療費・装具費の助成や各種税金の軽減措置、公共交通機関の料金割引などのサービスを受けられます。また就職に関しては、障害者雇用枠が利用できるのもメリット。
障害年金は年金の支給や減税があるぶん、多額の財源が必要です。そのため、障害者手帳と比べると障害年金は判断基準が厳しくなっています。
障害年金と障害者手帳は併用できる?
前述したとおり、障害年金と障害者手帳は別制度のため、併用は可能です。
障害年金制度とは?国の年金制度のひとつ

障害年金とは、老齢年金と同じく、国の年金制度のひとつ。怪我や病気によって日常生活・仕事に支障をきたし、制限を受ける場合に受領できる年金制度です。
障害年金は「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2種類にわかれます。医師の診療を受けたときに国民年金に加入していると「障害基礎年金」、厚生年金に加入していると「障害厚生年金」を請求できます。
参考:障害年金|日本年金機構
障害年金の等級
障害年金の等級は、障害の状態にあわせて、1〜3級にわかれています。
1級に該当するのは、他人の介助なしに身の回りのことができない方。2級は、すべてに他人の介助が必要とは限らないが、日常生活に支障をきたす度合いが高く、収入などを得るのに困難をきたす方が該当します。3級に該当するのは、労働をするにあたって著しく制限を受ける、制限を加えないといけない方です。
また、障害年金を受けるより軽い障害が残った場合は、障害手当金(一時金)が支給されます。
障害年金をもらえるのはどんな人?もらえる条件
1.初診日がいずれかの期間であること
- 国民年金に加入している間
- 20歳前(年金制度に加入していない期間)
- 60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)
※初診日とは、障害の原因となった病気や怪我ではじめて医療機関を受診した日
2.障害年金の認定基準に該当していること
- 障害の状態が、法令で定められた障害等級表において1級または2級に該当する
3.保険料納付要件を満たしていること
- 初診日の前々月までの期間の3分の2以上で、保険料が納付または免除されている
※初診日が年金に加入していない20歳前の方は納付要件が不要
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
障害基礎年金を受け取るための受給要件を、簡単にまとめるとこちらの3つになります。
納付要件は、法改正で変更されたり、状況にあわせて変わったりするかもしれません。日本年金機構ホームページに正確な要件が記載されているので、必ずあわせてご確認ください。
1.初診日がいずれかの期間であること
障害基礎年金を受け取るには、初診日が国民年金の加入期間か、20歳前または日本に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に該当しなければなりません。なお初診日とは、障害の原因となった病気や怪我ではじめて医療機関を受診した日を指します。
2.障害年金の認定基準に該当していること
障害の状態が、障害年金の認定基準において1級または2級に該当する必要があります。
ちなみに厚生年金に加入していて、障害基礎年金の1級または2級に該当する場合は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。障害厚生年金にも受給要件が定められているので、あわせて確認しておきましょう。
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構
3.保険料納付要件を満たしていること
初診日のある月の前々月までの間で、3分の2以上の期間、保険料を納付または免除していないと、障害年金を受け取れません。
ただ初診日が令和8年4月1日より前で65歳未満の方は、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がなければよいとされています。また、年金に加入していない20歳前の方は納付要件が不要です。
障害年金の手続き・申請から受給までの流れ
提出窓口
- 住所地の市区町村役場の窓口
※初診日が国民年金第3号被保険者期間中:年金事務所または年金相談センター
必要な書類
- 年金請求書
- 基礎年金番号通知書または年金手帳
- 戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか
- 医師の診断書
- 受診状況等証明書(初診時と診断書を作成した医療機関が異なる場合)
- 病歴・就労状況等申立書
- 本人名義の受取先金融機関の通帳またはキャッシュカード
障害年金を受けるときは、診断書の作成を医師に、受診状況等証明書の作成を病院に依頼します。病歴・就労状況等申立書は、ご自身で作成するか弁護士、社労士に依頼してください。
あわせて、基礎年金番号がわかる書類(基礎年金番号通知書または年金手帳)と、本人の生年月日がわかる書類(戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか)、受取先金融機関がわかる書類(通帳またはキャッシュカード)を用意します。
書類を揃えたら、住所地の市区町村役場・年金事務所・年金相談センターの窓口にある、年金請求書を記入して提出しましょう。
障害年金の申請手続きは、住所地の市区町村役場の窓口で行います。ただ、初診日が国民年金第3号被保険者期間中にあたる方は、お近くの年金事務所または年金相談センターで申請してください。提出から3か月程度で、障害年金の受給可否の連絡が入ります。
障害基礎年金の申請方法は、日本年金機構ホームページに詳しく記載されています。障害の原因やご本人の状況によっては、追加で必要な書類があるため、事前に確認しておきましょう。
障害者手帳制度とは?地方自治体の公的サービス

障害者手帳制度は、地方自治体が提供している公的サービスの一環です。障害者手帳を持つことで「障害者総合支援法」の対象となり、自治体や事業者からサービスを受けられます。
障害者手帳は、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3種類にわかれています。
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、「身体障害者福祉法」に基づき、身体的な機能に障害があると認められた方に発行される手帳です。1級から7級まで等級があり、日常生活に支障をきたす障害の程度によって級が変わります。
手帳が発行されるのは6級以上ですが、障害が複数にわたる場合は7級でも発行が可能。たとえば人工骨頭、股関節・膝関節などに関節を入れている方は、程度によって4~7級または非該当となります。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害により、日常生活および社会生活に支障をきたす場合に交付されます。等級は1級から3級まであり、精神疾患と能力障害の、両方から総合的に判断されます。基本的に、初診日から6か月経過しないと申請できないため、注意が必要です。
療育手帳
療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で、知的障害がある方に交付されます。
療育手帳の等級は自治体によって異なり、優遇された措置やサービスを受けられます。
障害者手帳の手続き・申請から受取までの流れ
提出窓口
- 住所地の市区町村役場の窓口
※具体的な窓口は自治体によって異なる
必要な書類
- 交付申請書
- 身体障害者診断書・意見書 (医師の発行から1年以内)
- 申請者の写真(縦4センチ×横3センチ、上半身で脱帽)
- マイナンバーと身元が確認できる書類
障害者手帳は、各自治体で申請窓口や判定基準が異なります。具体的な手続き方法は、お住まいの市区町村の担当窓口に問い合わせてください。ここでは、東京都福祉局を例に申請方法を解説します。
障害者手帳を申請するときは、まず受給障害認定基準を満たしているか確認します。この基準は都道府県によって違い、医師が作成した身体障害者診断書・意見書が必要です。交付申請書と身体障害者診断書・意見書は、お住まいの区市町村の障害福祉担当窓口にあるので、事前に入手してください。
書類を揃えたら、住所地の市区町村役場の窓口に提出します。書類提出後1〜4か月ほど審査されて、障害者手帳が交付されます。
障害年金と障害者手帳の違いを理解しよう
障害年金と障害者手帳は、名称が似ているので混同されやすいです。
「障害者手帳をもっていれば障害年金を受け取れる」「障害者手帳と障害年金の等級は同じ」だと思っている方は少なくありません。
また反対に「障害者手帳が4級以下だから、障害年金は受け取れない」と諦めて、本来もらえるはずの障害年金を受給できなかった…という方もいらっしゃいます。
両者は別制度だと理解したうえで、障害年金については年金事務所、障害者手帳については福祉事務所へ一度相談してみるのがおすすめです。