【行ってきました】「イエ亡き時代の死者のゆくえ」。終活のメリットは「自分一人じゃ生きられないことに気付く」こと

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東北大学宗教学研究室主催の公開シンポジウム「イエ亡き時代の死者のゆくえ」が2016年2月20日・21日の2日間、東京・港区の青山葬儀所で開かれました。

葬送・墓制研究の第一人者ら8名が、それぞれの専門の立場から「イエ」について研究してきた成果を発表しました。

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亡くなった人の面倒をみてくれる人がいない

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このシンポジウムの開催の目的について、鈴木教授は「制度としての『イエ』が崩壊して、意識の上での『イエ』も良い悪いは別として亡くなりつつある現在、これまでは子孫が見てきた死者の面倒を誰が見ることになるのか? このような課題にどう答えることができるのか」ということだと説明します。

近年、「送骨」「墓じまい」「Amazonのお坊さん便」など、いわゆる葬送習俗に関する言葉が話題になっている中で、その共通点として「文化として持ってきた葬送習俗が大きな変化が出てきている」。そしてその根本のところに「死者の面倒を見る人がいない」という問題があると言います。

お墓を造るわけにはいかずに、受け入れてくれるお寺にゆうパックで多少のお金と共に遺骨を送る「送骨」。墓を自分たちの子孫にまで残さないで自分たちの代で終わりにしようという「墓じまい」。いずれも、「死者の面倒を見ない」「死者の祀り手がいない」ということに関係があります。

今回、シンポジウムに参加された研究者と発表のテーマは次の通りです。

  • 鈴木岩弓(東北大学教授):死者を忘れない-“死者の記憶”保持のメカニズム-
  • 谷川章雄(早稲田大学教授):発掘された江戸・東京の墓-家と個人をめぐって-
  • 朽木 量(千葉商科大学教授):屋敷墓から見た近世・近代
  • 山田慎也(国立歴史民俗博物館准教授):納骨堂の成立と展開
  • 森 謙二(茨城キリスト教大学教授):〈家〉なき時代の葬送と法
  • 小谷みどり(第一生命経済研究所主任研究員):誰が死者を弔い、お墓を守るのか
  • 槇村久子(京都女子大学名誉教授):個人化・無縁化社会を超える葬送墓制
  • 村上興匡(大正大学教授):葬儀研究からみる弔いの意味づけの変遷

また、コメンテーターは日本宗教連盟元事務局長の戸松義晴氏が務めました。

江戸時代からあった無縁死

墓石に刻まれた戒名などから見えてくることや、近年話題の納骨堂の歴史、法律から見た現在の葬送と墓制などさまざまな切り口で研究がなされています。

例えば、谷川先生の江戸時代の埋葬に関する研究発表では、お墓を発掘することで、江戸時代には格式の高い甕棺(かめかん)に入れられて葬られてきた人、正方形の木製の棺、早桶(はやおけ)などに入れられた人など、その人の身分によって葬られ方にも違いがあることがわかってきたと言います。その中で、中小の寺院の墓地の一角には、檀家制度からはずれた無縁の人が葬られる場所もあったそうです。今、問題になっているのはその「無縁」ということが短期間に大量に出現れているということですが、歴史の中でどのように対応していたのかを知ることで対応策が見えてくるかもしれません。

終活のメリットは?

従来、人が亡くなると、初めのうちは地域社会の人たちが面倒をみてくれました。そして葬儀が終わって埋葬も終わるとだんだんと地域の人々のかかわる部分が減ってきて、その家族や子孫が面倒をみるようになります。

地域の人が面倒をみてくれるという安心感がありましたが、時代の流れの中で人々が地域社会から離れて、個々で生きることを選んだことで、そうした縁は壊れてしまいました。

こうしたことについて、小谷先生は「元気な間は一人でもいいけれど、高齢になったり病気になったり……。自立できなくなっても一人で生きていかなければならないことに、人々が気付いてきた」と説明。終活のメリットも、葬儀社や葬儀の内容を決めるということではなく、「自分が一人では生きていけないことに気付くこと」だと言っています。

2日目の発表後に行われた討論会では、葬儀やお墓のことだけでなく、仏教やお寺について、なぜ今「檀家離れ」が言われているのかといったことにまで話題はふくらみ、研究者たちの“本音トーク”が繰り広げられました。

今回のシンポジウムの内容は、今後、書籍にまとめられて発刊される予定ですので、この辺の本音トークについては書籍化を楽しみに待ちましょう。

青山葬儀所の見学会

また、今回のシンポジウムは青山葬儀所を葬儀や法事・法要以外で使用した初めての試みとなりました。

当日は、シンポジウムの参加者が青山葬儀所内を自由に見学できました。

「初めて来た」という人も多く、遺族控室など会場以外の施設も回り、職員の説明に耳を傾けていました。

 

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