キリスト教の教派「聖公会」の葬儀について

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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キリスト教「聖公会」とは、約450年前にイギリスで始まった、世界中に7,000万人以上の信徒を持つ西方キリスト教会の一派です。日本国内には北海道から沖縄まで11の教区があり、約5万人の信徒らによって礼拝が守られています。そんな聖公会での葬儀はどのように行われるのでしょうか。教会儀式の基本的なスタイルや、参列する際に注意しておきたいことを確認しましょう。

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キリスト教「聖公会」とは

「聖公会(せいこうかい)」は、イギリ国王を首長とする「イングランド国教会系」の一派で、ローマ・カトリックやプロテスタントと同じ「西方キリスト教会」に属する教派です。
聖公会の歴史をひもとけば、16世紀の宗教改革でプロテスタントの影響を受けたカンタベリー大主教がローマ教皇の統治するローマカトリック教会を離れ、イギリス国王を首長とする「イングランド国教会」が誕生しました。

その後、聖公会は大英帝国の繁栄とともに植民地で勢力を拡大し、アメリカやカナダ、南アフリカなどで信徒数を増やしてきました。
聖公会という名称は「聖なる公同の教会( Holy Catholic Church)」の略で、「公同(こうどう)」とは聖書のエペソ1章22節~23節に記述されている言葉です。「時代や場所を越えた普遍的・霊的共同体」という意味があります。

ブリッジ・チャーチの役割

聖公会は聖書の「みことば」を大切にするプロテスタントでありながら、ローマ・カトリックの「使徒継承」や「サクラメント(秘跡・聖礼典など)」を護持するなど、カトリック的な要素を色濃く残している点が特徴で、両者の中立にあって橋渡しの役割をもつ教会(ブリッジ・チャーチ)を自称しています。
分かりやすい例では、ローマ・カトリックでは祭司を「神父」と呼ぶのに対し、プロテスタントでは「牧師」と呼びます。聖公会の場合は国や地域によってどちらの呼称も使われます。
一方、カトリックとの決定的な違いといえば、聖公会は世界の国々で、それぞれの管区が自治権をもって独自の活動をしているという点です。信仰的な良心に基づいた自由が認められているのも特徴です。
こうした成り立ちから、教会ごとで信仰に幅はあるものの、いずれの教会も英国聖公会の長であるカンタベリー大主教を精神的なシンボルとして崇敬し、「Unity in Diversity(多様性の中の統一)」という言葉によってひとつに結ばれています。

日本聖公会の歴史と特色

アメリカ聖公会の宣教師が日本にはじめて渡来したのは禁教時代の1859年で、1887年(明治20年)に「日本聖公会(にっぽんせいこうかい)」が誕生しました。
現在は北海道から沖縄まで全国11か所の教区に「主教」が存在し、その中から1人が「首座主教」として監督に選出されます。
毎週日曜日の「主日礼拝」では、日本聖公会の編集による「祈祷書」と「日本聖公会聖歌集」「新共同訳聖書」が用いられます。
立教大学や聖路加国際病院といった学習・医療施設のほか、多くの福祉事業を手掛けることで社会との関わりを大切にしています。

聖公会の葬儀は「葬送式」

葬儀は教派によって呼称がやや異なり、聖公会の場合は「葬送式(そうそうしき)」と呼ばれます。

式の内容は、おもに葬送式・逝去者記念聖餐式・逝去者記念式などです。
祈りと聖歌、説教(逝去者記念式)などを中心に、あらかじめ受け付けで用意されている式文に沿って執り行われ、一般に納骨や埋葬は後日「埋骨の祈り」とともに行われます。
聖歌は事前に案内が配られますので、可能であれば遺族や逝去者とともに祈り、神を賛美する気持ちで参加します。もちろん聞いているだけでも構いません。
献花が行われる場合、多くは白い菊かカーネーションが使われます。献花の方法には神道の棚串のように決まった作法はありません。

キリスト教では仏式のように通夜や通夜振る舞いはありませんが、日本の多くの教会では国内で多数を占める仏式葬儀の習慣に合わせて、葬送式の前夜に「通夜の式」「通夜の祈り」が採用されています。
香典の表書きは、教派を問わず「御花料」とするのが無難です。専門店ではキリスト教の不祝儀袋も扱っていますが、特にこだわる必要はありません。ただし仏教を象徴する蓮の花が描かれているものは避けましょう。

参列する際の服装は仏式と同じで構いませんが、数珠や喪章など仏教の法具は必要ありません。

また、聖公会では毎年11月1日を「諸聖徒日(しょせいとび)」、2日を「諸魂日(しょこんび)」と定め、天に召された個人を偲んで祈ります。どちらもカトリックに由来する秋の大切な祝日です。

まとめ

キリスト教聖公会の成り立ちと葬送式について紹介しました。キリスト教にとって人の死とは、「魂の天国への帰還」で、故人は神の定めた時に従って天に召されたと解釈します。とはいえ、大切な家族を失った遺族への配慮は必要でしょう。そんな時は、お悔やみの言葉の代わりとして「残されたご遺族の上に神さまの平安がありますように…」と声を掛けるのが一般的です。また、キリスト教葬儀に特化した専門の葬儀社もあります。お気軽にお問い合わせください。

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