地域行事として日本各地に残る百万遍念仏とは

小林憲行【記事監修】
小林憲行

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百万遍念仏とは、知恩寺の大念珠繰りでも有名な行事の一つです。

今日でも、地域信仰として各地に流布し、日本中に残っていますが、元々は、念仏を一人で唱える苦行であったために、一般の方が行うには難しいものでした。

では、それがなぜ、数珠を用いながら、たくさんの人々で念仏を唱える行事になったのでしょうか。今回は、この百万遍念仏について詳しく解説をしていきます。

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百万遍念仏とは

7日、10日と期間を定めて100万回念仏を唱えることにより、自身の往生や願いを叶えたり、亡くなった方を供養したりするものです。

現在では、数珠を持ちながら複数の人々で「南無阿弥陀仏」を唱え、互いの念仏を足して100万回とすることが多いようです。

元々は、「阿弥陀経」の中に記載がある「7日間不眠不休で阿弥陀の陀羅尼と呼ばれる句を唱える行法」だったのですが、知恩寺の善阿空円によって、今のような数珠繰りをしながら百万遍念仏を唱えるものとして変化を遂げました。

きっかけは疫病が蔓延していた鎌倉時代末期の元弘元年(1331年)の頃、当時の後醍醐天皇が善阿空円に対して疫病を鎮めてほしいとの命を下したそうです。その命を受けて7日間の百万遍念仏を行い疫病を鎮めたところ、知恩寺はその功績から百萬遍という名前を授かりました。これが今の京都にある百萬遍知恩寺です。

このような出来事から百万遍信仰が始まり、各地に広まっていったようです。

数珠繰り

元々、個人で行う行法であった百万遍念仏は、徐々に互いと融通ができるという考えに至ります。というのも、百万遍の念仏を1人で唱えるのは苦行といわれており、行法の一環でもあったので、一般の人々が行うのには無理があったのです。

そのような背景から、数珠を持ちながら互いに念仏を唱えることで、その数が加算される「融通念仏」という考えが普及していきました。融通念仏の場合、10人で念仏を唱えると1人当たり10万回唱えれば10×10万で百万遍となり、100人で念仏を唱えれば1人当たり1万回唱えれば100×1万で百万遍となることになります。

今日では数珠繰りとして、大きな数珠を大勢で回しながら念仏を唱え、自身や周りの幸せ、日々の感謝に祈りを捧げるという儀式として進化を遂げました。

百万遍念仏といえば、数珠繰りをしながら念仏を唱える行為を指すことが多いようです。

数珠繰りと木槵子経

この数珠繰りという概念は、木槵子経(もくげんじきょう)という経典から来ています。この書の中にはこのように記載があります。

あるときお釈迦様の元にある王様の使者が来てこう言いました。「私の国では、盗賊の被害により食料不足や疫病が問題になっております。これをどうにか解決する方法はないでしょうか」この言葉を聞いたお釈迦様は、木槵子の実を百八つ通した数珠を授けて「三宝を唱えながら数珠を一つずつ繰りなさい、それが百万遍になったときに平穏が訪れます」と言いました。

この言葉を聞いた王様は木槵子の実で数珠を作り、それを近親者に配って一緒に数珠繰りを実践したところ、国中の国民に平穏が訪れたそうです。

このように木槵子経には、数珠繰りをすることで平穏が訪れるとの記載がありますが、実際にこの書の内容を広めたのは道綽(どうしゃく)禅師とされています。

道綽禅師は、亡くなるまで毎日7万遍念仏を唱えたとされており、小豆で念仏を数える小豆念仏や、無患子(ムクロジ)で作った数珠による数珠繰りなど数珠の使用を広めた人物です。彼の数珠は、室内で光り輝いていたという伝説も残るほどです。

地域によっての違う百万遍念仏

百万遍念仏が各地に広まると、それぞれの地域によって変化を遂げました。

群馬県の百万遍

群馬県桐生市の皆沢地区では、百万遍念仏は江戸の頃より伝承されている行事となっています。当時は、村の悪霊を退治するために川で沐浴をしたのちに、一日中をかけて村中を回ったそうです。

現在では、お盆が終わった後に男女が集まって大きな数珠を繰りながら、太鼓と鉦の音に合わせて「南無阿弥陀仏」と唱え、最後は力を込めて激しく引き合いながら部外に追い出す行事となっています。[

秋田県の百万遍

また、秋田では、1月の成人式の頃に、タラの木で作った大きな数珠を繰りながら念仏を唱える行事があります。この行事は、地域の一年間の無病息災を祈るもので、地域の端にある十字路で行うという特徴があります。

この行事では、100回数珠を回すことで百万遍の勘定として無病息災を祈ります。このように、地域ごとにさまざまな百万遍念仏が民俗信仰という形で残っています。

行事を行う理由には、無病息災や疫病や飢餓除けなどさまざまなものがありますが、どれも集落の平安を願うものです。

これは木槵子経の書にあるのと全く同じ形で各地に伝わり、現代でもそれが残っているのがわかります。

まとめ

百万遍念仏は、追善供養のためにも行うことがあります。

葬儀や法要で、数珠を用いて「南無阿弥陀仏」を唱えるところを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これは浄土宗などの葬儀で見られるものです。

これから葬儀をするときに、浄土宗にお願いしようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。

もしその際、手配などで分からないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

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