臓器提供とは、自分の死後、健康な臓器を、病気や事故によって臓器の機能が低下した人に移植するために提供することを指します。
医療技術の進歩により、臓器移植を行うケースは増えてきています。また、自分が死亡した場合、自身の臓器を提供して役立てたいと考える人も増えてきました。もしもの時に誰かの命を救うことができるかもしれない臓器提供。提供を希望するためには、何をしたらいいのでしょうか。
目次
最期の迎え方、臓器提供という選択
事故や病気により臓器の機能が低下し、既存の治療法では回復が見込めないことがあります。そのような場合に、他者の健康な臓器を移植して機能を回復させる医療行為を臓器移植と言います。これは、臓器提供する人がいることで成り立つ治療方法です。
移植による回復を望んでいて、日本臓器移植ネットワークに登録している人は約1万4千人(2018年8月現在)おり、その内、2017年中に移植を受けられたのは380人です。臓器移植を行う事例が増えた現代でも、多くの人が臓器提供を待っていることがわかります。
最近では、自分の死後、健康な臓器の提供を考える人や、ドナー登録する人も徐々に増えてきました。しかし、宗教上の問題や、家族からの理解が得られないなど、まだ臓器移植に対しての課題は多く残っています。
生前に亡くなった際の臓器提供を意思表示する重要性
臓器を提供する・しないというのは、もちろん本人が決めることです。どちらも等しく尊重される判断ですが、大切なのは、生前にその意思をきちんと表明しておくことです。
2010年に施行された改正臓器移植法により、亡くなった本人の意思が不明な場合、家族の承諾があれば、臓器提供を行うことが可能になりました。しかし、もしもの時に残された家族を悩ませることのないように、自分で明確な意思表示をしておくことは重要です。家族で臓器提供について話し合い、自分の意思を伝え、共有しておくともしもの時に遺された遺族の負担を軽減できる場合もあります。
臓器提供の意思表示をするために意思表示をするには、次のような方法があります。どれも手軽にできる方法なので、ぜひ実行しておくようにしましょう。
インターネットやモバイルサイトで登録する
公益社団法人日本臓器移植ネットワークに、臓器提供の意思を登録しておく方法です。パソコンからはもちろん、モバイルサイトからも登録できます。
健康保険証などの意思表示欄に記入する
健康保険証や運転免許証などには、臓器提供の意思表示を記入する欄が設けられています。この欄に、直接自分の意思を書いておきましょう。
意思表示カードに記入し、持ち歩くようにする
意思表示カードは、都道府県市町村役場窓口や、一部の病院、イオン店舗などに設置してあります。提供する・しないといった希望の他、提供したくない臓器の選択など詳細に記入することができます。
死亡後、臓器提供を行う時の流れ
もし、自分が亡くなった時に臓器提供の意思を示していたら、どのようにして移植に至るのでしょうか。脳死と呼ばれる状態になった場合と、脳死を経ないで最期を迎える場合では、少し流れが違います。
脳死を経ない場合、臓器を提供できるのは心臓が停止した後になります。心停止した後の提供は、手術室がある病院ならどこでも可能です。本人の意思表示があるか、家族からの臓器提供の申し出があった場合には、移植コーディネーターが担当します。
まず、家族にこれからの流れなど、臓器提供についての詳しい説明がされます。そして説明後には家族で話し合いの場が設けられ、臓器提供を行うかを最終決定するのです。
臓器提供をする場合は、移植希望登録者の中から、適正な患者が選ばれ、摘出手術が始まります。摘出手術には大体、3~5時間かかります。摘出後は、きれいに縫い合わせて、ガーゼを当て、摘出手術の跡がわからないようにします。
一方、脳死と呼ばれる状態になった場合は、家族の意思決定までの流れは同じですが、法による脳死判定を2回行います。その後、摘出手術へと移ります。
臓器提供する場合に気を付けること
ドナー登録者数も増えつつあり、家族の承諾で臓器提供が可能になった現在。臓器提供は、移植を待ち望んでいる多くの患者さんたちにとっての希望となることでしょう。
しかし、故人の意思表示がない場合には、注意しなければならない点もあります。
例えば、一部の宗教では、脳死は人の死と認めていない場合があります。故人の信仰によっては、宗教上の理由で臓器提供はできないかもしれません。
また、臓器提供をする意思はあるが、心停止後にしてほしいなどの希望を持っている可能性もあります。
いずれにせよ、家族に負担をかけないためには、あらかじめ本人の意思表示をはっきりしておくようにするべきでしょう。
まとめ
自分が最期を迎える時、残された身体を、病気で苦しむ人たちに役立てるという考えは素晴らしく、尊いことだと思います。一方、宗教やその他の理由から、臓器提供はできない、希望しないという考えももちろんあるでしょう。
どちらの場合も、残された家族が悩むことのないように、きちんと話し合い、自分の意思を示しておくことが最も重要です。
自分の最期を考えるにあたって、不安やお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。