ホスピスという言葉をご存知でしょうか?ホスピスは「最後の時をその人らしく暮らせるように支援する施設」です。痛みを和らげる緩和ケアのほか、精神的、社会的なケアを行います。
また、最近では自宅で過ごしたいという人のために医療職がチームになり、自宅に訪問してケアを行う「在宅ホスピス」という仕組みもあります。
「大切な家族の最後は、できるだけ痛みを少なくしてあげたい」という人も多いはず。もしもの時のためにホスピスで受けられるケアや費用などを紹介します。
ホスピスとは
末期がんや重い病気などの死期が迫った患者に緩和ケアを行い、穏やかな日常を送れるよう支援することを目的として作られた施設です。身体的、精神的、社会的な側面から包括的にケアをを行います。
また、利用者だけでなく、その家族もケアの対象になります。また、ホスピスで行われるケア全般を指して「ホスピスケア」と呼ばれています。
ホスピスケアを行う専用の施設もありますが、病院内の緩和ケア病棟も同様です。厚生労働省に届け出を行っている施設になります。
在宅ホスピスとは
在宅ホスピスとは、医師や訪問看護師が患者の自宅を訪れ、緩和ケアを行うことです。住みなれた家で最期の時を過ごすことができる上に、病院や施設等と連携しているため、患者や家族の希望によりいつでも病院などでの治療を受けられる環境が整えられているのが特徴です。
在宅でホスピスのケアを受けたい場合には、まず主治医やケアマネジャーに相談しましょう。
このとき、患者自身が自宅で過ごしたいという希望があるだけでなく、患者の介護を引き受ける意志が家族にあること、苦痛や痛みのコントロールなどのホスピスケアをすることができる医療関係者を見つけるなどが必要になります。
在宅でのホスピスケアを考えている場合には、介護保険サービスを上手く利用し、家族の負担を減らすことが大切です。
また、末期がんや医療依存度の高い人が入所し、ケアを受けられる介護施設を「在宅ホスピス」と呼ぶ場合もあるようです。入所にあたっては必要なケアが受けられるか確認し、本人、家族の話し合いのもと検討をしましょう。
ホスピスで行われる緩和ケアとは
緩和ケアと近い意味を持つ言葉に「ターミナルケア」「看取りケア」があります。
緩和ケア
痛みなどの症状をやわらげることを目的としたケアのことを言い、主に末期がんやエイズなどに罹患した人に行われます。鎮痛薬を使用するなどの医療的な対応や、治療中である場合も含めて心身のケアを行うことで、生活の質の向上を目指します。
ターミナルケア
認知症や老衰で余命がわずかな人たちの残りの人生を、充実した豊かなものにするケアであり「終末期医療」とも呼ばれています。緩和ケアがターミナルの要素に治療も並行して行うのに対し、ターミナルケアでは残された生活を心穏やかに過ごしてもらうようことに、より重点を置いています。
看取りケア
主に自宅や介護施設で亡くなる直前に施されるケアのこと。たとえ意識がなくなった状態にあったとしても、最期まで本人とコミュニケーションを取り、体調管理に必要な身体的ケアを行います。食事や排泄、褥瘡の防止なども含まれます。
ホスピスケアの内容
ホスピス、緩和ケア病棟ではどのようなケアが行われているのでしょうか。入院時に本人や家族の意向を聞き、その人が望むケアを決定します。
ケアにあたっては医師、看護師だけでなく、管理栄養士や心理職、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種がチームとなり支援を行います。
身体的ケア
がんに伴なう緩和医療(呼吸苦など疼痛コントロール)や、痛みの緩和のための放射線治療などを行います。また、それによる食欲の低下や口内炎でも食べやすい食事サポートなどを行います。
あわせて、少しでも穏やかに過ごすために体を拭いたり、髪を整えたりといったた身だしなみを整えることも、残された日々を明るく過ごす助けになります。
しかし、治療によっては延命治療にあたるものもあり、どこまでの処置を行うかは医師と相談の上決定します。
精神的ケア
死に対する不安や心残りが大きくなりすぎないよう、心理職によるサポートや家族との時間を過ごせるよう調整します。ベッドの周辺にはお気に入りの物を置いたり、音楽をかけたりリラックスできる空間作りも行います。季節ごとのレクリエーションも行います。
社会的ケア
経済面や福祉制度など、患者やその家族の生活全般について、ソーシャルワーカーがサポートします。また、自宅に戻る場合はケアマネジャー、訪問看護、訪問介護などの手配などを行います。
ホスピス、緩和ケア病棟の費用
ホスピス、緩和ケア病棟の入院料は、厚生労働省から緩和ケア病棟として承認を受けた施設の場合、1日単位で診療報酬点数が決まっている定額をもとに支払うことになります。
ホスピス・緩和ケア病棟では以下の3種類の費用が必要です。
- 入院料の自己負担分
- 食費の自己負担分
- 差額ベッド料
入院料の自己負担分について
①入院料の自己負担分については、入院する日数によって異なります。(1)30日未満、(2) 31日以上60日以内の期間、(3)61日以上の期間によって点数が変わってきます。
そもそも75歳以上の人は後期高齢者医療制度が適用されるため、医療費の自己負担額は1割か3割となります。そして、毎月の自己負担限度額が設けられているためホスピスの費用もその範囲内となります。
1割負担の人が入院したときの毎月の自己負担限度額は5万7,600円です。また、過去12か月間に、高額療養費の支給が3回あった場合、4回目以降は4万4,400円になります(多数回該当)。
差額のベッド料について
また、③の差額ベッド料とは、入院時に3~4人部屋、2人部屋、個室を利用した場合に「室料差額」として病院から請求される費用(保険外)で、施設によって料金は異なります。
6人部屋などの大部屋利用では差額ベッド料はかかりません。
ホスピス・緩和ケア・ターミナルケアに関するよくある質問
ホスピス、緩和ケア病棟の費用について教えてください
ホスピス・緩和ケア病棟では入院料の自己負担分・食費の自己負・担分差額ベッド料がかかります。
入院料の自己負担分については、入院する日数および医療費の自己負担額によっても異なりますが、1割負担の人が入院したときの毎月の自己負担限度額は5万7,600円です。
万が一に備えて家族ができることはありますか?
ご家族にとって、万が一のことは考えたくはありませんが、心に余裕があるうちに、葬儀の事前準備をしておくことをおすすめします。