今は亡き母へ
「いってらっしゃい」「いってきます」の声で旅行に出かけた母。
その翌日、旅先で亡くなりました。朝の入浴中の事でした。前日まで元気に過ごしておりましたので、とても信じられないものでした。
人の一生でたった一つだけ絶対があります。それは、人は生まれたら、必ず死ぬことです。
母の死を境に″生きること”と″死ぬこと”について真剣に考えるようになりました。
生まれることは自分の意志ではありませんが、生まれたからにはその限りある寿命を精一杯生き、そして必ずや訪れる死と素直に対峙し、出来れば心やすらかに、終止符を打てればいいと考えるようになりました。
生前母は、お墓について気にしており、自宅近くの霊苑にと望んでおりました。
しかし私はそんなのは、まだまだ早いよと取り合わず何も聞いてやりませんでした。
また母は、自分の葬儀の遺影を準備しており、私に見せていた時も、何と準備のよい事かと笑っていただけでした。
「子ども達には迷惑をかけたくないから、ポックリと死にたい」と口ぐせのように言っていた母。
そして母の希望どおり、ポックリ六十九歳で逝ってしまいました。
お母さんへ。
「葬儀は、あなたお気に入りの遺影を飾り、あなたを偲ぶたくさんの友人が参列して下さり、あなたが望んでいた霊苑のお墓に入れましたよ」
現在のように、普通に終活が叫ばれ、禁句に思っていた″死後のこと”を話題にするのも大切と感じております。生前、母の不安に想っていたことをよく聞いてやり相談にのってやっていれば、どんなに安心が得られたろうと申しわけなく思っています。
最後に母に伝えたい言葉は、
「一億の人には一億の母あれど、我が母に勝る母なし」
お母さん、ありがとう。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。