葬儀費用は大きな支出になりがち。葬儀費用が対象となる補助金制度を上手に活用すれば、経済的な負担を減らせます。この記事では、葬儀費用の補助金の種類や必要な手続き、注意点、税金などについて解説します。
目次
葬祭費補助金制度とは

葬祭費補助金制度とは、故人が国民健康保険や社会保険などに加入していた場合に補助金がもらえる制度です。葬祭費補助金制度を活用することで葬儀費用の補填が可能。加入していた保険の種類によって、もらえる額や申請する場所が異なります。
葬祭費補助金制度を活用するときは、決められた期間内に必要書類を準備して手続きをしなければなりません。急な葬儀でお金がない場合に役立つ制度なので、申請方法を理解して確実にもらえるようにしておきましょう。
葬儀費用でもらえる補助金
- 葬祭費
- 埋葬料
- 埋葬費
- 葬祭扶助
- 家族埋葬料
葬儀費用でもらえる主な補助金はこちら。それぞれの補助金の「申請する場所」「対象になる人」「もらえる金額」について解説します。
補助金その1:葬祭費
葬祭費は、故人が国民健康保険もしくは後期高齢者医療制度に加入していた場合にもらえる補助金です。喪主が、故人が住民登録していた年金保険課へ申請することで支給され、金額は3万円~7万円が一般的です。
過去には各市町村によって3万円~10万円まで幅がありました。もらえる金額は自治体ごとに違うため、お住まいの市町村の国民健康保険課までお問合せください。
補助金その2:埋葬料
埋葬料とは、故人が社会保険に加入していた場合にもらえる補助金です。社会保険事務所または健康保険組合へ申請することで、埋葬を行ったご家族に一律5万円が支給されます。
補助金その3:埋葬費
埋葬費は、埋葬料を受け取る対象者(故人の家族)がいない場合、故人を埋葬した方がもらえる補助金です。埋葬料が一律5万円なのに対し、埋葬費は上限5万円のうち実際にかかった費用分をもらえます。埋葬料と同様、申請先は社会保険事務所または健康保険組合です。
補助金その4:葬祭扶助
葬祭扶助は、故人が生活保護を受けていた場合、葬儀費用を負担できない家族がもらえる補助金です。葬祭扶助は、故人や故人の家族が生活保護を受けている状況でも、最低限の葬式を行う目的があります。葬祭扶助でもらえる額は故人の年齢や自治体、年度によって異なり、以下は目安の金額です。
- 故人が12歳以上:最大で概ね20万円前後
- 故人が12歳未満:最大で概ね15万円前後
葬祭扶助は、他の葬祭補助金制度とは少し異なります。生活保護を受けているのが故人ではなく喪主である場合、葬儀を行うのが困難だと判断されると葬祭扶助の利用が可能です。
補助金その5:家族埋葬料
家族埋葬料は、故人の扶養者が社会保険に加入している場合にもらえる補助金です。社会保険事務所または健康保険組合へ申請することで、被保険者は一律5万円を受け取れます。
葬儀費用の補助金をもらうための手続き
葬儀費用の補助金は、国民健康保険や社会保険に加入していても自動的にもらえるものではありません。葬儀費用の補助金をもらうためには、指定された窓口に申請書を提出する必要があります。
「葬祭費」「葬祭扶助」「埋葬料・埋葬費・家族埋葬料」では申請先と方法が異なるため、それぞれ解説します。
手続きその1:葬祭費
申請者 | 喪主 |
申請先 | 故人が住民登録していた役所の保険年金課 |
申請方法 | 故人が住んでいた地域の役所の窓口に必要書類を提出する 手続きが受理されると1~2か月後に口座へ補助金が振り込まれる。 |
支給額 | 3万円~7万円 |
申請期限 | 葬儀を行った日の翌日から2年間 |
必要書類 | 葬祭費支給申請書 葬儀の領収書など 振込先の口座番号がわかるもの 申請者の本人確認書類 死亡届などのコピー 印鑑 故人の健康保険証 など |
葬祭費を喪主以外が申請する場合は委任状が必要です。葬祭費支給申請書は、各自治体の窓口やホームページからダウンロードできます。必要書類は自治体によって変わってくるため、各自治体のホームページを確認しましょう。
手続きその2:葬祭扶助
申請者 | 喪主 ※委任状や印鑑があれば、葬儀社による代行も可能 |
申請先 | 申請者の住民票がある市区町村の役所、もしくは福祉事務所 |
申請方法 | 葬儀の前に葬祭扶助の申請を行う 必要書類を役所へ提出する |
支給額 | 故人が12歳以上:最大で概ね20万円前後 故人が12歳未満:最大で概ね15万円前後 ※金額は自治体により異なる |
申請期限 | 故人が死亡してから葬儀の前まで |
必要書類 | 葬祭扶助申請書 死亡診断書のコピー 請求書 葬儀執行人の委任状 生活保護変更届 執行人の印鑑 など |
他の葬儀費用補助金が現金支給であるのに対し、葬祭扶助は現物支給となります。自治体から葬儀社へ直接支払いをすることで、決められた支給額の範囲内で葬儀が行える仕組みです。葬儀の規模や内容は制限されますが、葬儀にかかる費用は実質的にありません。
葬祭扶助で賄えるものは以下の通りです。
- 死亡診断書の作成
- 死体の運搬
- 火葬または埋葬
- 納骨
- 安置施設使用料
- 霊柩車の利用
- その他費用
葬祭扶助は生活に困窮している方を最低限補助する制度で、お通夜や告別式にかかる費用までは賄えないので注意してください。
手続きその3:埋葬料・埋葬費・家族埋葬料
申請者 | 埋葬料:埋葬を行う方 家族埋葬費:故人の家族以外で埋葬を行う方 家族埋葬料:社会保険に加入していた故人の扶養者 |
申請先 | 社会保険事務所または健康保険組合 |
申請方法 | 故人の勤務先が所属する健康保険組合または社会保険事務所に必要書類を提出 |
支給額 | 埋葬料:一律5万円 埋葬費:5万円を上限に実費精算 家族埋葬料:一律5万円 |
申請期間 | 埋葬料:死亡した翌日から2年間 埋葬費:埋葬した翌日から2年間 家族埋葬料:死亡した翌日から2年間 |
必要書類 | 埋葬料(費)支給申請書 事業主による死亡の証明 故人と申請者の名前が記載されている住民票 埋葬費の領収書 埋葬認可証のコピー 死亡診断書のコピー 故人の戸籍謄本 本人確認書類(マイナンバーカード) など |
埋葬料・埋葬費・家族埋葬料は、故人が社会保険に加入していた際にもらえる補助金なので、手続きに必要な情報が重複しています。また、状況によって必要書類が変わるので注意しましょう。
第三者の行為が死亡原因となる場合は、「第三者行為による傷病届」が必要です。請求する死亡の原因が仕事中または通勤途中で、労働災害の給付を請求中の場合は、「労働基準監督署への紹介に関する同意書」が必要となります。
葬儀費用に補助金を活用するときの注意点
- 葬儀で補助金をもらえない場合もある
- 葬儀費用の補助金をもらえるタイミング
- 故人が加入していた保険の資格喪失手続きが必要
- 亡くなる前に葬儀について話し合う
葬祭費補助金制度は、葬儀費用を一部負担してくれる制度ですが、保険を利用している以上申請するタイミングや必要な手続きを守らなければなりません。漏れがあった場合は、補助金を受け取れないため、注意点を理解しておきましょう。
注意点その1:葬儀で補助金をもらえない場合もある
葬儀を行ったのに葬儀費用の補助金をもらえない場合があります。葬儀費用の補助金は対象保険の加入が条件なので、そもそも保険に加入していないと補助金をもらえません。
また、必要書類に不備があったり、葬儀費用の領収書を破損・紛失したりしていると、補助金をもらえなくなります。葬儀費用の補助金をもらうためには、必要書類、申請者、申請期間、申請方法を正しく守るのが大切です。
注意点その2:葬儀費用の補助金をもらえるタイミング
保険の種類や自治体によって異なりますが、葬儀費用の補助金は申請から1~2か月以内の支給がほとんどです。そのため、葬儀が終わったタイミングで葬祭費補助金制度の申請をしないと、補助金をもらえる時期が遅れてしまいます。
さらに、申請に必要な書類の準備にも日数を要するため、スピーディーな行動が必要。事前に支給のタイミングを確認しておくことで、葬儀後スムーズに申請を行えます。
注意点その3:故人が加入していた保険の資格喪失手続きが必要
保険加入者が亡くなった場合、資格喪失の手続きをしなければなりません。国民健康保険の資格喪失の手続きをするときは、死亡した日を含めて14日以内に届け出る必要があります。
国民健康保険の資格喪失手続きをしなくても、葬儀費用の補助金は受け取れます。しかし、保険料を払い続けてしまう可能性があるので注意しましょう。
注意点その4:亡くなる前に葬儀について話し合う
故人が加入している保険や葬儀の希望などを把握しておかないと、遺族は手続きに手間と時間がかかってしまいます。葬儀を華やかにするのか、最小限に抑えたいのかは人それぞれです。故人の遺志を最大限に尊重できるよう、生前に話し合いをしておくのも大切です。
故人の遺志を尊重しつつ、できるだけ費用をおさえたいご遺族も多いでしょう。ある程度話し合いで詳細を決めておくと、遺族間でのトラブル回避にもつながります。
葬儀費用で税金対策ができる

故人の遺産を相続するときには、相続税がかかります。相続する遺産から葬儀費用を支払うと、葬儀費用を控除した資産額に相続税がかかるため、節税効果があります。補助金を活用するだけでなく、故人の遺産から葬儀費用を出すことで、より負担を軽減できるでしょう。
ただし、相続税控除の対象となる葬儀費用の項目は決まっています。葬儀費用に含まれる料金と含まれない料金を解説するので、確認しておいてください。
葬儀費用に含まれる金額
- 葬式や葬送またはその前に、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
- 遺体や遺骨の回送にかかった費用
- 葬式の前後に生じた費用で通常葬式に欠かせない費用(お通夜など)
- 葬式にあたり、お寺などに対して読経料などのお礼をした費用
- 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
これらの葬儀費用を遺産総額から支払うと、相続税の控除対象となるため、結果として相続税の負担が軽減されます。
葬儀費用に含まれない金額
- 香典返しに使った費用
- 墓石や墓地のためにかかった費用
- 墓地を借りるためにかかった費用
- 初七日や法事などにかかった費用
葬儀費用に含まれるかどうかの判断基準は、葬儀の儀式に必要な経費かどうか。たとえば、香典をいただいた参列者に送る香典返しは、お礼の品物なので葬儀費用に含まれません。
葬儀費用に対する補助金の割合
2024年 | 基本料金 | 飲食費 | 返礼品費 | 総額 |
---|---|---|---|---|
全体 | 75.7万円 | 20.7万円 | 22.0万円 | 118.5万円 |
- 基本料金:斎場利用料・火葬料・祭壇・棺・遺影・搬送費など、葬儀を行うための一式
- 飲食費:通夜振る舞い・精進落としなどの飲食*
- 返礼品費:香典に対するお礼の品物*
- 葬儀費用の総額:基本料金・飲食費・返礼品費の合計金額(お布施は含まない)
*飲食費・返礼品費はひとり当たりにかかる費用のため、参列人数に比例して変動します
全国の葬儀費用の平均相場は118.5万円。(第6回お葬式に関する全国調査調べ)
内訳は、葬儀一式にかかる基本料金が75.7万円、会食やおもてなしの飲食費が20.7万円、会葬者へお渡しする返礼品費が22.0万円です。
また、葬儀に僧侶や神職を呼ぶと、別途お布施が必要になります。葬儀費用の補助金は10万円以下がほとんどなので、補助金だけで葬儀費用をすべて賄うのは難しいです。葬儀費用の補助金は、あくまで補填するお金だと把握しておきましょう。
葬儀費用には補助金を活用しよう
葬祭費用補助金制度は、特定の保険加入者が死亡した際に補助金がもらえる制度です。手続きや書類の準備は大変ですが、少しでも葬儀費用をおさえたいなら申請した方がベター。また、生活保護を受けていた場合に受け取れる補助金もあります。葬儀費用の捻出が難しい経済状況でも、現物支給で必要最小限の葬儀を実施することが可能です。
葬儀にかかる費用と内訳を考えると、今回紹介した補助金ですべてはまかなえません。葬儀費用を捻出できるか心配なら、事前の準備をはじめておくと安心。どのような葬儀にしたいのか具体的に話し合い、条件にあう斎場・葬儀社から見積もりをとって比較検討することで、価格をおさえながら満足いく葬儀を実現できます。
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「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」データ利用について
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