遺産相続は、相続人となる配偶者や兄弟姉妹、子どもなどの間でトラブルに発展する可能性があります。どんなに家族や兄弟の仲が良くても、お金が絡むと険悪になりかねません。自分の死後、遺族が揉めないためにも遺言や遺産に関する基礎知識を学んでおきましょう。
この記事では、知っておきたい遺産相続の基礎知識を紹介します。
目次
遺産相続の対象となる遺産は?

遺産相続の対象は、故人が専属で背負っていた財産や権利義務です。例えば、不動産や預貯金、地位などの権利や債務返済の義務も含まれます。
故人名義となっている財産は、基本的にはマイナスも含めて全て相続対象の遺産です。問題になる財産として、生命保険金と死亡退職金が挙げられます。
生命保険金は受取人固有の財産になり、遺産分割の対象ではありません。
また死亡退職金は遺族の生活保障として受け取るなら相続財産ではありませんが、賃金の後払いと位置付けるなら相続対象になります。受取人によって相続対象になるかどうかが変わってきますので注意しましょう。
長男・次男で遺産相続に差はあるの?
兄弟、姉妹も含めて子供はすべて法的に平等です。以前は、家督を相続するために長男がすべて継ぐのが当たり前でした。しかし現代では、遺産は法に則った比率で相続人が分け合うのが普通です。
法的な分配率は配偶者が全財産の1/2で、子供は全員で1/2になります。子供は全員で1/2の財産を分けるので、兄弟姉妹が多いほど額は小さくなります。例えば、1千万の遺産に対し、配偶者が5百万で、子供が2人なら1人当たり250万が分配金となります。
法的には、長男だから、次男だからと優遇されることはありませんが、居住している遺族がいたり不動産があったりすると、問題が複雑化するケースがあります。
相続放棄とは?限定承認との違いと手続き
相続放棄とは
相続が発生すると、家や車、預金といったプラス資産だけでなく、借金をはじめとするマイナス資産も同時に引き継がなければなりません。もし何も手続きをしなければ、マイナス資産を支払う義務が発生します。借金があまりに多い場合の救済措置として、一切の財産の承継を否定する「相続放棄」という手続きが用意されています。
相続放棄とは、相続資産や権利・義務の承継を拒否する意思表示のこと。相続放棄をすると、相続財産のすべてを引き継がずに放棄できます。ただし、マイナス資産だけでなくプラス資産も相続できなくなり、後日撤回することも不可能なので注意してください。
限定承認とは
マイナス資産を相続しない手段は、相続放棄だけではありません。相続放棄は、プラス資産もマイナス資産もすべてを放棄して、財産の一切を相続しない方法です。
一方、「限定承認」というプラス資産の範囲内でマイナス資産を承継する方法もあります。
限定承認は、相続財産が最終的にプラスかマイナスか分からない場合に有効な手段です。マイナスがプラスを上回る場合は、足りない部分を支払う必要はありません。
限定承認は、相続の開始を知ってから3か月以内に相続人全員で行いますが、相続人のうち1人でも同意しない人がいる場合にはできないので注意してください。
相続放棄の手順と期日
相続放棄の期限は、相続人が被相続人の死亡した事実を知り、かつ自分が相続人であることを知った時から3か月以内です。
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行います。相続放棄には期限があるので、相続が開始したら早めに相続財産を調査して、相続放棄するか否かを決めておかなければなりません。期限を過ぎると、相続放棄できなくなります。
遺産相続の基礎控除額と計算方法

相続税には基礎控除があり、財産の額がそれ以下であれば税金を払う必要はありません。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算します(2024年6月現在)。
たとえば父親が亡くなって、母親と子供2人が相続人であれば、法定相続人数は3人となります。その場合の基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。つまり財産が4,800万円以上あれば相続税がかかり、申告および納税をしなければなりません。
相続税の納付期限はいつまで?死亡から10か月以内
相続税の確定申告は被相続人が死亡した日から10か月が期限です。遺産相続に所得税は発生しませんが、収益不動産などが含まれる遺産相続では、被相続人が支払うべきだった所得税を相続人が申告します。
これは所得税における「準確定申告」と呼ばれ、法定相続人に該当する全ての人の連名で行わなければなりません。準確定申告は、被相続人の死亡から4か月が期限です。準確定申告は相続税の申告の際に相続財産の債務となり、控除の対象となります。
相続税の納付期限は、申告期限と同様に被相続人が死亡してから10か月です。相続税は被相続人から受け取った遺産から算出されますが、遺産を受け取った相続人すべてに対して該当します。遺産分割協議が長引き、10か月の期限内に相続税納付が行えない場合は、期限の猶予を許可を申告する必要があります。また、期限内に申告・納付を済ませたい場合は、遺産の法定相続分から暫定の申告をし、遺産分割協議が終了してから修正申告を行ってください。
相続税の納付で注意したいのは、遺産となる財産が現金ではなく物でも申請書によって許可を受ける必要があることです。この場合も10か月が申告・納付期限となり、迅速な対応が求められます。
相続トラブルを避けるためのポイント

トラブルにならないためには、平等に相続を行うのが重要です。一番難しいポイントですが、居住者のいる不動産など、お金に換えにくいものは生前のうちに誰が相続するのか承認を得るのが良いでしょう。
預貯金や株式など現金化しやすい物は平等に分けたり、介護に貢献した人に多めにしたり、一周忌や墓の維持費など、今後の祭祀費用で必要な分を考慮して配分したりするなど、遺言で明確に指示しておきます。
また、どんなに努力しても相続人が納得するとは限りません。残された家族が遺産で争わないように気持ちを表した手紙を遺言書に添えるのもいいでしょう。生前に家族会議を開いて、自分の意思を伝えておくのも大切です。
遺産相続の専門家や手続き代行サービスを活用する
遺産相続手続き代行サービスとは、遺産相続に関する手続きを相続人に代わって行うサービスのこと。専門家に任せた方が、手続きの短縮化やトラブルの回避・軽減ができ、相続人の負担を物理的にも精神的にも軽くできます。
自分でやろうとすると必要書類がなかったり、記載事項に不備が生じたりと、細かなミスが多くなりがち。ミスを防ぐためにも、専門家のサポートを受けた方が良いでしょう。
料金はどのくらい?
遺産相続手続き代行サービスや専門家によって料金体系は異なりますが、相続財産の総額によって料金が決められることが多いようです。相続財産の金額が大きければ、それだけ支払う報酬も高くなります。
料金の幅も相続財産の額によって20万円から100万円と金額を決めている業者もあれば、相続財産額に応じた料率を設定している業者もあります。
遺産相続のご相談なら「いい相続」へ
遺産相続はお金が絡むため、家族や親族間で揉めたりトラブルに発展したりする方は少なくありません。残されたご遺族のためにも、生前から遺産の整理を行ったり分配を考えたり、遺言を書いたり、相続の準備を進めておきましょう。
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