君と冒険した世界で

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今は亡き親戚へ

ようちゃん、あなたと過ごした時間は私の宝物だよ。

あなたがこの世からいなくなって一年。

あなたと行った場所や、過ごした時間を思うたびに、煌めきのような思い出が蘇るよ。

私のたった四ヵ月前に生まれて、たくさんの同じ時間を過ごしたあなたは、人生の先輩というか、同伴者のような存在だったよ。

ようちゃんと過ごした時間はいつも小さな冒険で、魔法のように楽しかった。

五歳か六歳くらいの頃、庭に出したテントの中で秘密の話をしたね。

隣の神社の古い手洗い場の中でお風呂ごっこをしたり、蓮華の花を摘んで遊んだね。

信州の川では、小学校の音楽で習った歌を三曲も替え歌にしたね。

「ソーメン」の歌を作ってにゅるにゅるした踊りをしたのは傑作で、天才だと思った。

川から拾ってきた石に、悪霊が憑いていることを疑って、食塩まみれにしたよね。

この間、名古屋の栄で買い物をしていたら、ようちゃんと初めて買い物に行ったときのことを思い出したよ。田舎の小学生だった私を、ようちゃんがいっしょに栄に連れて行ってくれたね。

あのときの私にとって名古屋は異世界みたいで、地下鉄の乗換にどきどきしたよ。

その異世界で、手を取り合って、たくさんのお店に行ったね。ゴミゴミした都会も、どこで降りたらいいのかわからない地下鉄も、ようちゃんといっしょにいたら怖くなかった。

たった四ヵ月年上なだけなのに、私よりもずっと華奢で可愛いのに、図体ばかりデカい私の先を歩いて、いつもどこにでも連れて行ってくれた。

大人になってもそれは変わらなくて。

ずっと、おばあちゃんになっても、また会って笑えると思っていたんだ。

だけど、この世界からようちゃんは急にいなくなってしまったね。

私はずっと、死ぬことはこわいことだと思っていたけど、今はようちゃんが先を歩いてくれたからもうこわくないよ。

ようちゃんがいなくなったこの世界だけど、思い出だけはキラキラ輝いているよ。

ありがとう。また会おう。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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