今は亡き夫へ
幸治さん、あなたが亡くなって、そろそろ五年になろうとしています。
あまりにも突然の死だったので、私にとっては、まだ昨日の出来事のようです。
私以上にあなた自身が、自分の死を受け入れていないのでは? そんな気がします。
ありふれた日常から、一夜にして悲しみにくれた日々へと変わりました。何度あなたを怨んだことか。これからの人生を、どんな風に過ごしたらよいのか、途方にくれました。
亡くなる二週間前に、ゴルフで一緒だった仲間から、私のことを話していたと、後から聞きました。
「仕事が休みの日に、お袋の介護に通ってくれ、妻にはとても感謝している」と。
反面私は、日々あなたに叱咤激励、憎まれ口はきいても、優しい言葉、励ましの言葉、感謝の言葉もかけられなかったことが、とても悔まれます。
あなたが亡くなってから、私は周りの人々に支えられ生きています。
人の温かさを素直に感謝できるようになりました。
この「素直な心」は、あなたが私にくれた最後の贈り物ですね。
今年も、ベランダ越しに見える三本の桜が、満開になりました。
「家に居ながら花見ができる」と、あなたはこの眺めがいたくお気に入りで、自慢でもありましたね。
昨年は一人でこの桜を見る淋しさに耐えかね、「亡き夫の自慢の眺めです。一人で見るのは淋しいから、皆さんも見てください」と、スマートフォンで写真をとり、交流サイトに投稿しました。
思いがけず数人から、優しさあふれるコメントが寄せられました。
「一緒に見させてね」「一人じゃないよ。ご主人も一緒だよ」
そんなコメントを読み、また泣いてしまいました。
満開の桜を見ると、あなたを思いだし涙が出ます。
でも、「今年はどんな気持ちで桜を眺められるかしら」と、思えるようになりました。
私にも少しずつ春がおとずれてきたような気がしています。
毎年咲き続けてくれる桜も、きっと、あなたからの贈り物ですね。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。