今は亡き夫へ
あなたが天国に旅立ってから七年になります。
入退院を繰り返しながらも、愚痴一つ言わず、最後まで、夫として、父親として、頑張ってくれましたね。
二人の子供が生まれた時、「お前達にひもじい思いはさせない」と断言したあなたは、一生約束を守り通してくれました。
結婚して三十八年間、私はそんなあなたに頼りっぱなしで、何の恩返しもしないまま、お別れをしてしまいました。
亡くなる前日、私達に向かって弱々しい声で、「ごめんね、ありがとう」と、あなたに言われた時、私達は声を上げて泣きました。
その声は今も耳にしっかりと残っています。
時々夢に出てくるあなたは、相変わらず子煩悩なパパのままです。
この七年間、毎日料理を作っては、小さな器に並べて、お飯ままごと事の様に仏壇に供え、手を合わせて、感謝の気持ちを伝えることが私の日課になりました。
今度は私があなたに言います。
「ごめんね、ありがとう」と。
毎月、あなたが旅立った日に、お墓参りに行っては、近況を報告して帰って来ます。
私は、あなたがお気に入りのこの家と、命をかけて可愛がってくれた子供達を守って行きます。安心して下さい。
いずれ私があなたの側に行った時、照れないで迎えて下さいね。
そしてゆっくりお話しましょうね。
その日まで、さようなら。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。