友情がつくった修学旅行

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今は亡き友へ

修学旅行の一ヵ月前、君のお母さんが職員室の私を訪ねて来て、「純也を修学旅行へ連れて行って下さい」と涙ながらにお願いされた。

実は、君は重度の小児喘息のため、学年会で参加を中止と決定されていた。その理由は、旅行中に発作によって生命の危険もあったからだ。しかし、君のお母さんは、君の生命があと二年ぐらいという診断を病院の先生に告げられ、しかも、君が小学校入学以来、中学三年になるまで、遠足も、林間学校も病気のため一度も参加できなかったので、修学旅行だけでも参加させたいと話した。

翌日、ホームルームで、君のことを話したら、級友たちが「純也を旅行に連れて行く」と立ち上がった。校長先生を説得するために養護の安子先生にも話した。そして、君の修学旅行は、級友たちの友情に支えられ実現した。

しかし、旅行前日の体育館での説明会途中、君が発作で保健室に担ぎ込まれた時は、私は不安だった。しかし、級友たちの友情は崩れなかった。

三日間の旅行、君は食事係として活躍し元気だった。校門で旅行団の帰校を待っていた君のお母さんは号泣した。

しかし、残念だったのは、翌年、高校一年の君は、天国へ駆け去ってしまった。病院のベッドの枕元に修学旅行の写真が残っていたのには悔しかった。余りにも若い君の死が悔しくて級友も泣いた。

君の級友はもう五十過ぎの中年になった。同窓会では、今も君との楽しかった三日間の修学旅行の想い出が語られる。そして、その中に、必ず純也君がいる。

川崎の工場街に緑も増え、空気も澄んできた。今でも公害の中で死んだ君が悔しい。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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