今は亡き貴男に守られて

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今は亡き夫へ

貴男が逝って十ヵ月になります。突然のことで何も聞けず、何も伝えられぬまま永久の別れとなってしまいましたね。私は今なんとか生きています。

ところで三月のある日、女子大生の御嬢さんから電話をもらいました。「三年前、駐輪場でお世話になった者ですが、おじさんが亡くなったことを聞きましたのでお参りしたいのです」と。

「三年も前なら、もうお気持ちだけで十分です」。私はそう言いましたが、どうしてもと言われお参りしていただきました。

三月十一日の十時の事です。テレビで知っている、今時の女子大生を想像していたのですが、初々しい清楚な感じの人でした。「おじさんが甘いもの好きだったから」とアルバイト先の美味しい和菓子を持って。お菓子を戴きながら、なぜか話しもはずみました。家では無愛想な貴男も駐輪場では、やさしい親切なおじさんだったのですね。同僚の人からも真面目で几帳面だったと聞いています。

その日私は、日帰りのバス旅行に誘われていましたが行きませんでした。行った人達は未曾有の大地震に見舞われたのです。地面が揺れて道路は大渋滞となり、帰ることもできずにやむ無く宿泊所で一泊したとか。それも頼み込んでようやく泊まれたのだそうです。

埼玉ではそんな程度ですみましたが、東北地方は地震と大津波が押し寄せ、人も建物も何もかもさらっていきました。見たこともない光景です。突然貴男が逝って心細い毎日でしたが、あの時ほど一人が怖いと思ったことはありませんでした。私が外出せず帰宅難民にならずにすんだのは、あの御嬢さんが来てくれたお陰、貴男のお陰です。一人になった時もそうですが、地震後多くの人の死に直面して、生と死について考えました。その時が来るまで、どう生きればいいのかと。

この先があるのかどうか分からないから、生きていけるのかもしれません。

もう少し生きたいので、見守っていてくださいね。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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