今は亡き母へ
お母さんを看取り、早、二十三年が経とうとしています。私もとうとうお母さんが亡くなった年齢と同じになりました。
何ひとつ家の事ができなかった私ですが、何とか結婚して母になる事ができました。
お母さんとの別れがあんなに早く訪れるとは思ってなかったので、亡くなって、お母さんが私にとってどれだけ必要な人で“お母さんが生きていてくれたら……”、“こんな事教えてもらっておけばよかった”と思う事が何度もありました。
お布団を干してくれて気持ちよく寝る事が出来た事。
片づけが苦手な私が“友達を連れて帰るね”と電話をすると、私が恥をかかないようにと帰るまでに部屋をきれいにしてくれた事。
そしておいしい食事を毎日作ってくれた事。
私はまだまだ自分の娘にお母さんが私にしてくれた事のわずかしかできてないかもしれません。
でも娘は“ママのオムライスが大好き”とよくリクエストしてくれます。
オムライス……。お母さんが作ってくれたオムライスが私も大好きでした。
味付けも作り方もシンプルで覚えやすくて、オムライスだけはお母さんと同じようにできるようです。
私も娘にもっとおいしい食事を作ってあげたい。
お母さんの作る食事をもっと教わっておくべきでした。
娘は五歳ですが、いろいろ台所の事などお手伝いをしてくれます。
怪我の心配でなかなか料理までは踏み切れませんが、少しずつ私のできる範囲で娘に料理を教えていこうかなと考えています。
お母さんは私の夢の中で、自分の孫の服をたたんだり、まだ一年生でもないのにランドセルを買いにいったり、おばあちゃんらしい事をたくさんしてくれていますね。
お母さんが存命されていたら、きっと孫をとても可愛がってくれたんでしょうね。
いつかあなたの孫娘がオムライスを作れる日が来るでしょう。
親、子、孫と三世代が、同じおいしいオムライスだと、お母さんも私もうれしいでしょうね。楽しみですね。
娘がオムライスを作れる様になったら最初にお母さんにお供えさせて頂きます。
おいしかったら天国からあなたの孫娘をほめてあげて下さいね。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。