料理が得意ではなかった母さん。もう一度、その個性的な料理を口にしたい

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今は亡き母へ

美味しかったよ、母さん

ボクの古い記憶の一つに亡くなった母の作った野菜炒めがあります。

今であれば、「どうしたらこんなに不味い料理が作れるのか」と呆れてしまうほどに不味い料理なのですが、当時は不味いながらも、もっとも食事はそれしかないので、嫌々ながらも不味い料理を口にしていました。

他人の作った料理と比較することもできず、料理とは「こんなものなんだろう」と、ある意味諦めていたのかもしれません。

当時の母は、毎日遅くまで仕事をしていて忙しく、食を満たすことだけで一杯一杯で、味にまで気が廻らなかったのだと思います。そのため、中学生になって初めて入った食堂で食べた料理がとても美味しく感じられました。あまりに美味しくて、思わずハシャイでしまった記憶が残っています。

もっとも、食堂やレストランで出される料理と母のそれとを比べるのも酷かとも思いますが、こんなボクのあけすけな姿を見た母はとても傷ついてしまったのだと思います。

そんなある意味味音痴な母に育てられたからかもしれませんが、ボクの奥さんは料理が上手な人です。彼女は料理学校にも通っていたようで、和食、中華、洋食と、気取った料理から庶民的なものまで幅広く、そして美味しく作ることができます。毎日、美味しい料理を食べることができ、今、ボクはとても幸せです。

でも、時々、思い出してしまうんですね。

懐かしいと言うか、馴染んでしまった味というか、個性的な母の料理のことを。それが、叶わないことだからこそ、こんなふうに思ってしまうのかもしれません。

もう一度、母の個性的な料理を口にして、今度こそ。「美味しかったよ、母さん。ありがとう」

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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