旅支度とは何?仏衣の意味や宗派による違い

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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  • 旅支度とは、故人が無事に来世へ到着できるよう支度を整えること
  • 旅支度の衣服は、日常と反対の状態にする「逆さ事」のマナーが多い
  • 仏教では旅支度を行うのが基本だが、浄土真宗では必要ないとされている

「旅支度」とは、仏式の葬儀でよく使われる言葉です。仏教では、亡くなられた方は来世へと旅立ち、その道のりは四十九日間続くとされています。そこで、故人が無事に来世へ到着できるよう、遺族が旅の支度をするのです。

旅支度では、仏衣や杖、足袋など、さまざまなものを身につけますが、そのひとつひとつに意味があります。今回はそれらについて詳しく紹介していきます。

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旅支度の意味とは

仏教の教えでは、人が亡くなると現世を離れて次の生を受けるまで、中陰と呼ばれる期間があるとされています。この期間は49日間あり、旅をしながらあの世へと向かうと考えられています。旅は、暗く険しい死出の山を越えるところから始まり、途中、賽の河原や三途の川を渡りながら進みます。旅の間には7日ごと、7回の裁きがあり、生前の行いの善し悪しに応じて、転生先の六道が決められます。この来世までの旅を無事に終えることができるよう、遺族が旅の支度を整えます。

旅支度に必要な道具は?仏衣や足袋、頭陀袋など

旅支度には、揃えるべきものがいくつかあります。そのひとつひとつに意味があり、仏事に関するマナーと言えます。特に多く見られるマナーが、「逆さ事」です。これは、不幸を避けるという意味を込めて、あえて日常とは反対の状態にすることです。こちらも合わせてご紹介していきます。

仏衣

亡くなられた方に着せる着物のことで、白装束とも呼ばれます。納棺するときに着がえますが、着付けは左前で行います。通常は右前で着ますが、あえて反対にして不幸が重なることを避ける意味があります。

足袋

白い足袋を左右逆にして履かせます。また、足袋には紐がついていますが、結び方は縦結びにします。

脚絆

 

すねには脚絆を付けます。すねを守り、疲れにくくするという役割があります。脚絆には紐が2ヵ所ほどついていますが、これも縦結びにします。

手甲

手元に手甲を付けます。やはり紐は縦結びです。

頭陀袋

頭陀袋は、僧侶が修行や托鉢に出るときに使用する袋で、経文やお布施を入れるものです。旅支度では、ここに三途の川の渡し賃である六文銭を入れます。現代では六文銭を用意することは難しいので、代わりに六文銭を印刷した紙や、持たせたい金額を書いた紙、あるいは本物の紙幣を入れます。

頭陀袋は頭から通して首に掛け、胸元に置きます。

数珠

数珠は持っているだけでも功徳があるとされています。亡くなられた方の愛用していたものか、葬儀社などが準備した数珠を持たせます。

天冠

亡くなられた方の額に付ける三角形の布です。その由来には「閻魔大王に失礼にならないように正装させたい」「冠を付けて高貴な身なりでおくってあげたい」など諸説あります。

現代では直接額に付けず、編み笠に付けて棺の中へ納めるのが一般的です。

なお、地域によってはこの天冠を葬儀の際に遺族や参列者が身に着けるという風習のあるところもあります。

編み笠

現代では頭にかぶらせず、天冠と一緒に枕元に添えて棺の中に納めます。

草履

本来は足に履かせるものですが、直接履かせることが難しいので、足元に添えて棺の中に納めます。

亡くなられた方の利き手に添えて、棺の中に納めます。愛用していた杖を持たせたいという希望もありますが、材質によっては難しい場合があります。葬儀社などが用意する火葬用の杖を使うのが無難です。

 

以上、旅支度に必要なものを紹介しました。

訃報は突然、訪れます。通夜や葬儀の準備をしながら、旅支度の道具をひとつひとつ用意するのは大変です。揃え忘れや、マナーにかなっていない物を揃えてしまう恐れもあります。必要な道具はすべて葬儀社で準備可能ですので、お任せるのが安心です。

旅支度の仏衣が白い理由

仏衣がなぜ白いかは諸説ありますが、日本では「紅白」のように、赤と白との対に特別な意味を見出します。赤は「赤ちゃん」のように誕生を表し、白は「死や別れ」を表します。古くは日本では喪服の色も白とされていました。

このほか巡礼の白い衣装に倣って、「世俗に染まらず純粋な気持ちで旅をする」という意味だとする説もあります。

旅支度の仏衣の変化

昔は亡くなられた方と血縁関係にある女性が、手間暇をかけて縫って用意していました。しかし、現代では出来合いのものを準備されることが多いでしょう。

仏衣そのものにも変化が見られています。一般的な白い着物ではなく、水色や薄い紫などの色味があるものや、デザイン性の高い仏衣も販売されています。また、亡くなられた方の愛用していた洋服を着せるケースも増えています。ただそうした洋服を実際に着せることが難しい場合は、仏衣を着せたのちに、上から掛けるスタイルも取られています。

浄土真宗では旅支度を行わない

仏教には、いくつかの宗派があり、多くの宗派で来世への旅支度を行います。しかし、浄土真宗の教えでは、亡くなられた方は阿弥陀様の導きによってすぐに極楽浄土へ向かうとされています。来世への旅に出ないため、旅支度は必要ないとされています。

故人の旅立ちに欠かせない旅支度

ここまで「旅支度」について紹介しました。訃報は突然に訪れることが多く、悲しみに暮れて心の準備ができないまま、通夜や葬儀の式典が臨むことが多々あります。しかし、故人の新たな旅立ちのためにも、遺族としてできる限りの準備をしてあげたいという思いもあるでしょう。どのようにしたらよいかお悩みの方がいらしたら、ぜひ、いい葬儀までお気軽にお問い合わせください。

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