認定死亡とは、事故や災害などで生死が不明である場合、法律上死亡したと推定する制度です。この記事では、認定死亡の制度がなぜ必要で、死亡が認定されると何が起こるのかについて説明します。また、生死不明の場合に亡くなったものとする制度である失踪宣告との違いや、遺体がない状態で葬儀を行うことになる場合の注意すべき点なども解説します。
認定死亡とは何か?
一般的に、人が亡くなると病院などで医師が死亡の確認をします。しかし、大きな事故や災害が起きた場合、遺体が見つからないなどの理由で具体的に死亡の確認ができないこともあります。認定死亡とは、このような状況で生死が不明となった人を、法律的に亡くなったものとして扱う制度です。
認定死亡は、戸籍法第89条がその根拠になっています。例えば、洋上で起きた飛行機事故などでは、死亡した可能性が限りなく高くても、遺体を回収できないことがあります。このような場合に、認定死亡の制度が使われ、関係する官公庁がその認定を行います。
認定死亡の運用
認定死亡の詳しい要件について、戸籍法では特に定められていません。戸籍法では、「水難、火災その他の事変によって死亡した者」とだけ記載されており、拡大解釈すればさまざまなケースが「その他の事変」に入ってしまいます。
そのため実際には、認定を行うにあたっては、行政当局などが個々にその判断をしています。例えば海上保安庁では、行方不明者の親族から死亡認定の希望があり死亡を確認できる証拠があるか、周囲の状況から生存が考えらず海難から3ヵ月が経っている、などを定め、慎重に運用しています。
認定死亡が必要な理由とは
一般に死亡確認がされた場合は、即座に医師から死亡診断書などが渡され、すぐに役所などでの手続きを始めることができます。しかし生死が不明の場合、遺された人の法律的な立場が不明確になってしまいます。
例えば、遺された配偶者が再婚できない、遺産相続ができない、受取人が生命保険の保険金を受け取れない、などの問題が発生します。これらを避けるため、認定死亡という制度が必要となるのです。
認定死亡の結果起こること
死亡認定を受けることで、残された人の法律的な立場が明確になり、一般的に死亡した場合と同じように各種の手続きを行えるようになります。例えば、遺産相続ができる、生命保険金の受け取りができるなどです。
認定死亡の場合の葬儀
認定死亡を受けた場合、通常の葬儀と異なり遺体のない状態で葬儀を行うことになります。実際には火葬がないことを除けば、通常の葬儀と変わることなく、式を行うことができます。ただし火葬を行わない場合には使用することのできない葬儀式場もあるので、事前確認が必要です。
また、身内だけで仮葬儀を行い、本葬儀は遺体が見つかってから行う場合もあります。仮葬儀には決まった形式はなく、必ずやらなくてはならない儀式でもありません。遺族の心情や負担に応じて決めるのが一般的です。なお、認定死亡では遺骨もないため、骨壺に遺品などを収めることもあります。
認定死亡を受けた後で生存が確認できたら
認定死亡を受けた後で、実は死亡したと思っていた人の生存が分かった場合、その人の戸籍は自動的に訂正されます。その場合、財産を相続した人はそれを返却する必要があります。また、後になって正確な死亡日時が判明した場合も、戸籍は自動的に訂正されます。
認定死亡と類似の制度である失踪宣告とその違い
生死不明だが死亡の確認ができない場合、その人物を亡くなったことにできる法律上の制度として、認定死亡の他に、失踪宣言があります。ここではこの2つの制度の異なる点を見て行きます
根拠となる法律の違い
認定死亡は戸籍法が根拠ですが、失踪宣告は民法で定められた制度です。
認定死亡は、対象となる人物の死亡が確実な時に適用されます。亡くなった方の遺体が確認できず死亡届の手続きができない際に、戸籍の上で死亡と扱う制度です。
それに対して失踪宣告は、その名の通り、その人が失踪して連絡が取れなくなり、生死が不明な時に適用されます。
手続きの違い
認定死亡は、官公庁が死亡を認定し、市町村長に報告することで戸籍上の死亡となります。それに対し失踪宣告は、家庭裁判所での手続きを経て決定されます。
認定死亡までの期間の違い
なお、失踪宣告は、失踪の状況に応じて二種類に分けられます。
ひとつは、生死不明となってから7年が経った時点で家庭裁判所が宣告を行う「普通失踪」。もうひとつは、大規模な事故に巻き込まれるなどして生死不明になり、1年以上経っても連絡が取れない場合に適用される「特別失踪」です。
民法第30条では、特別失踪に該当する人を「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者」と定めており、その状況に応じて、戦争失踪、船舶失踪、危難失踪と呼ばれることもあります。
それに対して認定死亡では、戸籍法上、特にそうした期間は定められていません。実際には、関係する各官庁が独自に運用をしていますが、概ね3ヵ月程度で死亡の認定を行っているようです。
後から生存が確認されたときの違い
認定死亡では死亡したとされた本人の生存が後から確認された場合、戸籍が自動的に訂正されます。しかし失踪宣告では、後から失踪者本人の生存が確認されても自動的には無効になりません。宣告を取消すための裁判が必要になります。
失踪の場合、死亡しているとみなされるため、本人や利害関係人の請求によって失踪宣告を取り消す必要があるのです。
まとめ
この記事では、認定死亡という制度についてご説明しました。認定死亡は、災害や事故などで亡くなったことがほぼ確実ながら遺体が確認できない時に、法律で死亡したものとして扱い、その後の手続きを可能にする制度です。
認定死亡の場合、お葬式も遺体がないことが前提となります。認定死亡による葬式について不安に思われる方や葬儀についてご相談されたい方は、お気軽にご連絡ください。