葬具とは、葬儀で使われる道具のことで、葬儀の場でも使われるようになった葬列で使われていた道具や仏壇を飾る仏具が変形したものの総称です。素材は白木や紙などが用いられることが多くなっています。
葬列を起源とする葬具には、死者を守るため、浄土への導きを助けるなどの意味が込められています。仏具から変化した葬具には、仏壇を飾り付ける意味があります。このように葬具は、現在の葬儀に合わせて変化を遂げた道具と言えるでしょう。
葬具とは?
葬具は、葬儀で使われる道具のことです。葬具のはじまりは、野辺の送りに使われた野道具(のどうぐ)や、仏教の儀式で用いられる仏具で、これらが葬儀の変化に合わせて形を変えた結果、現在の葬具の姿になったとされています。
野辺の送りとは?
野辺の送りとは、葬送のことで、近親者たちが列をなして火葬場・墓地へ故人を見送る儀式のことです。野辺の送りは地域によって隊列が異なるという特徴があります。一般的な葬列では列の先頭に松明や行灯が掲げられ、松明の明かりによって魔を祓っています。
清められた道を行灯、6本のろうそくを持った六道が続き、故人の名前などを記した銘旗、亡くなった方の魂を守る龍頭、仏教の教えを書いた四旗、小銭を入れた花籠などが列をなします。そして、切れ目を入れた白い紙を棒に巻き付けた四華花(しかばな)や、香炉(こうろ)、膳、位牌(いはい)、天蓋(てんがい)、棺などの順で続きます。
葬列での役割は、故人との間柄で決まり、位牌は喪主、供えた飯碗は喪主の妻が手にしていたとされています。
しかし、葬列の規模によって故人の社会的な地位などが示されるということから、葬列を組むために人を雇うなど、時代とともに葬列は派手になっていったようで、遺族の経済的な負担は大きなものとなりました。また、都市部では市電や車などが発達するようになると、長い行列で練り歩くことが交通の妨げになるなどの理由で、野辺送りは徐々に廃れていきます。現在では霊柩車が使われるため、見られなくなってきている儀式のひとつです。
葬具に込められた意味
葬具は元々、野辺の送りで使われていた道具でした。そのため、葬具には死者を守ったり、極楽浄土を願ったりといった意味が込められています。現代の葬列では、斎場から火葬場へ送り出す出棺などに限って祭壇を飾る目的で葬具を使用するにとどまっていますが、いまも葬儀に使われ続けています。
葬具の種類(野道具が変化した葬具)
葬具店で取り扱う葬具には白木や紙が用いられています。金具類が用いられることは、ほとんどありません。では、現在使われている葬具には、どのようなものがあるのでしょうか。
現代に合わせて変化を遂げた葬具を、野道具が変化した葬具と仏具が変化した葬具に分けて紹介します。
また、形が変化していない物であっても使う場所が変わっていることがあるため、合わせて紹介します。葬儀に使われる野道具は次のような変化を遂げています。
松明(たいまつ)
昔は、葬列の先頭を行き、進む道を清める意味や、火葬の際に故人に引導を渡すために使われていました。現在は、い草や葦などを束ねたものを祭壇前の机に設置したり、松明に見立てた葬具を使用したりしています。また、松明に込められる意味も亡くなった方に引導を渡すことに限られました。葬儀の際に投げたり、手に持って回したりして死者を浄土へと導きます。
四本幡(しほんはた)
かつては仏教の教えを記した旗を棺のまわりに配置したり、埋葬する墓の四隅に立てたりして魔を祓っていました。使い方は現在でも変わりはありません。ただし、使用する場所が葬儀会場に限られてるようになりました。安置した棺の上や、四隅に置いたり、棺の前に並べたりして、出棺と一緒に送り出します。
四華花(しかばな)
四華花は刻みを入れた白い紙を、棒や竹串に巻き付けてつくられたものを4本使用します。白い紙以外にも、銀・金の紙が用いられることがあります。かつては、親族などが葬列の際に手に持つものとされ、墓地の四隅に立てていました。
現在では、祭壇や経机のまわりに立てられます。ちなみに4本の白い花を用意する理由は、お釈迦様の死が関係しています。お釈迦様が亡くなり涅槃(ねはん)に入ることを沙羅双樹(さらそうじゅ)が悲しみ、4本の花が白く変わったと言われており、四華花の由来になっています。
葬具の種類(仏具が変化した葬具)
ここでは仏具が変化した葬具について紹介します。
位牌(いはい)
仏具が変化した葬具では位牌が代表的です。
位牌は、故人の魂を宿した仏具で、以前は葬列の際に喪主によって火葬場・墓地などへ運ばれていました(野位牌)。現在は、霊柩車の普及によって葬儀会場の祭壇や葬儀後の自宅に祀る程度にとどまっています。
忌引明けまでの期間にのみ使用されるため、多くの場合位牌には簡易な素材である白木が用いられています。
香炉(こうろ)
香炉は、お香を焚くための入れ物のことです。三具足や五具足のひとつで、仏壇を飾る基本の仏具とされています。葬列を行っていたときも参列者が香炉を持っていました。現在では、葬儀会場の祭壇や火葬場で用いられています。
まとめ
葬儀に使われる葬具について紹介しました。葬具は現代の様式に合わせて、 野道具や仏具が姿や用途が変わったものです。葬列を必要としなくなった現代の葬儀でも、必要な道具は変わりません。また、現代で使用されている葬具の種類も地域によって違いがあります。葬具について詳しい情報を知りたい方や葬儀を検討されている方は、お気軽にご相談ください。