墓埋法などの葬儀に関連したさまざまな法律

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

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葬儀や葬送とは、遺族や故人にとって大切な行事です。とはいえ、私的な思いなどを優先するあまり、法律を無視して構わないというわけではありません。葬儀・葬送についても、その全般がさまざまな法律により規定されています。例えば、埋葬については環境法の一種の墓埋法により、埋葬の場所から方法の細部にまで定めがあります。刑法から民法などにまで及ぶ葬儀・葬送関連法について、ここでご紹介します。

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葬儀や葬送に関するさまざまな法律

法治主義の日本では、葬儀に関連してもさまざまな法律で規制されています。
まず、死亡に際しては戸籍法において、家族や近親者による死亡届の提出が義務づけられています。

具体的には、届け出義務者は当該者の死亡の事実を知った日から7日以内に、また海外で知った場合は3ヵ月以内に死亡の届出を行わなければなりません。

葬送に際しては、民法で相続や遺言についての定めがあり、墓や仏壇など「祖先の祭祀を主宰すべき者の承継」の項を尊重しなければなりません。また、墓地、埋葬等に関する法律に従う必要もあります。

葬儀に関しては、憲法第25条で保障する「国民の生存権」の観点から、生活保護法で葬儀の円滑な実施を援助する仕組みを設けています。死体の検案や運搬、火葬や埋葬、納骨などの葬祭に関わり、費用の不足については扶助を受けることができます。

一方、葬儀・葬送をスムーズに行うための法律として、刑法第24章では「礼拝所及び墳墓に関する罪」を定めています。また死因の究明に関連して、刑事訴訟法や死体解剖保存法では、墳墓の発掘や死体の解剖が許されています。解剖後は角膜や一部の臓器を移植することが認められています。

特殊なケースですが、行政法に分類される船員法では第15条で、一定の条件下での水葬が認められています。

葬儀・葬送の方法などを定める墓埋法

葬儀や葬祭に直接関係する法律として、「墓地、埋葬等に関する法律」があります。公衆衛生などの観点から環境法のひとつとして定められました。略して、「墓埋法(ぼまいほう)」や「埋葬法(まいそうほう)」と呼ばれ、墓地や納骨堂あるいは火葬場の管理や埋葬方法などについて規定しています。

同法第2条では、埋葬をはじめ火葬、改葬、墳墓、墓地、納骨堂、火葬場の定義やその方法を記しています。墓地や納骨堂、火葬場を設けるには、都道府県知事の許可を受けなければなりません。第3条では、例外を除き、埋葬や火葬は死亡また死産後24時間を経過したのちでなければならないと規定しています。

第4条は第2条の規定を受け、墓地以外での埋葬や焼骨の禁止、火葬場以外での火葬の禁止をうたっています。また第5条では、火葬や改葬を行う者は厚生省令に従い、村長や区長の許可を受けなければならないとしています。

ちなみに、最近関心を集めている散骨ですが、従来は第4条の規定や刑法190条の遺骨遺棄罪を根拠に禁止されてきました。宗教的感情などを考慮する立場から、節度ある範囲であれば問題はないというのが、近年の法務省の見解です。

葬儀や葬送を冒すことを禁じる刑法規定

葬儀や葬送に関連して、それを冒す行為には刑法が適用されることもあります。中でも罰が厳しいのは、葬儀や葬送の妨害を禁じ、葬儀・葬送を保護する法律でしょう。

例えば、刑法第24章には「礼拝所及び墳墓に関する罪」との規定があります。神祠や仏堂、墓所などの礼拝所に対し、不特定多数の人が不敬だと感じる行為を行った場合、6ヵ月以下の懲役、あるいは禁錮または10万円以下の罰金が科せられます。また説教、礼拝あるいは葬式を妨害すると、1年以下の懲役あるいは禁錮または10万円以下の罰金に処せられます。これらは、第188条を根拠としています。

また、「公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者」を罰する軽犯罪法では、行為の実態や程度により、礼拝所及び墳墓に関する罪や威力業務妨害罪、偽計業務妨害罪などの刑法犯罪に問われかねません。

葬儀や葬送は、死者を宗教的また社会的に弔う大切な儀式です。前述したとおり葬儀や葬送は、円滑に実施できるよう生活保護法で守られていますので、妨害や侮辱行為に対して刑事罰が存在しています。

民法が規定する葬式費用先取特権、祭祀承継者

民法の葬送規定には、葬式費用の先取特権(第309条)という項目があります。先取特権とは、葬儀に関する債権者が他の債権者より優先的に支払いを受けることができる特別な規定です。つまり、寺社や葬儀社が葬儀に関する費用を確実に徴収できるようにし、借金がある方が葬儀を行うことを資金面で断られないようにしたものです

また民法の項目として、「祖先の祭祀を主宰すべき者の承継」が記されています。詳細は、民法第896条、897条に規定されています。祭祀承継者は必ずしも相続人である必要はありません。祭祀財産は相続財産ではありませんので、相続権のない内縁関係の配偶者でも祭祀承継者を務めることができます。

祭祀承継者は、被相続人の口頭による遺言で決めることもできます。被相続人の意思が明らかでない場合は、慣習に拠ります。慣習が不確かなどで関係者の利害が対立したときは、家庭裁判所の調停に持ち込まれます。

まとめ

葬儀や葬送に関わりの深い法律について、ご説明してきました。民法には他にも相続や遺言などに関するさまざまな規定があります。葬儀・葬送には伝統や風習があるため、関連する法律はそれらを尊ぶべき行事であると考える精神に基づいて定められています。
葬儀や葬送は、どなたにも身近な行事です。関係する法律に関して何かお悩みの方、さらに詳細をお知りになりたい方はお気軽にご相談ください。

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