介護職員処遇改善加算について

介護職員処遇改善加算について

今回は、平成30年介護職員処遇改善加算の改善計画書の届出について、お話をしたいと思います。

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働き手が足りない、介護の世界

介護や保育、障がい分野は、労働者が足りません。本当に必要な仕事ですし、やりがいはあるけれど、「激務なんでしょ?」と思われています。

特に、介護業界は、入社3年以内に、7割の方が退職することもあり(残った3割の方が、介護福祉士の受験資格を手に入れて、受験されます)、なかなか人が職場に定着していません、とても残念なことですが……。

介護業界の人材不足を解消するため、厚生労働省は平成21年度から介護職員処遇改善交付金という制度を
はじめました。

また、他の業界と比べても、平均賃金が、10万円低く、「低賃金でこき使われる」というイメージをよく聴きます。

現場で働いている感覚からすると、このあたりは誤解も多いと思っているのですが、ただ給与額というのは就職する上での判断材料になるのは確かですよね。

これでは、介護業界に人が集まらない!という危機感から、厚労省は平成21年度から、この介護職員処遇改善交付金という制度を始めました(のちに介護職員処遇改善加算に変更になりました)。

この交付金を活用することで、他業界と介護業界の賃金の差を徐々に埋めていくように、介護職員の昇給のみにしか使えない「交付金」を支給しました。

交付金時代(平成21年度後半から平成23年度まで)は税金で、加算金時代(24年度から現在まで)は介護報酬の中に組み込まれました。

当初は(21年度から26年度まで)、基準月と比べて、15,000円の増額に、27年度から28年度はさらに12,000円プラスされ計27,000円の増額になり、さらにさらに今年4月から10,000円をプラスされ、計37,000円の増額になります。

今年4月の増額は、本来は30年4月からの予定だったものを1年間前倒しし、実施されることになりました。

平成30年度の介護職員処遇改善加算について

現在、全国の事業所さんは、この処遇改善加算の届出書類を作成されていると思います。

今年度は、いつもの2月締切に戻りましたので、2/28(水)までに行政への届出をお忘れなくご提出下さい(消印有効では無く、必着となります)。

平成29年度から介護職員処遇改善加算に新加算Ⅰが加わりました。

平成29年度から、新加算Ⅰがデビューしました(新しい要件Ⅲが追加されています)。平成30年度の介護保険改正では、処遇改善の金額には、特に変更がありませんでした。

ただ、今後、加算Ⅳと加算Ⅴは、期日を定めて(現時点では未定)、廃止されることが決まりました。

平成30年度に関しては、まだ廃止されませんので、ⅣとⅤを希望する事業所さんは、2月末まで、改善計画書を提出して下さい。

また昨年12月に、処遇改善の新しい話が飛び込んで来ました。2017年12月4日 日テレNEWSより

具体的には「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について、公費1000億円程度を投じ、月額平均8万円相当の処遇改善を行う」としている。
処遇改善は消費税率の引き上げに伴う介護報酬の改定にあわせて2019年10月から実施するとしている。

ただ、この処遇改善は、今まで行っている制度とは、違うものになりそうです。

今までも、少しずつ処遇改善を行ってきたのですが(厚労省の説明によると6年間で+43000円ほど)、この効果が限定的で、平成27年度の賃金構造基本統計調査を見てみると、産業は計36.2万円のところ、医療介護は計26.2万円と、相変わらず10万円近い差があります。

介護職員の勤続年数ごとの給与

平成21年10月から始まった、処遇改善交付金はこの10万円を差を埋めるために始められたのですが、正直その対策をしていたにもかかわらず、変わっていないということになっています。

とはいえ、もしこの処遇改善がなければ、10万円以上の差になっていたと考えられますので、限定的ではあっても、この処遇改善加算は必要だったことになります。

新加算Iの条件について

改めて新加算Ⅰの条件を確認します。
新加算Ⅰを取得するために、以下の3つのキャリアパス要件をクリアする必要があります。

  • 要件Ⅰ:キャリアパスを導入する(表の作成、規定を整備する)
  • 要件Ⅱ:資質向上のための研修を行なう
  • 要件Ⅲ:昇給する仕組みを作る

要件Ⅰ・Ⅱは27年度から導入されている要件ですので、旧加算Ⅰ(現加算Ⅱ)を取得している事業所は、すでに実施されていると思います。

29年4月から導入された要件Ⅲですが、要する、どのような場合に、昇給するのか?を職員に明らかにする事が主目的になっています。
そのため「事業者において、以下の①~③のいずれかに応じた昇給の仕組み」を設けることが必要です。

要件Ⅲの昇給の仕組みについて

①「経験に応じて昇給する仕組み」
→ 「勤続年数」、「経験年数」などに応じて昇給する仕組み
②「資格等に応じて昇給する仕組み」
→ 「介護福祉士」、「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組み
③「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」
→ 「実技試験」、「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組み(客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する)

③はハードルが高めなので、①②を中心として整備する事業所さんが多いかもしれません。もちろん①②③を組み合わせて実施してもかまいません。

具体的に、何を定めて、何を変更するのか?ですが、しっかりと取り組むのであれば、就業規則にいくつかの条文を追加する事になります。
具体的には、基本給、給与改定(昇給)、役職手当、資格手当の条文を、変更もしくは追加します。

①であれば、基本給が「勤続年数」、「経験年数」などに応じて昇給するので、ある程度の勤続年数や経験年数を経ると、賃金が上がっていく仕組みになります。具体的には、「賃金表、賃金テーブル」を定める事になります。

参考HP:社会保険労務士法人 Nice-One(ナイスワン)
http://www.nakayama-sr.com/wage-system

②については、「資格の取得や昇格で昇給するので」、資格手当や役職手当の条文を作り、金額を定めることになります。

③については、「一定の基準に基づき定期に昇給を判定するので」、昇給(昇格)の際の、具体的な条件を定め、どのように評価するか?などを定めます。就業規則に例えば、「昇給額は、従業員の勤務成績等を査定の上、各人ごとに決定する。」として、詳細は他の規定に、まとめることになります。

とはいえ、小規模の事業所さんで、賃金テーブルを作成するの!?今回は+改定だったけど、今後の改正・改定によりどうなるかわからないから、具体的な金額は書きたくない・・など、なかなか就業規則の条文という形で、載せるのは難しいかもしれません。

今回は、昇給の仕組みを作る事が、要件になっていますので、整備をすることは必要ですが、あまり背伸びをした制度にすると、それに縛られてしまいますから、無理のない仕組みを導入するほうが良いと思います。

行政が確認するのは、就業規則やその他規定に明文化されているかどうか?ですから、条文という形で対応出来るのであれば、それが良いと思います。ただ、そうは言っても・・という事業所さんもあるかもしれません。

代替方法としては、キャリアパス表を改変して(もしくは頑張って作成して)、そのキャリアパス表に、具体的な昇格条件や、年収(月収)などを載せ、それを活用する方法もあります。

実績報告書とは?

実績報告書とは、毎月介護報酬と一緒に支給される、介護職員処遇改善加算について、1年間(4月~3月)にいくらもらったか?そして、その加算を、どのようにスタッフの給与アップに遣ったのかを報告するものです。

まず期日ですが、7/31(月)までに報告書を、行政に提出してください。

実際の昇給額、手当額が、賃金台帳に載っているか

社長さんが、28年度に、スタッフに支給した給与ついて、賃金台帳に記録されています。

28年2月末に提出した28年度の改善計画書に、給与改善すると具体的に定めた基本給額や手当の内容が、賃金台帳にしっかりと記録されているか?を確認して下さい。

実地指導では、この実績報告書と賃金台帳を照らし合わせて、その改善した事実を確認することになっています。* 毎年の実績報告書には、この賃金台帳の添付は必要ありません。

研修計画に対する、実績報告を作成しているか

介護職員処遇改善加算は、事業所が、職員の能力を上げるための研修の実施又は研修の機会を確保することを算定要件の1つにしています。

そのため、28年2月に計画した28年度の研修に対して、実際に研修をしたか?参加人数は?講師は?資料はあるか?実際の経費はいくら?などの、実績報告を作成して下さい。こちらの資料も、実地指導で確認されます。
* こちらも実績報告書に添付する必要ありません。

特に研修は、27年度改正の目玉でしたのでので、27年度、28年度の実績報告を事業所が作成していないと、実地指導で研修をしたかどうか?の確認が出来ません。

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

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