平成30年度 居宅介護支援(ケアマネジメント)の改正情報について

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今回は、居宅介護支援(ケアマネジメント)の改正情報をお話ししたいと思います。

11月22日に行われた、社会保障審議会 介護給付費分科会の資料が公開されました。

第152回社会保障審議会介護給付費分科会資料

「居宅介護支援の報酬・基準について」に、来年度の改正・改定の論点が載っています。

今回の改正では、今まで以上に「医療と介護の連携」「機能訓練(リハビリテーション)」について、熱い議論がされています。また、介護保険制度を持続させる!ために、効果の少ないサービス、ルールを改善することも、かなり明け透けに話されています。

財政状態の悪化により、自立支援、重度化防止という具体的な結果が、より求められているからです。

居宅介護支援は、介護保険制度の根幹サービスであり、他のサービスと比べると「報酬・基準について(案)」もかなり具体的に示されています。

居宅介護支援に関しては、30年度から、事業所の指定・監督が都道府県から、市町村に移管されます。これにより、市町村が、どんな方向で、居宅介護支援を行っていくのか?によって、総合事業よりも、利用者に大きな影響が出ると考えられます。

今回の改正の論点の1つである、自立支援の考え方をより進め、介護度の維持改善の成果を上げている自治体に、インセンティブ(ボーナス)が支払われる介護報酬体系に変更されることになりました。

自治体は、今後、このインセンティブを、サービス事業所に還元していくと思われますが、そのインセンティブを何に、どのように配分するか?は自治体のアイデアに任されています。

今後は、自治体が行う「ケアプラン点検」「実地指導」を通して、具体的な確認、指導がされますので、どのようなケアプランやサービスが望まれているか?が明らかになっていくと思います。

その結果、今まで以上に、その自治体のみに適用されるルール=「ローカルルール」と呼ばれる「混乱」が増えるのではないか?と危惧されます。

ある意味で、良い方に変わるか?それとも悪い方に変わるか?は、自治体の考え方次第です。

2025年向けて、地域ケアを推進していくのか?市町村の財政を改善する為に、給付抑制の道に進むのか?

みなさんの住む市町村の動向にご注意ください。

今回の資料では、

論点1 医療・介護連携の強化

論点2 末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント

論点3 質の高いケアマネジメントの推進

論点4 公正中立なケアマネジメントの確保

論点5 訪問回数の多い利用者への対応

について挙げられています。

論点1 医療・介護連携の強化

医療機関へ入院した人の、退院後の円滑な在宅生活への移行を促進するため、入退院時における医療・介護連携をさらに強化することになります。

その対応として、現在の「入院時情報連携加算」「退院・退所加算」を見直す事が検討されています。福井県の事例などもあり、来年度からは、利用者が病院又は診療所に入院した場合は、利用者が、介護支援専門員の氏名及び連絡先を当該病院又は診療所に伝えることを求めるようです。入院時情報連携加算は、入院して3日以内に情報を提供すると新たな評価がされるようです。

図 p11 入院時情報連携加算の見直し(案)

論点2 末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント

末期の悪性腫瘍のターミナル期は、著しい状態変化を伴うため、ケアプランの変更回数が多くなります。

状態変化に応じ、迅速なサービス提供を促進するため、

①末期の悪性腫瘍と診断され、

②日常生活上の障害が1ヶ月以内に出現すると医師が判断した場合は、

主治の医師等の助言を得ることを前提として、サービス担当者会議の招集を不要とすること等によりケアマネジメントプロセスを簡素化することが検討されています。

図 p23 末期の悪性腫瘍患者に対するケアマネジメント

論点3 質の高いケアマネジメントの推進

居宅介護支援事業所における人材育成の取組を促進するため、主任ケアマネジャーであることを管理者の要件とすることが検討されています(主任ケアマネジャーが人材育成や業務管理の手法等を研修により修得して、それを実践している事業所が増えている様子)。

本決まりになれば、来年度から3年間は移行期間となり、33年度から主任ケアマネジャーが管理者の人員配置要件になるかもしれません。

また、特定事業所加算1~3の要件が変更も予定されています(地域包括、病院等での事例検討会の参加の義務づけ)。

なお、居宅介護支援にも同一建物減算と同様の仕組みを創設する案は見送られたようです。

論点4 公正中立なケアマネジメントの確保

利用者の立場に立った公正中立なケアマネジメントの確保に向け、利用者との契約にあたり、ケアマネジャーは、

「利用者は、ケアプランに位置付ける居宅サービス事業所について、複数の事業所の紹介を求めること」

「当該事業所をケアプランに位置付けた理由を求めること」

を説明することになるようです(このような説明を行っていない事業所は、運営基準減算を適用させるというペナルティーが検討されています。

特定事業所集中減算については、会計監査院から、必ずしも合理的で有効な施策ではないとの指摘があり、27年度に改正した、ポイントを見直すことになりそうです。

①請求事業所数の少ないサービス、

②主治医の医師等の指示により利用するサービス提供事業所が決まる医療系サービス

は特定事業所集中減算の対象サービスから除外する方向のようです。

⇒ 訪問介護、通所介護、福祉用具貸与を対象に限定することが検討されています

論点5 訪問回数の多い利用者への対応

訪問回数の多いケアプランについては、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、市町村が確認・是正を促していくことになりそうです。

ケアマネジャーが一定の回数を超える訪問介護を位置付ける場合には(生活援助の利用回数が「1ヵ月あたりの全国平均+2標準偏差」を上回るもの)、市町村にケアプランを届け出ることとし、届け出られたケアプランについて、市町村が地域ケア会議の開催等により検証を行うことになるようです。

生活援助に頼り切っている利用者も居ますから、全部NOではなく、地域ケア会議で検討されることは良かったと思います。

ただ、市町村の仕事はどんどん増えていきますね。

「居宅介護支援の報酬・基準について」の論点をご紹介しました。

今後の議論に注目しましょう。

この記事を書いた人

橋谷創(橋谷社会保険労務士事務所代表、株式会社ヴェリタ/社会保険労務士・介護福祉士)

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