今は亡き祖父へ
おじいちゃんが亡くなって、早一年が過ぎましたね。
そちらでのお仕事はもう慣れて元気にお過ごしでしょうか? そして、いつも口癖だった「がぁとだなぁやい」という言葉は今でも健在でしょうか?
「がぁとだなぁやい」は、主におじいちゃんが孫である私によく「大したものだなぁ」という意味で掛けてくれた言葉でしたね。
私が高校生の頃、作文で賞を頂いた時にも「がぁとだなぁやい」を連発し、まるで自分事のように喜んでいましたね。おじいちゃんは、多忙だった両親の代わりに、遠い街の表彰式にも快く参列してくれましたね。
それは、私がおじいちゃんとの思い出の中で一番、嬉しかった出来事です。
表彰式には、大勢の前で自分の作品を朗読するという時間がありましたね。
おじいちゃんは、薄々気付いていたのかも知れませんが、私は表彰式に出席するのに苦痛を感じていました。それは私が幼い頃から気が小さく、人前で何かをするのにとても緊張するタイプだったからです。私は前日の練習でも、上手く声が出せない悔しさや本番への不安から涙を流したりもしていました。
本番当日も、朗読が嫌で嫌で堪らなかったのですが、おじいちゃんが優しく見守ってくれていたおかげで勇気が出せました。お世辞にも上手いとは言えない朗読だったにもかかわらず、穏やかな笑みを浮かべていたおじいちゃんの姿を見て、私は泣きそうになりました。それは、朗読が上手くできなかった悔しさでも、不安から来ていた緊張からでもなく、ただ単純に嬉しかったから泣きそうだったのです。その時のおじいちゃんの姿が今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。
「がぁとだなぁやい」この言葉は、私の心に刻まれた最高の贈り物となりました。
おじいちゃんのことだから、亡くなった今でもあの時と同じような笑みを浮かべ、私が少しでも何かを成し遂げようとする時、優しく背中を押してくれていることでしょう。
その暖かで心強いエールには、いつも感謝しています。
私自身、おじいちゃんからもっと沢山の「がぁとだなぁやい」の一言を掛けてもらえるよう頑張ります。本当にありがとう。
一年前の祖父の葬儀では、体調が悪く寝込んでいたため、弔辞を読むことが叶いませんでした。この度の公募で、もう一度大好きだった祖父に手紙をしたためることができ、大変嬉しかったです。ありがとうございました。
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より
「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。