今頃、ありがとう

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今は亡き父へ

お父さん!あなたの二十三回忌とお母さんの十七回忌も無事に終わりました。あなたが会うことは叶わなかった曾孫三人も交えた、総勢十一人の賑やかな法事でしたよ。

あなたは、私に何も告げることなく、逝ってしまいましたね。お母さんもあなたのようにする積もりだったようです。でも、晩年、二人が入院して、両親の血液型が二人共同じA型だと分かったとき、私は衝撃を受けました。私の血液型はAB型なので、二人の間に私が生まれることは決してないからです。

末期胃癌で、死の淵にあったお母さんに、「私の親は誰?」と、過酷にも私は訊ねずにはいられませんでした。

「あの世まで黙って持って行く積もりだった」と話してくれて、初めて知りました。私は三歳まで父親のいない私生児で、私を連れてお母さんがあなたと結婚し、初めて父親を得たのだということを。そして、私の本当の父は、私にB型の因子だけを残して、戦死してしまったということも。あなた達は、その事実を、私に絶対に知られないよう、必死で守り続けたのですね。

我が家では絶対君主であり、私の意見などまったく受け入れず、門限など、厳しい教育方針を貫くあなたに、私はいつも反発を感じていました。でも、あなたが、私の実の父親ではないと知っていたら、もっと素直に、あなたの言葉に従えていたと思ます。

あなたが生存している間に、私はこの事実を知りたかった。そうすれば、もっとあなたに感謝の気持を持って、優しく接していたかもしれないのにと、それだけが残念です。

二十四歳で結婚するまで、一人娘として何不自由なく過した私も、もう古希を迎えました。夫と三人の子供と、三人の孫に恵まれて、平和に暮らしています。あなたのお陰です。

今頃ですが、お父さん、本当にありがとう!

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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