親子の絆

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今は亡き母へ

お母さん、貴女が献体登録をした時には、驚きはしましたが、将来の問題として深く気にはとめませんでした。新春早々に貴女は骨折し、緊急入院しました。92歳の年齢は争われず、目にみえて衰弱して行く貴女を前に、私の心に貴女の献体問題が重圧と感じる様になりました。

『たとえ研究の為とは言え、世間一般の葬儀をする事もなく、献体をする事が子供として許されるのか?』

『献体の登録は決して強制を伴うものではない。残された家族が連絡しなければ、立派な葬儀を行う事ができるのでないか?』

『改めて貴女に献体の意志の確認をすべきじゃないか?』

私の心は大きく揺れました。

数日後、担当の看護婦さんが、意外な事を打ち明けてくれました。お母さんが、私にこんなことをおっしゃいました。

『私はなくなったら献体する事になっているので、私の体は預かりものなのよ。傷めたり、傷つけたりしないで、少しでもきれいな体で研究用になりたいの』  

その言葉を聞いて私は胸が一杯になりました。  

お悔やみ花

考えて見れば、献体という行為は去り行く人と、残された家族の信頼関係があって初めて実現できるのですね。  

お母さん、貴女は私達家族へ絶対の信頼を寄せてくれていたのですね。

お母さん、貴女の意志を軽く考えていた私の愚かさを知りました。

貴女の意志を尊重する事こそ、最高の葬儀ではないかと知りました。  

その二日後、貴女は静かに息をひきとりました。  

最後まで迷う事なく、自分の意志を貫いたお母さん…

貴女の子である事を誇りに思っています。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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