新聞などで目にする死亡記事。
芸能人や政治家、経済界の重要人物など著名な方が亡くなると、亡くなった日時や故人の業績、通夜、葬儀・告別式の日程、そして会場などが掲載されます。
こうした記事は、明治時代の中ごろにはもう、新聞で掲載されるようになっていたってご存知ですか?
今回は、この死亡記事をなんと、100年分調べあげたお葬式の専門家、福田充さん(日本葬送文化学会 副会長)に、記事から見えてくるお葬式の変化についてお話を聞きました。
目次
死亡記事とは?
死亡記事(しぼうきじ)とは、新聞などの記事のうち著名人の死を伝える内容のもののことである。訃報(ふほう)とも言い、日本では死亡記事のコーナーは「おくやみ欄」とも呼ばれる。発行者が独自に掲載を決めたものを指し、遺族などが依頼して広告として掲載されたものは死亡広告と呼んで区別する。
Wikipedia より
死亡記事は別名、訃報記事とも呼ばれています。
著名人の死亡をニュース記事として掲載しているもので、どうしてそのような記事が載るのかというと、その目的は「社会的な地位や高名な方が死亡した場合、その死をニュースとして知らせること」です。
故人の名前には、太い黒線が引かれたり、故人が「超」のつくほど有名な方だった場合など、大きな記事の時には記事が黒枠で囲まれることもあります。
また、新聞を見ていると、故人が一般の方であった場合にも、訃報が載っていることがありますが、これは通常、喪主などが費用を出して捻出して掲載するもので「訃報広告」と言います。
この調査では、日本三大新聞の一つで、幅広く著名人の死亡記事を掲載している“朝日新聞東京版”を、1913年から2013年まで1,300例を対象に調べたそうです。
著名人の長寿化が進行中
超高齢化社会と言われる日本ですが、著名な方の死亡年齢も高齢化しています。
10年ごと死亡記事を見ると、記事に書かれた著名人(故人)の年齢が、大正時代の1913年では半数が50歳未満だったのに対し、1993年には50歳未満は10%にまで下がっています。
反対に、80歳以上の高齢な故人は1963年には25%だったのが、1993年には50%、半数を超えています。
さらに1990年代以降は、死亡者の年齢でも高齢化が進行。2003年には90歳以上で亡くなった方が16%だったのが、2008年には21%にまで増えているそうです。
有名な人もどんどん長生きになってきてるのがわかります。
昔は、著名人でも“自宅で葬儀”を行うのが普通だった
さて、著名人のお葬式というと、青山葬儀所など大型の式場、お寺、ホテルなどの会場をイメージします。
でも、大正時代には著名人であっても自宅で普通にお葬式が行われていました。それが昭和に入ってから少しずつ少なくなって、平成に入ると一気に減少しました。同じように、お寺でのお葬式も平成に入ると激減します。
その分、葬儀社などの専用の斎場が使われる割合が増えています。
お葬式の開始時刻が早まった
お葬式の始まる時間にも変化が見られます。
1980年代までは、著名人のお葬式が午前中に行われることは、ほとんどありませんでした。だいたい、午後の1時から始まるケースが多かったようです。
ところが、これが1990年代を過ぎると、10時、11時、12時と式を始める時間が早まるようになって、さらに2008年には約三分の二の葬儀が午前中に行われるようになりました。
21世紀は、著名人でも家族葬の時代
100年間を調べると、お葬式の形については、20世紀の間はほとんど変化がありませんでした。
葬儀・告別式という一般的なお葬式が8割を超えていたと言います。
しかし21世紀に入ると、この一般的なお葬式は7割に減少します。代わって“お別れ会”や“偲ぶ会”と呼ばれる「お葬式以外の会」や「近親者のみ」という割合が増えました。
この「近親者のみ」というのはいわゆる「家族葬」です。
これがさらに2008年になると、「お葬式以外の会」も減少して、「家族葬」の割合だけが増加することになります。
「新聞紙面に掲載されるような著名人やニュース性のある人の死亡においても、葬儀を身内だけで執り行ない、一般に公開しない、いわゆる“家族葬”が一般化した」というわけです。
2013年になるとこの流れはもっと顕著になって、それまで主流だった「一般的な葬儀」は3割程度になって、代わりに「家族葬」が約4割と、主流になってきました。
100年間でも、大きな変化はここ最近
こうした調査を通じて、福田さんは「大きな変化はここ20年から30年間で起きている」と言います。
それまでは比較的、過去のお葬式がそのまま継承されていた著名人のお葬式が、最近になって急激に変化しているのです。そして、こうしたお葬式の変化は、一般の人のお葬式にも当てはまります。
死亡記事は「その時代精神を反映している」とも言われます。
お葬式に関する情報が少なくなれば、亡くなった方への哀悼を表わす機会も減ってしまいます。「先人を敬う気持ちもますます失われていくということなのかもしれません」と、福田さんは警鐘を鳴らしています。
調査方法について
日本三大新聞の一つである全国紙で、幅広く著名人の訃報記事を掲載している朝日新聞東京版より、1913(大正2)年から1993(平成5)年までは10年ごと、1998(平成10)年からは5年ごとに2013(平成25)年まで、1,300例を対象として、故人の年齢や職業、葬儀を行なった場所、葬儀の開始時刻、葬儀の形態などを分析した。各年1月1日から100人分としたのは、年間を通じて死亡者数が集中する冬期間であること、年の変わり目の1月1日を起点としたことがその理由である。一年間に朝日新聞に掲載される訃報記事は、1,000件前後とみられ、10%程度に相当する。
(文・構成:小林憲行)