高齢者の介護の話となると、どうしても話題に上るのが認知症のこと。それほど多くの方が悩まれているということなのでしょう。
認知症が理由で、時には痛ましい事件も起こったり、ニュースなどでもしばしば取り上げられています。
でも、一口に「認知症」と言っても、実はいろいろな種類があるってご存知ですか?
今回は、認知症の種類の中でも「三大認知症」といわれる代表的なものについて、ご説明します。
アルツハイマー型認知症
認知症の中でも最も多いタイプ
認知症の中でも一番多いのが、このアルツハイマー型認知症です。
男性よりも、女性に多くみられます。
主な症状としては、記憶障害、いわゆる“物忘れ”があります。
一般的な物忘れと違うのは忘れたことも忘れてしまうということ。
ですので、一度忘れてしまうと、後から思い出すことはありません。
また、判断能力も低下します。
家族の顔も忘れてしまうことも
症状が進むと、洋服を着る手順なども判らなくなってしまいます。
さらに、時間の感覚も判らなくなり、時計を読むこともできなくなります。
このほか、物を盗まれたと思い込んで家族や近親者を激しく攻めてしまったり、一人で外に出てしまう(徘徊)、介護拒否などもよく見られるようになります。
淋しいことですが、顔を認識する能力も失ってしまうので、家族の顔も判らなくなってしまいます。
しかし、このアルツハイマー型認知症は、早期に発見することで、生活習慣、食習慣を改善し、薬を投与するなどして進行を遅らせることができるのではないかと考えられています。今後、こうした研究が進むことを期待します。
脳血管性認知症
まだらの認知症?
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳の血管の病気が原因となる認知症です。
脳の血管がつまったり、出血があると、細胞に酸素をうまく届けることができなくなってしまいます。その結果、神経細胞が死んでしまい、認知症が起こります。
破壊された部分の細胞が本来持っていた機能が働かなくなるということから、“まだら認知症”という症状が発症します。
体調によって症状に変化も
まだら認知症というのは、同じことができる時とできない時があるなど、体調によってもその症状が変化します。感情失禁も多く見られ、喜怒哀楽が激しくなります。
このような脳血管性認知症は、生活習慣の改善、リハビリ、薬の投与により進行を遅らせることができるとされています。
レビー小体型認知症
男性に多いタイプの認知症
アルツハイマー型とは反対に、男性が発症するケースが多のが、レビー小体型認知症です。
どのくらい多いのかというと、なんと女性の約2倍と言われています。
発症数そのものも、アルツハイマー型認知症の次に多いタイプの認知症です。さらに、症状の進行も速く、やはりアルツハイマー型認知症と同様、もしくはそれ以上と言われています。
幻が見えることも
レビー小体型認知症の大きな特徴は幻視です。
存在しない虫や小動物が見えたり、近親者の幻を見たりします。
また、歩行が困難になる、手が震える、動作が遅くなる、身体のバランスが取れなくなるなどパーキンソン病に似た症状が発症します。
もしも、家族が認知症になったら
認知症の疑いがある時は、専門医に相談しましょう。
正確な診断をしてもらった上で、生活習慣の改善、リハビリ、投薬により病状の進行を遅らせます。
ご家族など近親者に認知症の受診を勧める場合、特に症状が初期であると、本人が認知症を認めず拒否をする場合があります。
受診を勧める方も不安はありますが、本人はもっと強い不安を感じることでしょう。病院に行くよう、ストレートに説明するのではなく、納得のできる表現で、理解をしてもらうことが大切になると思います。
介護者は想像を絶する精神状態に追い込まれていることも
アリセプトなどの投薬により病状を見守りますが身体能力が健常者に近いにも拘わらず認知症状が極端に進む場合があります。
激しい徘徊により一日中外を歩き回るなどや、怒りの衝動がおさえられず常に怒り、時に暴力を振るってしまう場合もあります。
ここまで進行した場合、多くは専門の病院に入院し、薬の掛け合わせと最適な量の投薬により、改善を期待します。
残念ながら、現代の医学ではこうした症状を改善することは難しく、最終的には喜怒哀楽が少ない精神状態になり、あまり動くことが無い状態に落ち着きます。ある意味、心と体の状態を落とすことになりますが、認知症の進んだ元気な体の人は、現実に在宅や施設での介護は難しく、やむを得ない状態だと考えられます。
病状が投薬により改善すれば良いのですがそうならない場合、先般、名古屋で起きた徘徊者による踏切内進入電車の遅れの訴訟問題のように、介護者はのっぴきのならない状況に追い込まれてしまうこともあります。
事件にまではならなくても、認知症の介護をしている介護者は、想像を絶する精神状態に追い込まれていることも。
周りの人ができるだけ気に掛けるのももちろん、介護者も、遠慮なく行政や地域の包括支援センター、介護従事者に相談していただきたいと思います。
また、安心して相談できる環境作りも、今後より一層、進めていく必要があるでしょう。