伝えられなかった気持ち

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今は亡き祖父へ

小柄だけれど、ハンサム。

口数は少ないけれど、いつもにこにこしていた。

お天気の良い日に、ふらりと自転車に乗ってやって来た。

お茶一杯分だけおしゃべりをした。

父の本を借りて「また」と言って帰った。

入院した時も、ふらりとやって来て、お見舞いに本を一冊置いていった。

後進の指導に熱心で、毎年農業高校の生徒さんを実習に招いていた。

同じ場所でアルバイトをしていた時には、忙しい時間になると必ず私の持ち場に手伝いに来てくれた。

何の気なしに「いつかお習字がしたい」と言ったら、子どもには不釣り合いなすばらしい硯箱をくれた。

山ほどいた外孫の中で、結構お気に入りでしたよね。私。

言ったことはなかったけれど、自慢でしたよ。あなたのこと。

実は、頑固一徹で気難し屋。

時折家人を困らせる人だった。

それを初めて知ったのは、あなたのお葬式がすんだという母の電話の後だった。

結婚して遠くに住んでいて、赤ちゃんもいたから、簡単には帰れなかった。

みんなが気を遣ってくれた。良くわかっている。

でも、お葬式で泣きたかった。

お世話になりました。大好きでしたと言いたかった。

最後のお別れをしていないから、いつまでも田舎にいる気がします。

生きていて、二度ピンチなことがあった。

そのたびに、夢枕に立ってくれた。

母のところにも来たことはないらしい。嬉しかった。

もう心配かけないように、幸せに暮らしていきます。

あの時赤ちゃんだったあなたのひ孫が二十五歳になります。本当にあっという間ですね。

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」より

「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」は、父母、祖父母、先生、友人、近所の人など。“あの人”とかつて一緒にいた時に言えなかったこと、想い出や、“あの人”が亡くなった後に伝えたくなったこと、感謝の気持ちなどを綴ったお手紙です。

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