2019年4月11日に肺炎のため81歳でご逝去された、『ルパン三世』の生みの親である漫画家・モンキー・パンチ先生(本名:加藤一彦)のお別れの会「モンキー・パンチ先生を偲ぶ会」が、6月14日に東京・青山葬儀所で行われました。
喪主を務めたのは先生の次男・加藤州平さん。弔辞を述べたのは、アニメ『ルパン三世』で主人公・ルパン三世の声優を務める栗田貫一さん、他2名。
お別れの会は2部制で行われ、1部はご招待者のみ、2部は一般、ファンの皆さまによる献花のお時間となりました。お別れの会の施行は、株式会社日比谷花壇です。
ルパン三世のイメージカラー「赤」をバラで表現した祭壇
祭壇は、先生の代表作『ルパン三世』のイメージカラーである「赤」をたくさんのバラで表現しました。背景の美しい夜景やサーチライトに照らされた夜空が、赤いバラをより一層引き立てています。
遺影のまわりに飾られたおなじみのキャラクター、ルパン三世・銭形警部・次元大介・石川五ェ門・峰不二子のキャラクターパネルは、先生の原作画です。
祭壇の両脇にはモニターが設置され、アニメ『ルパン三世』をはじめとする思い出の映像が上映されました。
栗田貫一さんらによる弔辞
弔辞を奉読したのは、栗田貫一さんと日本漫画家協会理事長の里中満智子さん。また友人代表として、株式会社平和 相談役 公益財団法人ジュニアゴルファー育成財団理事長・石橋 保彦さんがお別れの言葉を述べました。
24年前、山田康雄さんからルパン三世役を引き継いだ栗田貫一さん。当初は「ルパン三世なんかできるわけがない」と思い、お断りしたこともあったとか。引き継いだ後も各方面から批判がありましたが、先生に「何も心配しなくていいですよ。そのままでいいんですよ」と言っていただき、勇気づけられたそうです。
「今日まで先生に守られてきたから、ルパン三世をやってこれたんだと思います。先生のそのすべてを受け入れる懐の大きさは、ルパン三世そのものではないか」と語りました。
漫画関連の色々なイベントでご一緒したという里中満智子さんは、先生との思い出深いエピソードを語りました。
「先生とご一緒したあるイベントで、若い人たちに創作のコツを伝える場面がありました。 そこで先生が雲をヒントに語っておられたのを聞き、本当に感激しました。雲は刻々とかたちをかえる。雲をキャラクターだと思って見ていると、キャラクターの動きが見てくるとおっしゃって、皆の前でまず雲の絵を描かれます。そしてその雲をなぞって、ルパンや不二子ちゃんを描いていかれるんです。先生がお描きになるキャラクターがずば抜けて躍動的なのはこれなのかと納得がいきました。キャラクター性と画面の斬新さで日本の漫画界に大きな刺激を与えてくださってありがとうございます」
石橋さんは、大泥棒のルパン三世がなぜこれほどまでに愛されるのか、次のように述べました。
「先生の性格はどなたに聞いても皆一緒です。まったく裏表がなく、物静かで、温厚で、優しい人だという答えが返ってきます。でも先生、私は先生の心のなかが分かってきたような気がしました。それは、先生のファンなら誰もが感じているかもしれません。若かりし頃の作品名から見てみると、『反逆児』『公開殺人』『秘密工作』『復讐』『階段野郎』『殺しのオ時間デス』そして『アウト・サイダー』。その意味は、社会の枠にはまらない、独特な思想の持ち主。つまりアウトローに近いならず者、無法者を描こうとしていましたよね。その後、満を持してルパン三世を世に送り出しました。フランスの大泥棒アルセーヌ・ルパンの孫、つまり極悪非道な大泥棒の血をひくルパン三世という設定。しかし先生がいくら悪あがきをしようとしても、結局は元来のやさしい性格が作品に出てしまいます。一般大衆の誰からも愛される悪になってしまったのではないでしょうか」
ルパン三世のキャラクターをモチーフにした特別料理を提供
「先生を偲びながら心温まるようなお食事を提供したい」というお別れ会主催者の想いから、懇親会ではルパン三世のキャラクターをモチーフにしたユニークな特別料理が振る舞われました。
参列者は主催者の思いがつまった心温まる料理を食べながら、故人への想いを語らい合いました。
ルパン三世をはじめとする数々の魅力的なキャラクターを生み出したモンキー・パンチ先生。先生の人柄と同じく、心温まる遊び心にあふれたお別れ会になりました。
モンキー・パンチ先生を偲ぶ会に参列された方々
(取材/文:八木麻里恵)