ニッポンの終活 ニッポンの終活〜人生の最後をどう考えるか〜 ニッポンの終活〜人生の最後をどう考えるか〜
三原じゅん子

「余生の過ごし方の選択肢を作ることが、私の役目」三原じゅん子

取材・執筆:北千代 撮影:村山雄一

2019年4月16日

2010年夏の参議院議員通常選挙で初めて立候補し、当選した三原じゅん子議員。2016年には2度目の当選を果たし、「守りたい~あなたの想いを受け止めて~」とのスローガンのもと、主に福祉などの分野で活躍中です。女優を引退して立候補しようと決意したのも、老人福祉施設を通じて、制度改革の必要性を感じたからとのこと。シニア世代の余生の過ごし方について、そしてご自身が考える終活についてもお聞きしました。

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「弱い者を守りたい」という正義感が、福祉に目を向けるきっかけに

参議院議員に立候補するきっかけになったのは、デイサービスをご自身で経営した際に、「法律や手続きなどの制度を変えていかなければ、よりよい福祉はできない」という思いが生まれたからだそうですね。そもそも、デイサービスを立ち上げようと考えられたきっかけは、お父様の闘病があったからだとか。経緯をお聞かせください。

父は脳梗塞で2度倒れ、幸い一命は取り留めたものの、母が在宅で介護していました。介護は長期にわたりましたが、母は自分で介護することにこだわり、デイサービスも利用しませんでした。しかし、在宅介護というものは24時間体制で、自由になる時間もありません。そうした母の姿を見て、在宅介護に携わる方に自分の時間を作って差し上げたい、サポートしたいと考え始めたのです。 まずはいろいろな介護施設を見学して、勉強するところから始めました。その勉強の成果を生かして、実際に立ち上げた地域包括支援センターでは、あえてバリアフリーにはせず、施設内の生活の中でリハビリをする機会を増やす工夫もしました。 現在、在宅介護における家族の負担の比率が大きくなっています。かつては「施設を利用するなんて冷たい」などと陰口を叩かれることもありましたが、今や、介護を必要とする方がニーズに合った選択をして支援を活用すべき時代になっているのです。そのためには、選択肢がたくさんあることが理想ですし、選択肢を増やすことが私の役目だと思っています。 現在は、多様化の時代です。すべての人がそれぞれの気持ちに合った生き方を最後まで全うできるようになれば、素晴らしいことでしょう。皆が横並びで一定水準の介護を受けられることも大切ですが、そうした多様な選択肢を増やすことにも力を入れるべきだと私は考えています。 私の人生の課題は、子ども達や女性、患者といった弱い存在を守る法律を作ること 私自身、現在は結婚していますけれど、独身の時には仲の良い女性達と、「シニアシェアハウスを作って、皆で住もう」なんていう話をして盛り上がっていたこともありました。 また、秘書の一人がお母様の介護をしているのですが、彼女とお母様と私の3人で一緒に食事の時間を過ごすことも多いのです。そうした自分の体験を通じて、いろいろな過ごし方ができることがますます必要とされる時代になるだろうな、と感じています。 家族や友達が気軽に遊びに行けたり、ペットと一緒に入居できたりする老健(介護老人保健施設)や、看護師が常駐するシニアシェアハウスといった選択肢が作れるように、政策の面から支援していきたいですね。

ご自身が「腺がん」という大病を患われた経験から、高齢者だけでなく、患者、女性、子どもなどの福祉についても高い関心をお持ちですね

振り返ると、正義感の強さや、「弱いものを守りたい」という思いが人一倍強い子どもだったんです。弱いものを守る法律を作ることも、誰かがやらないとならないならば、私が生きている間に実現しなければという思いを強く持っています。 私の人生の課題は、子ども達や女性、患者といった弱い存在を守る法律を作ること。私は当事者の側に立って、当事者と話をしながら政策を進めることが向いている政治家だと自認しています。 2009年には児童虐待防止法ができ、その後改正もされましたけれども、相変わらず悲しい事件が後を絶ちませんよね。子どもを助けるにはどうしたら良いかと考えてきましたが、最近では虐待を防ぐためには虐待する側の問題を解決することも大切だと考え始めました。必要に応じてこのような発想の転換をすることが、介護施設での虐待やいじめなどへの対策にも必要だと感じています。

余生を選ぶ意思を尊重し、葬儀では故人の生き様を肯定したい

ご自身の人生については、どのようにお考えですか?

私自身はなるべく長生きしたいと思っていますが、人生については、なるようにしかならないという思いもあります。ですが日本においても、自分の命の火をどう消すのかについて、自分で決めていい日がくるかもしれませんね。延命治療の是非については、政治家として逃げずに向き合いたいと考えています。 私自身、痛みに苦しみながら延命するのは嫌だと思うのです。それに、自宅で寝付いて、家族を苦しめることがあるかもしれませんし、疲れた顔をしている家族に「ごめんね」と頼みながら介護をしてもらうのは、自分も家族も辛いのではないかと思います。それよりも病院でお別れをする方が、皆が負担にならずに楽しく生きていけるのではないかというのが、私自身の考え。ペットの犬達も私にとって大切な子ども達ですが、ある日を境に私が急に帰ってこなくなった方が、犬達にとっても良いように感じているんです。 自分の生き方については、自分で決めることが大切だと思いますし、自分の気持ちを普段から家族に話しておけるといいなと思っています。

多忙な毎日を支える愛犬達。まさにご家族の一員という感じですね

健康に過ごすためにも、長生きをするためにも、ストレスを溜めないことが大事。自宅へ帰り、3匹の犬たちと過ごすことが、私にとって大切な時間になっています。 動物が大好きなんです。これまでにも高齢の犬や猫を見送った経験もありますが、ペットにも終活というか供養をといわれる時代になりましたね。ペットを後悔なく看取りたい、手厚く供養したいという気持ちは、たくさんの飼い主の方々が持っていらっしゃるのではないでしょうか。 私自身は、見送った子達にもそばにいて欲しいと思っていますし、自分が他界したら、婚家の墓地の隣にペット達の墓地を持てたらいいなと思うこともありますね。

私自身の気持ちとしては、ご葬儀が縮小されることに寂しさを感じています

数年前にはお父様を見送られました。ご葬儀やお墓などのご供養について、感じたことはおありでしたか? 母方の実家が栃木県にあり、夏休みに遊びに行った時など、よくお墓まいりをしていました。ですから、お墓を代々守っていくことが大切という意識を子どもの頃から持っていたように思います。今は主人の家のお墓に入れることに安堵感がありますね。 父を見送った時は、選挙応援中だったため、臨終には立ち会えませんでした。時間の自由がない中でもできる限りそばにいたいと、出発直前まで病院で寄り添って過ごしましたが、訃報は応援先で聞くことになりました。葬儀も家族・親族のみで行ないましたが、これは選挙応援に水を差してはいけないだろうという家族の配慮からです。父は私の一番の理解者でしたので、きっと父もそのことを望んでくれただろうとは思います。 でも、私自身の気持ちとしては、ご葬儀が縮小されることに寂しさを感じています。というのも、親しくしていたおばが亡くなった時、とても寂しい思いをしたからです。おばは多くの人に愛された人でしたが、こうした時代なので、たくさんの参列者がお越しになる盛大な葬儀はしませんでした。そのとき、簡素なお葬式をしたばかりに故人の生き様まで寂しく見えてしまうようでは、遺された人たちが辛いのではないか、と痛感したのです。

ご自身の終活については、何か考えていらっしゃることはありますか?

夫は私よりも若いから、老後はなるべく迷惑をかけない、可愛いおばあちゃんでいたいですね。私に何かあっても、生活のことは今から夫を鍛えているので大丈夫だと思うけれど、病気で動けなくなる前に遺言は用意しておかなくてはと思っています。 公正証書で遺言を残す必要性は、強く感じています。もう、「意思表示をせず奥ゆかしくあることが美徳である」という時代は終わったと思うのです。どんな小さなことに対してでも、遺った人たちが争ったり揉めたりしないように、きちんとしておきたいと思います。とはいうものの、なかなか着手できないで先延ばしにしているのが現実なのですけれど……私はすぐには死なない!と決めていますから(笑)。

三原議員の考える終活とは、幅広い選択肢から自分に合った余生を選べることであり、その選択肢を広げることはご自身の使命の一つととらえていらっしゃるのですね。 本日は、ありがとうございました。

三原じゅん子

参議院議員 自由民主党 女性局長 自由民主党神奈川県参議院選挙区第四支部長
昭和39年9月13日生まれ。女優・歌手、介護施設経営者、カーレーサーとして活躍し、平成22年7月第22回参議院議員通常選挙・全国比例区にて初当選。平成28年1月 自由民主党神奈川県参議院選挙区第四支部長就任。平成28年7月第24回参議院議員通常選挙・神奈川選挙区にて2期目の当選。「女性」「いのちと健康」を守るため、インターネット上に元交際相手の画像や動画を公開する「リベンジポルノ防止法」、がん対策の基礎となるデータを把握するために「がん登録推進法」の制定など、多くの立法作業に取り組んでいる。

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