ニッポンの終活 ニッポンの終活〜人生の最後をどう考えるか〜 ニッポンの終活〜人生の最後をどう考えるか〜
池波志乃

池波志乃曰く、「終活はまだ、現在進行中」

取材・執筆:北千代 撮影:村山雄一

2019年3月12日

今年の大河ドラマでは、故・五代目古今亭志ん生の妻である、自らの祖母の役を演じることで注目を集めている池波志乃さん。俳優の中尾 彬さんとの円満夫婦ぶりはよく知られているところですが、近年は、ご夫婦で終活を行ったことでも話題になりました。推理小説の愛好者としても知られる池波さんですが、終活ではなんと、秘蔵のコレクションまで手放したそうです。これだけ思い切った終活をしてもなお、最後まで手放せないものもあるそう。どのような考えで「始末」をしたのか、お聞きしました。

葬儀やお墓について決めておくことは、最後の後始末

子どもがいないお二人が、この世を去った後になるべく周囲に迷惑をかけないためには、葬儀やお墓をはじめ、どんな準備をしておくべきか。そんな発想から終活を始めたそうですね。

私たちはたまたま場所があったからお墓を建てましたが、お墓を建てる建てないではなく、自分たちで決めておくことが大事という考えです。海に遺骨を撒いてくれなんて、頼まれちゃった方は大変。やってくれる人に負担じゃないのか、そこまで考えておく方がいいでしょ。

お寺さんにお墓を造った以上、義理を欠かないためにも、お葬式は人に迷惑のかからない形でやった方がいいと思います。最後の後始末ですよね。

ただ、青山葬儀所を借りて一般の方を呼ぶ大々的な告別式というのは、私はやらなくていい。自分はもういないのですから、やってくれる人の立場や状況を考えたいんです。

私たちの終活では、別荘やアトリエから手放しました。昔は、土地付きの家は残した方がいいと考えられていました。でも、今は税金や壊す方が大変で、残された人にはお荷物になっているわけだから頭を切り替えないと。だから、早めにやらないと大変なんですよ。

アトリエを手放したのも、窓ガラスが台風で落ちてきて、今後どうしようか、このままでいい?今は空き家も問題になっているよ、っていうところから話し始めました。小さいことが起こったら、それをきっかけに発展させることから始めないと。

終活で捨てるだけじゃなくて、新しく何かを始めたっていい

終活のタイミングは、早いほうが良いとお考えですね。それはなぜでしょう?

早くから自分たちの歴史を整理しながらやっていると、時々立ち止まってゆっくり考えることも楽しみになりますね、始末をしているうちに趣味が出来るかもしれないし。

終活で捨てるだけじゃなくて、新しく何かを始めたっていいと思うんです。

年賀状なんかも、生きがいや楽しみだったらいいんですよ。

でも、これまで義理や商売でやってきたなら、リタイアのタイミングできれいに始末するっていうのも一つの終活だと思うんですよね。でも、今は年賀状の代わりにメールで挨拶をするのも失礼じゃない、普通のことになってきちゃった。だから人によっては、じゃあメールを覚えてみようか?パソコンで年賀状を作ってみようか?って、無理はしないで新たな趣味を始めるという展開もあるでしょう。

中年くらいのなんとなく物欲しそうな感じが吹っ切れた時が、片しどき。

自分自身がどういう風に生きたいか、そのための体力はどうか。

そういうこともちゃんと振り返ったりできる年齢が終活どきなんです。夫婦はお互いに年を取ってくるし、ずっと今のままでいるということはありえないけれど、なるべく長続きさせて、その次を楽しく生きるための努力と考えた方がいいと思います。

優雅に生きるためのものは、始末しなくていい

池波さん流の「始末」の仕方は、なかなかモノを捨てられないというさまざまな年代の人たちにとっても、今後をよりよく生きていくための参考になりそうです。

けじめを付けておく方がいいことをやっておくのが終活だと思っているの。

うちは子どもを産まない選択をしたんですけども、もしもいたとしても、迷惑になるものを残さないというのが、始末。いやいや遺品整理されたくないというのがまずあるんですよ、私。

30年、40年後の価値観はわからないけれど、「機を見るに敏」になって、いかに始末するかをあらかじめ考えておくのがいいかなって。
今捨てるのは、あってもしょうがないもの、自分がもういらないもの。
重たいフライパンなんて今まではよく使ったけれど、これからは無理かもしれない。

洋服も今までは似合っていたけれど、あと5年すると体重が変わらないだけで体型は変わっているし、顔も変わっているし、流行も変わるので似合わなくなる。

アトリエも、200号の大きいキャンバスで描きたいものがこれから先あるか、といったら、中尾さんは、大きい作品はこれまでに描いたからもういいや、と思うようになったんじゃないかな。

迷うものは、未練を断ち切るまで、見えるところに置いておく

そうはいっても、なかなか捨てきれないものもあったのではないでしょうか。

押入れの一番奥にある、何が入っているのかわからないような段ボールを出してきて、中身を全部出してみるところから始めるといいと思いますよ。

しばらく見ていなかったものを出してみると、これってもしかしたらいらないかも、でももったいないな、というものも出てきます。そういうものは、また段ボールにしまったりしないで、見えるところに置いておく。そうすると自分で邪魔になってきます。

そんな時に、「本当に使う?」って自問自答すると、「もういいか」ってなるんですよ。そうして処分したものは後悔しない。迷うものは、未練を断ち切るまで、見えるところに置いておくといいですよ。

終活とは、未練を断ち切るために「終」という字がついている、次の活動のための「活」なんですよ。婚活や就活と同じで、この境目で違う生活をするために、今までのいらないものを捨てて、今に相応のものを新たに買う。終わりの活動ではなくて、これからを楽しむための活動です。

さまざまな「始末」をされた池波さんですが、最後まで手放せないものとしてお父様(故・十代目金原亭馬生)の書を挙げられましたね。

父の書も、結局形見になっちゃいましたけど、わざわざ書いてくれたものではなくて、番組で書いたものをそのまま丸めておいておいたものです。無くしたかもしれないものを、中尾さんが額装してくれたんですよ。

そのことを含めて、最後まで手元に置きたいと思っているんです。

私はフト思う 父親として今君を見ていると幸福そうに見える いつまでもそうあってほしい でも人はかならず 何かのカベにぶつかる そのカベは重くのしかかってくる その時逃げてはいけない 息をつめてその重さにたへるのだ キットいつかそのカベは消えてくれる イザという時は人は助けてくれない 自分しかない それを忘れないよう そして時々自分の背中を見るように そして冷たく自分を見るのです ハッと思う様な事が見えることがあるものです 了見を正しく 生きて行く前提として 体だけは大事にしてもらいたい それが唯一の頼みだ 何か面白くないないことがあったら 人のいないところで空に向かってどなりなさい お父さんのバカーと
  父より  志乃どの

推理小説の本も捨てられないから、神保町のお店を調べて見に行って、信頼できる本屋さんを見つけて、トラックで3、4台に持っていってもらいました。

ちゃんと次に回るので、自分の手元になくてもいいんですよ。

一時期、アトリエで隠れ家レストランをやりたいと思って、海外旅行へ行った時にウエッジウッドのフルセットの食器を買って船便で送ってもらったりしていたんです。とっくにレストランをやる気は無くなっていたのに、とってあったんですね。

そういうものにしても、うちはこんなに高く買い取りますと電話をかけて来る業者には耳を貸しませんでしたね。

それを売って小遣いにしようなんて欲を出して、騙されてうちに上がり込まれちゃったりしたら大変。変な業者に、その後の生活を脅かされたくないんです。

信頼できる業者かどうかをちゃんと調べるというのは、自分たちで始末をしてみての教訓と言えますね。

今後の終活で、やってみたいことはありますか?

終活はまだ、現在進行中。

だけど、沖縄のマンションとアトリエと大きいものを処分したから、もう一息です。それから、ある程度片付いたら、遺言を書き直さないと。最初に書いた遺言の財産リストにはアトリエや別荘が入っているので。

始末はじわじわやりながらも、遺言は節目節目で見直していかないと、意味ないですよね。

中尾さんは「俺が焼いた器だけにしてください」なんて言うんですけれども、そうはいかない(笑)。というのも、今は季節に1回くらいしか使わない食器もあるんです。

でも、器が優雅だったら、だんだんと食が細くなった時でも楽しめるなと思うと、まだ始末の時じゃない。優雅に生きるためのものは始末しなくてもいいと思っているんですね。始末をして悲しくなっちゃうのは嫌なんです。

池波さんがなさった終活の「始末」とは、周囲の人のためだけでなく、次のステージの自分たちのためでもあるのですね。本日は、ありがとうございました。

池波志乃

1955年、東京都西日暮里生まれ。
俳優小劇場養成所を経て新国劇に入団し、ドラマ「女ねずみ小僧」でデビュー。
NHK連続テレビ小説「鳩子の海」をはじめ、テレビ、映画、舞台等で活躍。
祖父は五代目古今亭志ん生、父は十代目金原亭馬生。
2019年NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリンピック噺」で、祖父である古今亭志ん生の妻・美濃部りん役で出演中。

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