ライフエンディング業界のトップインタビュー 「葬儀を考えた時、金銭軸より大切なこと」

株式会社117
代表取締役社長 山下裕史

2018 年に一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会 会長に就任した、117 グループ代表、山下裕史氏。 117グループは1966 年に「姫路冠婚葬祭互助会」として兵庫県姫路市にて発会。47ヵ所のセレモニーホールを展開する中、組織における価値観を共有し、価格ではなくお客様第一主義を徹底。地域に密着した企業として親しまれ積極的に社会貢献活動も行っている。 いま葬儀業界が大切にしなくてはならないことや経営戦略、今後の展望まで、株式会社鎌倉新書代表取締役社長・相木孝仁が聞いた。

2018年12月25日

インタビュー/相木孝仁 文/加納沙樹

担当したスタッフが会社のイメージとなる

社長としてのビジネスをしながら、業界の顔として今後ご活躍されることになりますが、率直にどのようなお気持ちでおられますか。

就任にあたり、社内や式典などで以前にどんなことを話してきたのかと振り返ってみました。そうすると「変わらないなあ」というのが率直なところで、10 年、20 年経っても軸というのは大きく変わるものではないと思いました。

私は子どもの頃から祖父に「こんなにありがたい仕事はない」と言われて育ちました。

家はもともと呉服店をやっていたのですが、父の代で着物を売りに出張した先で互助会と出会い、現在に至りました。普通の仕事は代金を頂いて「ありがとうございました」だけだが、この仕事は代金を頂き、感謝をされ、お客様に頭を下げられる。「こんな仕事は滅多にない。本当にありがたい仕事をさせてもらえている」と祖父がよく話していたのを覚えています。

「なぜこの仕事が感謝されるのか」それは、ご遺族が不安な時にサポートをするから。人と深く関わる仕事であり、大変責任のある仕事だと思っています。

 

専門葬儀社が増え、お客様は以前のように互助会に入ることの必要性を感じにくくなってきている傾向があると思います。互助会に対するお客様の考え方や、アプローチの仕方についてはどのようにお考えでしょうか。

互助会は入会して前受金を頂いているので、普通の積み立てとは全く違います

お客様が互助会に入会しようと思う時は、必ず家族の誰かが頭に浮かぶ時です。「そろそろ準備をしないといけない」と思うことは「この人が大切な家族だ」ということを実感する時。互助会に入会することは単純にお金を積み立てるのではなく、家族の大切さを再確認する機会であり、大切だから準備をしようと思えるのです。

入会は大切な家族の冠婚葬祭の儀式を施行する約束です。

「この人なら任せても大丈夫」と思ってもらえることが大切です。

社長や部長がどんなにアピールをしても、依頼の電話を受けた人、当日のアシスタントなど、実際に関わった担当者がお客様にとって会社のすべてになります。

よって、全社員が同じレベルでできなくてはいけません。また、「お客様とは誰か」を理解しておくことも大切です。

入会した人、見学会に来た人、担当した人だけではなく、「何かあった時は、この会社に頼まないと」と思っていただいている地域の方々はみんなお客様です。

 

収益軸の仕事をすると施行にも必ず現れる

117山下社長_トップインタビュー_

地域によってお客様や葬儀の傾向は異なると思いますが、地域の特徴や戦略などはいかがでしょうか。

よく姫路は葬儀施行の価格が安いといわれています。

他府県に比べると確かに安いです。

しかし、弊社は創業以来ずっと黒字を続けてきました。いくら姫路が安くても、他地域に住む方が姫路で葬儀をあげることはまずありません。他であげられないからこそ、私たちは地域のお客様に対して誠実にやっていくことが大切です。

他の地域で葬儀をしないなら、多少価格をあげてもいいだろうという発想で施行すると、お客様にもその姿勢は伝わります。結局、葬儀にも影響してくるのです。例えば、飲み物の提供価格を100 円上げて全体の利益を大きくしようとします。すると次第に施行にもそういう姿勢が出てきます。そういう考え方で仕事をするようになります。

これが自分たちの普通になってしまうと、何も感じなくなっていきますよね。しかし、お客様には必ず伝わっています。金額で上げ下げする仕事をしていくと、最初は利益が出るが、3、4 年目には続かなくなります。

理由は、人口の多い東京などはメディアによって会社の評価が伝わりますが、人口50 万人以下の地域では近所の方々から徐々に不満が伝わり、すぐに会社への不信感が広まるから。もしもそんな事態が起きた時、そのような収益のあげ方を軸に仕事をすることが普通になってしまっていたら、立て直すのがとても難しくなります。収益以外の面でのサービスの基本となる心遣いや、お客様目線での考え方を日々重ねていないと、やり方すら忘れてしまい、一気に会社は潰れていきます。

小さい地域であれば尚更です。

 

まさに企業が大切にすべき、経営の根本的なところを改めて感じました。

「事業計画通りに仕事をしています」というのは仕事をしていないのと同じだと思うんです。

半年前、一年前に立てた事業計画を、時間の経った今、その通りにやっていても、それはただのチェックリストにチェックを入れているようなもの。ちゃんと仕事をしていれば、必ず修正点が見えてきて、対応を変えていくことが当たり前になってきます。

組織は大きくなると定型を踏まえたがるものですが、日々こなすことが仕事になってしまうと、施行にも必ず影響が出てきます。弊社では月報の一番上にクレーム対応を記載しています。さまざまな事例がありますが、「喪主様には伝えたが、後から来たご家族には伝えていなかった」などの「言ったつもり、やったつもり」があるんです。

仕組みとして変えなくては意味がないので、このようにクレーム対応を日々記載し、共有することで対策を練っています。互助会は特にお客様を次に繋げていくことが大切なので、評価基準としては次の入会をして頂けたかどうかも重要なポイントとなっていきます。

117山下社長_トップインタビューの模様

 

山下社長の価値観やこだわりがきちんと社員に浸透していることが伝わります。何を大切にしているのかがすごくわかりました。

 

いま葬儀業界に必要なことは「葬儀は何のためにするのか」を伝えること

 

最近のお葬式を考えた時に、金銭軸の話が多いことが大変気になっています。

費用はもちろん大切ですが、費用だけを全面に出す傾向は非常に問題視すべきだと思います。結婚式もそうですが、葬儀をするかしないかの選択をするのが今の時代です。なぜ葬儀をする必要があるのかを伝えずに、金額の話をしていくのは危険なことです。

そのまま葬儀を行うと「とりあえず30 万円の葬儀だった」「高かった」が先行してしまう結果となる。金額に値する葬儀ができたかどうかは、こちらが葬儀の意味を伝えなくては伝わらないのではないかと思います。

例えば、会館で葬儀を行う価値についてですが、お客様に「なぜここで葬儀をあげたいのか」と尋ねると「近いから、安いから」といったお答えが多いのです。しかし、本当はもっと私たちが伝えるべきことはたくさんあると思っています。昔の自宅葬とは違って、会館に常に多くのスタッフがいてサポートができます。それにより、ご家族は故人の側にいられる時間が増え、語らう時間を持つことができるようになりました。

会館を選んでいただく理由として、「人を送る場・時間で人と人とのつながりをより深くする場を私たちがどれだけサポートできるか」をお客様に知っていただき、「この人たちなら任せたい」と思ってもらえるかどうかの価値をしっかり生み出していきたいと思っています。

弊社の店舗展開に関しても工夫が必要で、地域の特徴を踏まえて建てています。

世帯数やその地域の葬儀の仕方などの統計から、ホールの大きさや館内の間取り、導線等を検討していく。こちらが提供したものに合わせてもらうのではなく、地域に合わせて展開していきます。

 

葬儀の価値を伝えていくことが必要になってきている?

葬儀だけに限らず、結婚式や七五三など儀式に関しての必要性、あり方が変わってきていると感じています。

家族葬が浸透し、葬儀の縮小化が進んでおりますが、葬儀には、例え喪主が知らない方でも、故人に関わりのあった人であればいらしてくださっていいと私は思います。それぞれの関わりがあり、自分の位置を認識していく機会にもなります。

共通体験を共有し、お互いに記憶の深いところに戻ることで今の自分を認識し、これからを生きる力を得る場になるとも思うんです。

また、今の若い世代は家族葬の影響で、葬儀を知らないまま大人になってしまうことを懸念しています。これは今後の葬儀に大きく影響を与えると考えられます。

対策として全互協では、儀式の大切さを各地で広めていく活動をしています。

まだ試験中ですが、小学生の土曜学習応援団として小さい頃から伝えていく活動もしていきたいと思っています。今後は社会サービスとして互助会の使える幅を広げ、生きているうちにも役に立つ互助会になり、このようなコンテンツづくりにも注力していきたいと考えています。

 

ありがとうございました。

 

山下裕史

一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会 会長
株式会社117 代表取締役社長 
1964 年生まれ。同志社大学商学部卒業後、株式会社大和生研入社
2005 年 株式会社117 代表取締役社長、株式会社大和生研 代表取締役社長
2012 年 全国冠婚葬祭互助会連盟 副会長(2018 年より相談役)
2013 年 互助会保証株式会社 取締役に就任
2017 年 株式会社117メンバーズ 代表取締役社長
2018 年 一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会 会長

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「ライフエンディング業界のトップインタビュー」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている企業のリーダーにインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができないライフエンディングの最先端の場で、どのような取り組みが行われているのか?余すこと無くお届けします。